080話 ようやくの再会
昨日は更新できませんでした、すみません
再会まで何話使ってんだよ…ほんと長いよ…
三人は部屋に入った途端、安堵した表情で駆け寄ってきた。
見たところ怪我などもしてないし、縛られてもいない。
ん?見慣れない首輪をしているな。
「久しぶり…っても一日しか経ってないよな。無事でよかった。」
「無事じゃないよ師匠!ひどい目にあったんだから!」
「そうですよ!この胡散臭い人に捕まってたんですから!」
「でも一日で助けてくれるとは、さすがはシンね。」
いつもの元気さで各々話しだす。
だが本当に良かった、街に着いた時、三人の気配を全く感じなくて内心ではかなり心配をしていたんだ。
「………僕はスルーなんですね。」
若干悲しそうな目をするアレクが不憫ではあったが、まぁそれは仕方ない。
俺達の絆があってのことだからな。
「それじゃー交渉と行きますか!」
感動?の再会をしている所に水を差すかのようなドンの一言。
「交渉?そんなのができる立場にあると思ってるのか?」
交渉の席に着くことができるのは、交渉のカードと覚悟を持った者のみ。
さっきの話で、俺と争うのは得策ではないと考えたドンには覚悟はないはず、更に三人がこの場にいるということで、交渉カードもないはずだ。
「いやいやいや、ボクチンも商人なんで、さすがに『はいどうぞ』って商品を渡す訳にはいかないさ~」
「……罠にはめようとしたくせにね。」
アレクがぼそっとそんなことを呟く。
「言っておくが、この三人も揃った今、実力行使で逃げ出すことは何ら難しくはないぞ。」
その言葉を聞いて、三人の顔に緊張が走る。
三人の表情は、戦いの時に見る真剣なものになっていた。
俺の一声があれば、すぐにでも襲いかかるつもりだろう。
「……とは言ってもだ、さすがにお前自身も示しが付かないだろう。なんか簡単な依頼か金銭で解決できるなら、できるだけ考慮する。」
これはあくまで俺の自己満足だ。
最初の交渉では『三人の情報』をもらうだけ、『三人を返してもらう』というのは条件にはなかった。
つまり、三人を取り返すには実力行使か新たな交渉という形しかなかない。
俺は実力行使も辞さない覚悟で相対したが、ドンはそうしなかった。
そして三人をこうして返してくれた、いや、会わせてくれた。
三人の捕縛も、その金持ちの嫌なヤツからの依頼で、ドンはその依頼を受けただけ。
元の世界ならいざ知らず、この世界には奴隷もいるし人身売買もあるようだ、つまり何ら違法ではない。
更に、帝国では『弱い者が悪い』というのもまかり通っている。
三人の捕縛に対しても『やり返しただけ』と言えばそれまでだが、日本人としての心が残っているせいか、そこまで割り切れない。
ドンが『商人』として接したならば、俺もかつての『サラリーマン』として交渉のテーブルに着こう。
さっきの脅しはあくまで交渉を有利に運ぶためであり、実際に実力行使しようとは思えなかった。
「ん~そう言うと思ってね!」
ドンは先程の俺の発言にも、今の発言にも驚いた様子はなく、いつもの調子で言い放った。
「カースドラゴンの死体!きっと全身持ってるんでしょ!?そいつを頂きたいね!」
俺が投げ捨てたカースドラゴンの死体の一部、それを指差しながらドンはそう言った。
「まぁ、妥当な所か。」
「え?いいのかい?あのドラゴンに死後に肉体を助けてもらったとか言われてたじゃないか。」
「あ」
忘れてた。
だけど、俺達が持ってても正直どうにもしようがないし…
「……何百年後かに会った時、ちゃんと謝るってことで。」
「気の長い謝罪の決意ですことで。」
俺があの時に言った台詞を反芻するかのようなアレクの物言いに、若干憂鬱にはなったが、今回は仕方ない。
…仕方ないんだ、すまん、カースドラゴン。
「おっし、交渉成立だーね!ドラゴンの死体をちょーだいな!」
アイテムボックスからドンに死体を渡そうとすると、アレクが俺達の間に立ってそれを防いだ。
「何を…」
「そっちの条件をまだ聞いてなかったね、『何をどういう状態で』僕らにくれるんだい?」
こいつは何を言ってるんだ?
