表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
選択結果は異世界でした  作者: 守月 結
77/103

076話 他人の威を

ギンッ


一撃


ギンッ


二撃


ザシュッ


三撃


正味三回、同じ場所を攻撃すれば硬い部分でも奴の鱗を貫通する。

一撃目と二撃目で鱗には傷が付くようになっただけ、まだましか。

俺が奴の尻尾の先を切断してから、明らかに硬度が高くなってる。


「チミー!その剣はなんだい!?」


後ろの方で俺に支援魔法を掛けながら、ドンが叫んでいる。


「魔法剣……俺のは刀だから魔法刀ってところだ!」


「マ!ジ!で!?」


言葉の間にホワッツ!?って言葉が入りそうなリアクションをされる。

驚き方一つとっても胡散臭ぇなぁ。

まぁこっちの世界では魔法剣は未だ机上の空論らしいから、驚きも仕方ないのかもしれない。

それを確認されている人間で初めて俺が実現してしまった。

サラもかなりビックリしてたなぁ。


「でも使えるなら最初から使って欲しかったかな!?」


「物理が効きにくいってのを最初から聞いてたら、始めっから使ってたよ!」


「あ、ごめーんね?」


うっぜぇぇぇ。

いやまぁ、正直忘れてたんだが。

だがコレでやっとカースドラゴンとまともに戦える!


「はぁ!」


前足の巨大な爪を刀で受け止め、返す刀で足裏の若干柔らかい部分を切り裂く。

それを受けてカースドラゴンが少したじろぐ。

さっきまで一切の攻撃を受け付けなかった身体が、少しずつ傷を付けられてる。

怒り狂って濁っていた目に、少しだけ正気の炎が宿っているような。

痛みで自我を取り戻してきたか?


「グルァアアアァァァァァ!!」


「速っ!」


その巨体に似合わず、カースドラゴンはやたらと素早い。

隙あればドンの依頼を無視して『超電磁砲』をぶち込んでやろうとか思っていたんだが、タメが大きいし撃っても躱されるだろう。


先端の切断された尻尾、鋭利な爪、恐ろしい程大きな牙。

それを駆使して、近接戦闘でも連続攻撃を繰り出してくる。

だが、その合間に、カースドラゴンの急に動きが一瞬止まった。


「------ッ!!!」


「な!なんだこの声!?」


「おーう!耳がぁ!耳がぁ!!」


超音波のような、人間では聞き取れない高域の音の固まりがぶつかってくる。

しかもかなりの大音量。

正確には聞き取れはしないのだが、音圧というのか、そういうものが全身に、三半規管に

"直撃"してくる。


「ぅ…ゴフッ」


鼻の奥からの血の匂いに、急激に咳き込んでしまう。

耳をふさいでも、目から鼻から、流血してしまう。

どういうことだ!?


「や…やばい…ここから…移動しないと…」


奴の正面でこの鳴き声を受け続けると、間違いなく内部から破壊される。

よろめきながら後ろに下がろうとした時

先端の切断された尻尾が、俺目掛けて高速で横薙ぎに振り払われた。


「ガッ!」


振り抜かれた尻尾の延長上に、吹き飛ばされてしまった。


「だだだだ大丈夫かい!?シンクーン!!」


「ヒュー……よ…呼び方を…ヒュー……固定しろよ……」


ドンが急いで駆け寄ってくる。

先程の超音波でダメージを受けてる様子はない。

結構後ろのほうで支援してもらっていたから、そこまで影響はないのか。

にしても…めちゃくちゃ痛い…

これ、所謂いわゆる"肋骨を何本か持ってかれたな…"って奴か。


「ヒュー……ヒュー……い、息が…」


痛みと肺周辺の肋骨の骨折で、うまく息ができない。

あんな漫画みたいに、普通に動くことなんてできるか!

