074話 死者の沼
昨日はポケモンGoに駆りだされてました
休日は何かと予定が入りやすいので、平日更新にしようか検討中
「お前は…今からドラゴンを討伐に行くってのに、その格好のまんまなのかよ。」
「もっちろん!ボクチンはコレが正装であって戦闘服なんだよ~!」
翌日べヘットへと向かうと、入り口に昨日の胡散臭い男が立っていた。
昨日と同じ格好で。
「お前は……そういや、お前の名前はなんて言うんだ?」
そう言えばこいつの名前を知らない。
「ボクチンの名前!?うーん…ドン・べヘットって呼んでもらえれば問題ナッシ!」
言い方的に本名……ではないな。
教える気はねぇってか、まぁいい。
「じゃぁドンって呼ばせてもらう。俺は…」
「シンにアレックス!だよねぇ~!」
……店内では誰にも名乗ったりはしてないんだがな。
完全に調べられてる。
「王国で随分と暴れたみたいだからね~今回も期待しちゃってるのよ!」
「どこまで調べてるんだよ、あんたは。」
この街に着いてから、二十四時間も経ってないんだぞ。
「ま!ま!取り敢えず"死者の沼"まで行きましょ~!」
アレクと二人、若干警戒しつつドンが用意してくれたルジャータに乗る。
帝国では結構普及していると聞いていたが、こうも簡単に調達できるとは。
こいつら、言っても魔物だぞ。
「歩けば三時間ってことは、平地で考えてルジャータが本気で走れば三十分。まぁそんな使い潰すほど走らせはしないから、今回は一時間以内には着くって感じかな。」
アレクが冷静に現状を把握する。
てか、こっちのルジャータは全体的に茶色っぽいやつが多いな、
土地柄で微妙に違うのか。
「そう言えばドン、お前に護衛とかはいないのか?」
街を抜けた辺りでそう聞いてみる。
俺の『気配察知』でも、隠れて付いてきている感じも見られない。
「ボクチンには護衛なんていらないのさ!」
そう胸を張るドン。
どこかおちゃらけた感じもするが
「まぁ、"あの店で一番強いのがお前だった"から、必要ないといえば必要ないがな。」
俺がべヘットで感じた、入り口の男よりも強い気配。
その中でも郡を抜いて強かったのがこいつだ。
しかもちょっとよそっとじゃなく、かなりの強さだ。
感覚的には…ガインより弱い程度か。
『気配察知』で掴める強さは、あくまで表面的なものでしか無く、スキルとかは分かんないし相性もあるからな。
「おやおや!やっぱバレバレかぁ~」
特に驚く様子もなく、ドンは肩をすくめて大げさにリアクションする。
「……驚かないんだな。」
「いや~?驚いてるさ!もうめちゃくちゃ!」
やっぱりこいつは信用ならないな。
動作一つ一つが胡散臭い。
仮に、こちらに悟らせないようにわざとやっているにしても、それはそれで信用出来ない。
そんな腹の探り合いのような会話をしつつ進むこと数十分。
「お二人さん!見えてきましたよぉ、あれが"死者の沼"です!」
まだかなり距離はあるが、前方にやたらとヤバそうな空気が漂っている池のようなものが見えた。
もうその時点でやばいことはわかっていたのだが、近づいてみるとそのヤバさはより鮮明になった。
「……おい、なんか沼の下からボコボコ出てきてるんだが。」
「それに臭いも酷いね。腐臭?ドブ?みたいな臭がするよ。」
アレク鼻を抑えて不快そうにそう話す。
沼の色は、わかりやすく紫色。
草木一本生えていない…かと思いきや、環境に適応した草木が生い茂っている。
見た目は、ジャングルの中の沼地、色が異常なだけで。
葉っぱや樹液まで沼の色と同じ紫、地面も沼に侵食されてか紫、地獄みたいなとこだな。
「前はこんなんじゃなかったけど、カースドラゴンが住み着いてから沼がおかしくなっちゃってねぇ。長時間沼に浸かってると、毒に侵食されてド~ロドロになっちゃうから!」
やっぱり毒か。
しかもカースドラゴンが来たせいで。
環境すら簡単に変える、か。
この世界のドラゴンとやらはだいぶ影響力がでかいようだな。
さすがにこのジャングル沼地をルジャータでは通れないので、入口付近に繋いでおき、俺達は徒歩で沼地に入る。
なるべく沼に足をつけないように、木の上だったり固い地面部分のところを歩く。
こんな所で戦えるかなぁ。
最悪、『超電磁砲』で吹き飛ばすしかないな。
「おっとぉ!言い忘れてました!」
先行するドンが思い出したかのように大声で話す。
「カースドラゴンは貴重な素材なので、粉々にしちゃダ~メですからね!」
「はぁ!?こんな足場でそんなことまで気にしてられるかよ!」
「足場が大丈夫ならなんとかなるかもってことでオーケイ?」
う
なんか言質を取られたような感じが
「……まぁ、真っ二つにすることはあるだろうけど、原型は残せるかもな。」
「ボクチンそれでジューブン!」
くそ、誘導尋問…いや、交渉をコントロールされたか。
ほんと、こいつはアレク以上に油断ならん。
「僕よりいやらしい交渉術。」
アレクもそう感じたみたいだ。
だけど、自分の交渉術がいやらしいってことは自覚してんのかよ。
ジャングルを少し進むと、前方に沼しかない開けた部分が見えてきた。
そしてその中央には
「御覧ください!前方に見えますのがカースドラゴン、で~ございます!」
ドンがいつもより胡散臭さ倍増、演技臭く、だが見つからないように小声で話という、無駄に高度なテクを使い、沼の中心にいるドラゴンを指差した。
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