「そりゃ三人を返してもらうって…」
「君に聞いてないよ、僕はドンに聞いてるんだ。さぁ答えて。」
キッパリそう言い切られて、俺は黙ることにした。
さっきからアレクの行動はいまいちよくわからない。
このやり取りになんの意味があるんだ?
「……『三人を渡す』じゃダメって意味かなー?」
対するドンは、いつもの口調だが少し緊張の色が見て取れる。
「『無事に』か、もしくは『元の状態で』って付け加えてもらえるかな?」
「………」
なんとなく意図が読めたぞ。
「…まいったね、こりゃ。おっけーおっけー!それでいいよ~。」
ドンは降参したかのように手を上げ、側にいた護衛に指示を出し、三人の首についていた見慣れない首輪を外させた。
「あ、これ。」
「なんだったんですか?」
「…あんまりいいものじゃないってことね。」
首輪のなくなった首筋を触りながら、三人が尋ねる。
「んー、発信機…兼、遠隔爆破装置ってとこかな~。」
!?
こいつとんでもねぇ事言いやがった!
「お前、アレクが何も言わなかったらそのままにしてたのか。」
「まぁ、それを取り外すのに別の交渉をってのは考えてたよ~」
使うつもりはなかったと言うが、交渉の差材料にはするつもりだったということか。
…くそ、完全に出し抜かれてた。
「……二度とお前とは会いたくないな。」
殺気も込めてそう伝える。
「そんなそんな~!あなーたがたは上客ですよ!」
こいつは…本当に油断ならないやつだ、本気で二度と会いたくない。
その後、アイテムボックス内のドラゴンの死体を全てだし、交渉は一応の終わりを見せた。
その際にもアレクが色々目を光らせていたみたいで、変に不利な話などはなかった。
そして最期に吐き捨てるような目線を投げ、俺達はべヘットを後にした。
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「それにしても、お前なんでわかったんだ?」
この街は危険と判断し、三人にはフードを目深に被らせ宿を探し歩いた。
その道中、気になった事をアレクに聞いてみる。
「君は察しはいいしめちゃくちゃ強いけど、詰めが甘すぎるね。特に対人間の交渉事に関して。」
「う…」
痛い部分を突かれた。
サラリーマン時代にも、同じようなことを上司に言われた記憶がある。
「あいつの話し方、話題の持ってき方、敢えて言わないようにしてること、それらが僕が使うのと似てたからね、よくわかったんだよ。」
確かに、二人共言い方というか、交渉法がなんともいやらしいってのは共通してるな。
「そんなわけで、あいつが一旦諦めた時から注意してたのさ。」
「それはあいつが三人の所に連れてってくれるって時か?」
その時もアレクが呼び止めたんだった。
「そう。冷静に考えてみなよ、気配が察知できないってことは、何か特殊な場所に監禁されてるってことだよ。」
「まぁな…それは俺も思った。」
「それにだよ?この三人が大人しく捕まってるってことは、その特殊な場所は僕の封印と同じ効果があるか、同じ封印をされているかだ。」
そうか、その可能性があった。
「そんな場所にノコノコ行くなんて…自殺行為以外の何物でもないよね?」
「…そうですね…」
説教をされてしまった。
「あー、確かにあたしたちが捕まってた場所は、床に変な魔法陣が書いてあって、一切の力が使えなかったわ。」
「僕も全然力入らなかったなぁ。」
「魔法どころか、魔力を練ることも出来ませんでしたね。」
三人のいうことを考えると、その場所自体が封印の力を持っていたんだろう。
「そこに入れって言われちゃったら、いくら君でもどうしようもないでしょ?」
「……はい、ごもっともです。」
今回は自分の考えの甘さが身にしみた。
異世界に来てまで仕事のミスを突かれるような体験をするとは、思ってもみなかった。
だが、取り敢えず、ようやく全員が揃ったんだ。
明日からは、アレクの言う『研究所』を目指し進むだけだ。
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