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選択結果は異世界でした  作者: 守月 結
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006話 バロックとお土産

それから数日。

俺は毎日クリスと狩りに出かけていた。

獲物は野生動物だったり魔物だったり山菜だったり。

クリスと一緒に狩りをしているから、基本的に危険な目にも会ってはいなかった。

危なそうならクリスが先行し、安全確認が取れてから俺が進んでいく。

強さはそれなりになってきたが、やはり経験という部分でクリスには全く及ばない。


「そういえば、あんたのステータスってどうなってるの?」


「言ってなかったけ?」


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


シン


HP :400

MP :100

力 :70

体力:50

敏捷:50

魔力:30


スキル


生命刀、連続剣、原理理解、熱操作(40℃~0℃)

※成長促進(秘密)


剛剣

→一撃だけ通常の倍以上の力で攻撃ができる。その後、しばらくは動けなくなる。


気配遮断

→自分の気配が周りに気づかれにくくなる。


気配察知

→自分の周りの気配をぼんやりと探ることができる。


武具メンテナンス

→武具の簡単なメンテナンスができる。


植物鑑定初級

→採取した植物の名前と有毒・無毒の鑑定ができる。


魔法


ファイアーボール、ファイアーアロー、ファイアーストーム


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


スキルはこまごましたものが増えていた。

ステータスに至ってはクリスを抜いていた。

たった数日でこんなに成長したのは、まず間違いなく『成長促進』のおかげだろう。

ぶっちゃけありえないだろう、こっちの世界来てまだ一週間かそこらだぞ?

その程度でずっと狩りをやっているクリス以上のステータスとか。


「…もう驚かない、もう驚かないわよ。」


クリスが怨嗟の視線を投げてくる。


「あはは…なんでだろうね、こんなにすぐに成長するなんて。」


やばい、これはやばい。

『成長促進』のスキルがバレるのも時間の問題か?

別にバレたっていいんだけどさ。

芋づる式に嘘というかごまかしが暴かれていくような気がして…

まぁ…伝えてない、伝えれないスキルも習得してるんだが。


クリスの視線を流しつつ、今日も今日とて狩りに勤しむ。

もうここで生活していくのも悪くないんじゃないのか?

どうせ勇者じゃないんだから、世界を救うなんてことはしなくていいんだし。

早めに狩りから戻ると、村の中心に人だかりができていた。

その中心には見たことない人物が。


「師匠!」


クリスが弾かれたように飛び出した。


「おぉ!嬢ちゃん!今戻ったぞ!」


40歳ぐらいのガタイのいいおっさんが、片手を上げてクリスに挨拶をする。

風貌は若干薄汚れている感はあるが、がっしりとした肉体、腕などに古傷はあるものの間違いなく若いころは相当の剣士だったと思わせるような気配。

背中に大剣を担いでおり、鎧も俺やクリスが着ているような安っぽい革の鎧ではなくしっかりとしたものに見えた。


「師匠早いですね、街から戻ってくるのはもう数日かかるかと思ってましたけど。」


「あぁ、ホントはもう少しゆっくり帰ろうかとも思ったんだがな。どうもキナ臭い話を耳にしてな。」


師匠と呼ばれた男はじゃっかん眉をひそめてそういった。


「まぁその話は後で。ところでそっちの見ない坊主が噂の『ウバワレ』兼期待の新星か?」


「はじめまして、シンと言います。数日前にクリスに助けてもらってから村でお世話になっています。今はクリスト一緒に狩人として働いてます。」


「そうかそうか、俺はバロックだ!なんでも狩りはもうかなりの腕前だそうだな!これは俺も狩人引退かな!」


バロックさんは豪快に笑いながら、俺の肩をバシバシ叩いた。

人懐っこそうな目元には笑いジワが刻まれている。

身長もかなり高い。180くらいか?

