表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
選択結果は異世界でした  作者: 守月 結
80/103

079話 穴だらけの

仕事が増える一方です…

 突きつけている刀に少しだけ力を込める。

 今までずっと部屋の片隅にいた護衛らしき人物たち、そいつらも俺の発言を聞いて一気に身構えた。

 元々この店のトップに刀を突きつけている時点で、かなり警戒はされていた。

 だが、今は俺の本気度が伝わったのだろう、完全な戦闘態勢になっている。


「か、返せって、どーゆーことかな!?」


「お前の今の話で確信した。」


 はっきり言って、話を聞くまでそんなことは考えていなかった。

 だが、たった一つの考えさえ浮かべば、全て理解できたんだ。


「お前は言ったな?『かなりの手練に捕縛を依頼した』と。」


「あ、あぁ!言ったとも!」


「そしてこうも言った。三人に対して『めちゃくちゃ強かった』と、過去形で。」


「それは、騒ぎを見ていたからさ!」


「確かにそういう言い訳も出てくるだろうな。まぁ別にそこはどうでもいいんだ。」


 そう言うと、ドンは首を傾げた。


「はっきり言ってあの三人を一度に相手にするのは、今の俺でも結構きつい。更に、この街はそれなりに歩いたが、それが出来そうな奴は一人くらいしかいなかった。」


 正直これはブラフだ。

 街の至る所まで隅々見たわけじゃないし、ガインやバロックくらいならなんとかして俺のスキルに引っかからないようにできるかもしれない。


「その言い方だとそいつなんじゃないのかい!?」


「あぁ、それがお前なんだよ。」


 当たり前の帰結。

 それを予想していたのか、ドンは特に驚いた様子もなく答える。


「ボクチンだってそんな珍しい獣人がいたら手に入れたいけど、そんなに強くないよ!?カースドラゴンとの戦闘だって見てたでしょ!?」


 それは俺が静かに怒っていた原因の一つでもある。

 あそこで逃げ出さずとも、こいつの強さなら俺とアレクを助けて逃げることも出来たはずだ。

 それをせずに一目散に逃げたことに腹を立てていたのだ。


「言ってなかったか?俺の『気配察知』は、ある程度の強さも感知できるんだ。」


 それを聞いてドンは目を見開いた。


「……そこまで細かくわかるとはね。あれはスキルでわかったから言ったのか…」


 そんなことを呟いて少し考えるような仕草をする。

 だいぶ突っ込みどころのある予想だが、今のは効いたみたいだな。


 それから暫く考える仕草をし、ドンは深くため息を付いた。


「……はぁ。まぁ一応合格って事にしよーかな。」


「…は?」


 予想外すぎる反応をされ、俺もアレクも一瞬毒気を抜かれた。


「敢えての失言、ボクチンの挙動、その他情況証拠、色々他にも用意してたんだけど…まさかスキルでバレるとはなー。」


 ドンは悪戯がバレた子供のように口をとがらせてそう話す。

 だがその様子はどこか楽しげにも見えた。


「はーい、正解だよ!そのとーり!もうちょっとボクチンを理路整然と追い詰めてくれるかと期待してたのにー!」


「お前は…何を…」


 俺は言い淀んでしまったが、ドンは構わず話し続けた。


「いやね?ちょーっと悪戯というか、ゲームをしてたんだけどさー。どんなふうに攻略してくれるかなーって!」


「………」


 アレクがジッとドンを見つめる。

 敵意や嫌悪感といったものではなく、なにか「観察」のような。


「たしかにー、あのブタ野郎から依頼を受けて、その三人を捕まえたさ~。でもね、その時に赤髪が『あんたなんかシンにかかったら瞬殺だよ』なーんて言うから、ちょっくら君に興味が湧いてね~。」


「俺たちを…おびき出したってことか?」


「ノンノン!そんなことしてないよ~。君たちが地力でここに来て、地力でこの情報をゲットしてたってことさ!」


 ドンはいつものふざけた調子に戻ってはいるが、俺は殺気を緩めず話を聞き続ける。


「でねでね?君たちが来た時、ボクチンは思ったわけ~。『あ、コレ無理だわ』ってね~。」


 一瞬、本気のトーンで俺が来た時のことを話す。

 その時の声色は、間違いなく本心から言っていると思わせるようなものだった。

 まぁ、こいつの場合それすらも演技かも知れないが。


「だからね~、ちょーどいいから、カースドラゴンとぶつけようって!」


「うまくすれば邪魔者の俺を殺せるってか?もしくは弱ったところを共倒れ、漁夫の利、とかかもしれんが。」


「そのとーり!!でもまさか勝っちゃうとはね~。」


 驚き半分、ふざけ半分と言った形で感想を述べるドン。

 …結果はどうあれ、普通に俺を殺そうとしていたわけか。


「なるほどな。そんな俺と敵対するのは得策じゃない、と。」


「話の持ってき方では、うまーく使えるかな?とか思ったけど、スキルでばれたんじゃー仕方ないよね~。」


「…なるほどな。クソッタレの情報屋ってことか。」


 正直な感想だ。

 ある程度そういうことは覚悟していたが、実際にこの身に降りかかると、本気で嫌悪感しかない。


「まぁまぁ。僕も言ったじゃない、僕よりいやらしいって。」


 そういやそんなこと言ってたな。


「ま、そううまくは行かないってことか~。そんじゃ案内するからボクチンに付いてきて!」


 ドンはそう言って歩き出した。

 それに付いて行くように俺が歩き出したが


「待って。」


 アレクが急にそう言って引き止めた。


「ここに連れて来て。」


「?別に俺たちが行っても…」


 俺はそう反論したが


「いいから。」


 アレクにそう強く拒絶されてしまった。


「……おっけー!ここに連れてくるよ!」


 ドンが一瞬ふざけた顔をやめて目を細めたような気がした。

 だがそれが気のせいだったかのようにすぐにいつもの調子に戻った。





 それからしばらくして、慣れ親しんだ三つの気配が俺のスキル範囲内に突如出現した。

 その気配がだんだんと近づいてきて、扉の前に。

 そしてその扉が開かれ


「シン!」


「シンさん!!」


「ししょー!!」


 たった一日なのに、ずっと会っていなかったような、そんな感じを抱きつつクリス、サラ、ウィルに再会した。

お読みいただき、ありがとうございます!

ブクマ・感想・評価等本当にありがうございます!これからも楽しんでいただけるよう頑張ります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