息がしづらいだけで、折れた肋骨が肺に刺さって…みたいなことはないみたいだ。

けどめっちゃ痛い、洒落にならない。


「ヒト如キガ、調子二乗ルナ。」


どこか遠くから、それでいて近くのような

二重に聞こえるような、そんな不可解な声が聞こえた。


「は……話せ…るのかよ……」


「ドラゴンが会話するってのはすーーっごく珍しいよ!」


なら、なんとか話し合いで穏便に…

いや、こいつの子供を狩っている人間の言葉なんて聞かないか。


「虫ケラドモガ。我ガ子ノ恨ミ、貴様ラノ命、万捧ゴウト償エヌゾ!」


カースドラゴンの瞳が、怒りで濁ったものから変化していく。

そう、純粋な憎悪の炎に焼きつくされていったのだ。

さっきの濁った怒りのほうが、まだ勝率はあったな。


「どーするかい!?ぶっちゃけ勝てそうにないから逃げていい!?」


「そんなこと…したら…呪い殺して…やるよ…」


こいつ、とんでもねぇこと言いやがる。

そんな中、カースドラゴンの周囲の魔力が急激に高まっていくのを感じる。

魔法?いや…この感じ、さっきまでのブレスのような…

まさか、ブレスに魔力を乗っける気か!?


「ま、まずい…」


今の俺じゃ、避けきれない。

ていうか、痛くてまともに立てない。


「うん!やっぱり逃げるね!!」


そう言って逃げようとするドンの足を掴んで、逃げれないようにする。


「ま、待て……!一つ…一つだけ聞きたい……」


「なに!?もー待てないよ!」


俺の腕を足でゲシゲシ蹴ってくる。

こいつ…助かったら覚えてろよ。


「い、一瞬でいい…痛みを…和らげる魔法は…使えないか…?」


治癒魔法なんて期待はしてない。

だが、もし感覚を麻痺させる魔法とかが使えるなら。

無理やり身体を動かせなくはない。


「ん!?ほんと短い時間でいいなら…『感覚鈍化』って魔法が」


「そ…それを、俺の胸に…局所的に…頼む…」


「傷は治んないよ!?それでもオーケー??」


それに頷き、魔法を当ててもらう。


「『センスィズ・ダウン』!」


胸の痛みが消え…いや、胸の感覚がなくなってきた。

麻酔みたいな感じだ。

肋骨が折れて、内出血と骨折で、見るも無残な色と腫れ具合になっているだろう胸部に、全く感覚がない。

触っても、肉の塊のような…歯医者の麻酔のような感じがする。

だが、やり過ぎると肺を動かす筋肉も麻痺させてしまうだろう。


「もう大丈夫だ。…多少、息がしづらいし、変な感覚だが問題ない。」


「じゃ!ボクチンはコレで!!」


礼を言おうと振り返ったが、それすら聞かずに一目散にジャングルの方へ逃げていった。

…薄情なやつだ。


「逃ガスワケガナカロウ!」


カースドラゴンの魔力は更に高まっていく。

地面にどっしり構え、ブレスのために全力を注いでいる。

多分、あれが放たれれば、この辺一体吹き飛ぶだろう、逃げたドンも含めてな。

だが、その放たれる瞬間にこそ、勝機があるはず。


「絶望ヲ抱イテ滅ビヨ!」


奴の魔力とブレスの力が最大になったと感じた瞬間。


「死ぬわけには行かないんでね!」


やべ、もう魔法が切れてきた。

ジクジクした痛みが。

だが、このスキルを放つまでは。

最近手に入れたこのスキル。

リスクが大きすぎて、一人では全く使い処のない

更に、一度放ったらもう最後、後は戦えたもんじゃないと思われるスキル。


「『絶対切断』!!」


刀を横振りぬき、防御不可能の絶対的な斬撃がカースドラゴンを襲う。

躱せるわけがない

奴は全力の一撃のために、地面にしっかりと四足を食い込ませている。

動けるはずがないのだ。

よしんば動けても、今放とうとしている全力の一撃、それを暴発させずに動くことなど不可能だ。


「!!!」


カースドラゴンは、そのアギトの前で生成していた強力な魔力を込めたブレスを放つこと無く

そして、魔法剣でもなかなか傷をつけれなかった鱗すら意味を持たず

さらに、そのブレスの塊ごと


口角の端から、上下に切断された。




お読みいただき、ありがとうございます!

ブクマ・感想・評価等本当にありがうございます!これからも楽しんでいただけるよう頑張ります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