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選択結果は異世界でした  作者: 守月 結
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071話 帝国に入って

すみません、連休でお休みしてました

「ご報告いたします。」


青白い細身の男が、音もなく現れそう告げる。


「お?なんだ?」


報告を受ける男も気付いていたのか、何一つ驚く様子はなく返事をする。


「一行が帝国に入国したとのことです。」


「ほー。よく通れたなぁ。全員か?」


「確認出来ているのは、クリスティーナ、サラの二名です。また、その二名の他に一匹の獣人もいるとの事です。」


「坊主とアレックスはどうした?」


「は。確認は取れておりません。別行動を取っていたとのことで、入国はこちらでは確認できておりません。ですが…」


「あいつらなら、なんとかして入国するだろうな。」


青白い男の言葉の続きを、報告を受ける男…バロックが代弁する。


「にしても獣人ってどういうこった?」


シンが規格外なのは戦った者としてなんとなくわかるが、獣人って。


「は。どうもアレックスがどうしても、と同行を強要したとのことです。」


「……その獣人の名は?」


バロックが少し真面目な声色で尋ねる。


「『ウィル・シルヴァリア』だそうです。」


「へぇ。そうか。」


まるで興味が無いような反応。


「ま、取り敢えず報告ご苦労。実験に戻んな。」


「は。失礼致します。」


そう言って、青白い男はまたしても音もなく消えていった。

その男の気配が完全に感じられなくなってから、バロックは今までにない真面目な声で呟いた。


「『シルヴァリア』……面倒なものを持ってきやがって。」


少しの怒気と少しの苛つき。

それらからもたされる表情。

それはいつものバロックの人懐っこい笑顔よりも、ずっとその顔に馴染んでいた。

そう、まるで、いつもの表情が仮面だと言わんばかりに。






********************






「帝国っても、どこかしこに賞金稼ぎがいるってわけじゃないんだな。」


「君、帝国にどんなイメージ持ってたの?」


アレクと共に暗くなった街を歩く。

ここは王国との国境に一番近い街、シュビルヴィッツという街だ。

クリスたちとの待ち合わせ場所は『門を越えて一番最初の街』としか伝えていない。

アレクも最初の街の名前なんて覚えてないらしく、大体の規模感を伝えただけだ。


「いや、実力至上主義、弱肉強食の国って聞いてたから、ならず者ばっかりかと…」


「ちゃんと秩序があっての実力至上主義だよ。治安が悪いって言うなら、僕が昔いた連合国の方が酷いもんさ。」


様々な小国から成る連合国。

国が多いということは、文化も人種も多種多様。

そうなればカオスになってしまうのも仕方ないのか。

にしても、ここは帝国の外れの街だろうに。

それでも、ブルムの街なんかよりもずっと賑わっている。

王国側の国境の街ノートランドよりも賑わっているくらいだし。

その分


「秩序があるっても、王国よりかはないな。」


街の至る所に正規軍…王国で言う騎士団に相当する兵がたくさんいる。

鉄製だろうか、フルプレートの鎧にフルフェイスの兜。

兜の前は上下するようになっており、街にいる時は決まりでもあるのか全員が兜の前を上げている。

そして、前と背中と盾にデカデカと描かれた紋章。

二頭のライオン?らしき動物が激しく傷つけ合いながら争っている様子が描かれている。

特徴的な鎧に、特徴的な紋章。

こんな奴らが、街の至る所に…それこそ俺達を警戒していた騎士団並にいる。


「帝国は魔の大陸に直接繋がっているせいか、魔物が王国よりもずっと強い。そのせいで軍が多いのさ。」


「はぁ…」


「その分、だいぶ街自体はゆるいだろう?入る際にギルドカードの提示すら必要なかったんだから。」


「まぁ確かに。」


というか、街の周りをぐるっと高く頑丈な壁が取り囲み、入り口に数人兵士が立っているだけだった。

特にギルドカードの提示が求められたとかはなく、本当に素通りだ。

ちなみに、ノートランドでは割りと乱暴な方法で…出入りの一番少ない入口の騎士に眠っていただきました…

時間もなかったしね、仕方ないよね。


「基本的な考えが、完全に弱肉強食。街にならず者が入って、襲われて死んだならそこまでってこと。まぁ、そのならず者もまず間違いなく死ぬだろうから、そんなことする奴はいないだろうけどね。」


「全くもって生きるか死ぬかの国か。」


随分と命が軽い国だな。

それが嫌なら王国に行くか聖教国に行くかってことか。

超資本主義……といえば良いのかな。

強いものだけが勝つ、それは例えではなく現実として。


「そんなことより、あの三人を探そうよ。」


「それがなぁ…さっきから調べてるんだが…」


俺の『気配察知』に全く引っかからない。

人が多すぎて、とかではない。

あの三人の気配は完全に覚えてるし、なにより似ている気配すら感じてないから間違いない。

それにウィルの気配は、人間より魔物に近い。

こんな街中で魔物の気配なんて、早々あるわけも…あ、ルジャータは帝国ではそれなりに普及してるらしいから、その気配は何匹かキャッチしてる。


「考えたくはないけど、もしかして国境を越えれてないとか?」


「………」


アレクの質問を沈黙で否定…したい。

絶対的な自信とまでは行かないが、あの三人なら恐らく大丈夫だとは思う。

遠距離のサラ、超近距離のクリス、中近距離のウィル

単純な戦闘バランスはすこぶる良い、それぞれの実力もある。


「…とりあえず、宿を取ろう。もうかなり暗くなっている。」


気づけば辺りは真っ暗だった。

帝国の文明レベルは王国よりも進んでいるため、街灯らしきものもある。

そのおかげでそれほどでもないが、体感で二十時近くなっているのではないだろうか?

腹も減ったし、三人がこんな暗くなって行動しているとは思えない。


「それに、同じ考えで宿を探しているかも知れない。宿場近辺の方が探しやすいはずだ。」


自分に対して言い聞かせるように、俺達は宿を探すのであった。

お読みいただき、ありがとうございます!

ブクマ・感想・評価等本当にありがうございます!これからも楽しんでいただけるよう頑張ります!

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