茶色の短髪でゴリラのような盛り上がったな筋肉は、この街一番の剣士と言われて納得できる。

多分、クリスが狩りでなら勝てると言ってはいたものの、バロックさんが本気でやったならクリスの惨敗になるだろう。

にしても、叩かれた肩がめっちゃ痛い。

これ、ウルフドッグの突進並みの威力だぞ。


「バロック、俺が頼んだものは売ってたかい?」


「うちの家でも頼んでたものもいくつかあったと思うんだけど…」


「おじさん!街での話をきかせて!」


「わかったわかった、お前ら。順番な順番!まずは街で買ってきたものの分配だな!」


バロックさんに街での買い物を頼んでいた人たちだろう。

我先にと頼んでいたものを受け取っていく。

ちなみに、なぜバロックさん一人で街に買い出しに行くのかというと、街までの道のりはかなり険しいらしく、複数で行くのはむしろ危険だということ。

複数だとどうしても移動速度が落ちてしまうということ。

それなりの強さを持った狩人や防人といっしょに行くと、村の防衛などが不安だということ。

最後に、バロックさんのアイテムボックスの大きさの問題らしい。

俺は規格外の大きさだが、バロックさんは一般人ではかなり多い30種各50個まで行けるらしい。

しかもそれなりにステータスも高いので、一個の容量もかなり大きいらしいのだ。

そんなわけでバロックさんが毎度買い出しに行っているんだそうな。


「そうだ、坊主と嬢ちゃん。後で村長の家に来てくれ、いろいろ話すことがあるんでな。」


「ん、わかった。」


「はい。」


そして日が暮れるまでバロックさんのお土産配布は続いたのだった・




********************




夜、ロウソクに日を灯しながらバロックさんに言われたように村長宅で待機をしていた。

ふと村長宅の扉が叩かれ、バロックさんが入ってくる。


「いや、夜にすまんなみんな。」


今村長宅にいるのは、俺とクリスと防人3人と村長とバロックさん7人だ。

村での戦闘部門と最高権力者。

メンツを見て想像してみたが、どう考えてもいい話ではなさそうだ。


「単刀直入に言う。この村に魔物の群れが近づいてきている。」


「数は?」


間髪入れずクリスが尋ねる。


「…わからん。が、最低でも100単位だと思ってくれ。」


「全部がウルフドッグ…ってわけじゃないですよね。」


「むしろウルフドッグが100匹単位で挑んでも足元にも及ばないような魔物が、100匹単位だ。」


その言葉に全員が息を呑んだ。

嘘だろう?ウルフドッグであっても100匹も集まれば相当な強さだぞ。

それより余裕で強い魔物が数百匹?

俺とクリスならもしかすると数匹は相手できるかもしれないが…


「ちなみに、一匹一匹はおそらく嬢ちゃんでも勝てるか勝てないかってところだ。」


まじかよ。


「そんな強い魔物…この辺のじゃないわよね?どこから…」


そういってクリスが顔を青ざめた。


「まさか…山を越えて…?」


バロックさんが小さく首を縦に振った。


「馬鹿な!ガイレン山脈を越えてくるというのか!」


防人の一人が叫んだ。


「無理だろう!あの山は人どころか魔物ですら生きていけない環境だぞ!」


他の防人も同じように反論した。

ガイレン山脈とは、この山村の後方にそびえ立つ大山脈だ。

その山脈を越えると、ほぼ手付かずの自然が残る"魔の大陸"と呼ばれる場所にたどり着くらしい。

そう聞けば聞こえがいいが、こっち側とは比べ物にならない強さの魔物、平地であっても環境が劣悪らしく、普通には生きていけない。

その分貴重な資源などもたくさんあるが、普通に生きるだけなら山のこちら側は天国なんだそうだ。

ちなみにその山脈は頂上が全て雲よりもずっと高い山々で、快晴の時にしか頂上は見えない。

そんな山脈が今見える分よりもっと奥まで連なっているようで、山越えをしようなどとは人間も魔物も考えないそうだ。


「麓の街…ブルムの街から定期的に調査隊が出ているのは知っているな?」


バロックさんが深刻な顔をしながら尋ねる。


「前々回の調査では何も問題はなかったそうだが、前回の調査であることに気づいたんだそうだ。」


「あること?」


「掘削の跡が見つかったそうだ。」


は?掘削?おいおいまさか…


「洞窟を掘ってったってことか?」


そうとしか考えられないな。


「多分な…」


「魔物にそんな知能はあるのか?いや、あったとして、そんな知能の高い個体がわざわざこの山脈を越えようと思うのか?」


魔の大陸に行く手段は、もちろん山越えだけではないそうだ。

山を迂回する手も、船で渡る手もあるらしい。


「だが、ここは人間側の防衛が一番手薄だろ?」


確かに。山越えなんて無理だと決めつけているからか、魔の大陸が近いのにまともな防衛手段がないローグス村でも成り立つのだ。


「俺はちょうど、調査隊が戻ってくるのと同じくらいにブルムの街に到着したんでな、話をすぐに聞けたんだ。今回は別ルートから山脈に調査に行ったらしく、この村は通らなかったらしい。」


いつもはこの村を通過しているみたいだ。


「…ちなみに、調査隊の予想ではあとどれくらいで魔物が来そうなんじゃ?」


村長が重い口を開く。


「早くて2ヶ月ってとこらしい。進行速度も正確にはわからないらしくてな。」


「2ヶ月ではこの村に軍を回すこともできんし、できてもブルムの街に防衛軍を配置するくらいじゃろうな…」


だろうな。

ローグス村からブルムの街まで、単身で移動しても片道一週間程度。行軍であれば、どんなに早くても3倍以上の時間はかかるだろう。

それならば…


「村を捨てるか…」


ため息を吐きつつ、村長がそう言った。


「でもっ…!」


クリスが反論を言おうとして、立ち上がり他の人たち全員を見渡す。

誰もが顔をそむけ、最後に俺の方を見た。

俺はゆっくり首を横に振るしかできなかった。

それを見たクリスは、悔しさからか下唇を噛み拳を握って下を向きながら腰を落とした。


「…明日、村の皆にわしから説明しよう。」


村長の言葉で、その会合は解散となった。

そしてみんな無言で家へと帰っていった。

家についた俺は自分の力のなさを呪った。

きっと、勇者なら。

勇者だったなら。

それこそ奇跡の力とか、隠された能力が開放されて、さくっと危機を乗り越えるんだろう。

そしてそれが噂になって、英雄として歩んでいくんだろう。

俺にはそんなことできない。

勇者じゃない。

力もない。

だから、できることをするしかない。

今できることは、村のみんなと村を捨てて逃げることだ。

それを全力でやるしかない、それしかできないんだから。




この時、俺は本気でそう考えていた。



少し話を動かしました。

ホントはもっと説明部分を多くするべきなんだろうけど…それはおいおいってことで←ぇ

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