069話 アレクとの合流
こんな時間になってしまって…
「やばいやばいやばい!」
ホントヤバイ!
ガインの足の速さを完全に見誤った!
もう、すぐ後ろに気配を感じる。
「どいて!邪魔!!」
目の前にあるこの街の入口の門を魔法で破壊する。
その近辺にも門番か衛兵らしき者もいたが、なるべく被害が出ないように門のみを狙って破壊する。
「な、なんだあいつ!?」
「門を破壊されたぞ!騎士団に報告だ!」
「!?後ろに見えるのは…ガイン騎士団長!?」
破壊された門に空いた穴から、街の外に飛び出す。
すれ違った門番が物凄く驚いている。
だけど、死者はいないようだ、よかった。
「すいません!通ります!!」
門を問答無用で破壊した人物が、意外にも礼儀正しく……挨拶だけだが、して門を抜けていくのを驚いた表情で見送る門番たち。
そのすぐあとに
「後方にいる騎士団員に、国境前に戻れ、と伝えてくれ。」
そう言うガインが通り、門番の頭の中は完全にパニックになっていた。
「な、なんだったんだ…」
「あれって確かガイン騎士団長だよな?」
「なら最初のやつは…指名手配中のシンとかいうやつか?」
よくわからない状況だが、とりあえず…騎士団に報告に行く門番だった。
「しつこいな!」
時々後方に向かって牽制の魔法を放ちながら、ある場所を目指す。
もうそろそろだと思うのだが…前方には小高い丘しか見えない。
「無駄だ。その程度で私にダメージを負わせれると?」
剣で弾くか躱すかして、ガインにダメージは全く無い・
だろうな、この程度、足止めにすら…
でも地面が抉れて、それなりに走りずらそうにしてる分には効果はある。
ガインのことだ、ここまで来たなら俺の目的もある程度把握しているはずだ。
遠くに引き寄せて時間稼ぎ…それをわかった上で俺を取り逃すまいと追いかけてきている。
ダメージを負わそうとしている、と、勘違いしているように見せている、んだろうな。
だが、予想ではクリスたちも既に国境を越えているはずだ。
サラの話では、国境を越えてまで騎士団が追いかけてくる可能性は非常に低いとのこと。
まぁ、元の世界でも勝手に越境して軍とかを派遣したら国際問題になったしな。
あとは俺と…アレクが国境を越えさえすれば…
「シン!」
その時、小高い丘の上でアレクが俺を呼ぶ声が聞こえた。
「!そこか!今行く!」
「早く!ってかガインがすぐ後ろにいるんだけど、どういうことだい!?」
「説明している暇はない!走りだせ!」
そう言って、アレクを走りださせる。
正直、今のアレクが全力で走ったって、すぐに追いつかれるのがオチだ。
"アレク単体"なら。
「!小娘…貴様ら、ルジャータを奪っていたのか。」
アレクに気付いたガインが、少しだけ驚いたような評定をする。
それと同時に、アレクもルジャータに跨がり、走りだす。
ルジャータは速いし持久力もある。
いくらガインが強くても、速くとも、ルジャータに乗られると流石に追いつけないはずだ。
まぁもし追いつけても、やりようはあるのだが。
「アレク!全速力で走れ!俺が飛び乗る!」
前を走るアレクに向かって叫ぶ。
「いいけど…最悪置いてくよ!?」
ふざけんな!
俺を置いてったらお前確実に殺されるぞ!
そう思ったのだが
「貴様らをみすみす逃がすと思うのか?」
後方でガインの魔力が上がる。
魔法を放つ気だ。
「『ファイアーボール』!」
魔法は初級、だが威力と速度は上級魔法レベルだ。
それがアレクの乗るルジャータ目掛けて飛んで行く。
「グァッ!!」
ルジャータが一声鳴いて横っ飛びをする。
先程までルジャータがいた場所に魔法が直撃し、土砂を撒き散らして地面がえぐれる。
そしてその巻き上がった土砂が、いい感じで目眩ましになった。
「今!!」
そう言って、魔力を爆発させる勢いで加速する。
そして自分の足元を魔法で爆発させ、思いっきりジャンプをし、前方のルジャータに向かって降下する。
「ちょっとずれてる!?」
空中で体制を整えようとするが、勢いをつけすぎただろうか。
このまま落ちると若干ルジャータの斜め前に落ちる可能性が…
「もうちょい右!右前!」
「え!?何!?」
アレクには聞こえてない!
直前の爆風で耳が少しやられたか。
だがそれをしっかりと聞いてる奴がいた。
「グッ…グアァァァァァッ!!」
ルジャータが…力強く鳴くと…なんと、飛び上がった!
「マジで!?」
俺に迫ってくるルジャータ
俺の落下加速も相まって、結構な衝撃でルジャータの背中に着座する。
「いっ……お、お尻が……」
「びっくりしたぁ…この子急に飛ぶんだもん、君が何か芸でも仕込んだの?」
相変わらず、どこか人事っぽい様子のアレク。
いや、お前の命も結構かかってんだぞ?
そのまま地面に着地し、勢いを殺すこと無く走り出すルジャータ。
「そんな曲芸まがいの事をしても逃げられんぞ!」
少し後ろでガインが立ち止まってそう叫んでいる。
追いつけないとわかったのだろう。
だが、その魔力を見る限り一切逃がすつもりはないらしい。
「………………『ガルム・フレイム』!」
少しの間があって放たれた魔法。
それは聞いたこともない名前の魔法。
だが、その威力は疑い余地もないほどのもの。
「なんだよ!あの赤黒い…太陽みたいな魔法は!?」
「……まさかね、闇魔法まで使えるとは。」
ルジャータの背に乗る俺たちを焼き殺そうと迫る黒い太陽。
炎が質量を持って襲い掛かってくる…その恐怖、威圧感は筆舌に尽くし難い。
「あれ、吹き飛ばすしかねぇよな?」
「できるかい?」
…自信はないがやるしかない。
ぶっつけ本番か。
「クッ…………う…うぅ……」
時間がない。
魔力を貯める時間も、細かく調整する時間も。
もう、奴の魔法は目の前に迫っている。
「あぁ、お終いかぁ。」
アレクが諦めたようにそう呟く。
だが
「…………終わらせるもんかよ…」
何とか間に合った
練習では一度も成功しなかった、この極限状態だからこそ出来たのかもしれない。
「『超電磁砲』!」
無詠唱の、簡易『超電磁砲』
数も一発、効率化もできてないから、しこたま魔力を持ってかれた。
それでも威力は、あの戦争で放った一発と全く遜色ない。
光の速さで打ち出される『超電磁砲』
全てを燃やし尽くす黒い太陽
その二つがぶつかり合い、激しい音と光を生み出す
二つの威力はほぼ互角なのだろうか
どちらが優勢とも言えず、数秒間、均衡を保ったままぶつかり合う魔法
お互いの魔法が、大気を燃やし、空気が、空間が歪んできたと錯覚するほどにぶつかり合っていたその時
激しい爆発音と、それこそ太陽が爆発したような光を生み出し、二つの魔法は炸裂してしまった。
あとに残ったのは
「まさか逃げ切るとは。」
ガインのみだった。
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