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選択結果は異世界でした  作者: 守月 結
62/103

061話 門前にて(壱)

タイトルの数字、漢数字のほうが良いかなって


お仕事がフィーバーしているので、しばらく更新が遅くなりがちです…また、本文も短めになりそうな…

でも毎日更新は続けようと思います

「あれが…帝国への…」


「はい。王国にある、三つの国へ続く門の一つ『ツノ門』です。」


クリスがフードを落とさないように門を見上げ呟く。

サラもその博識具合を遺憾なく発揮している。


「え?そんなこと街の人達言ってた?」


「昔読んだ本に書いてあったので…でも、今ではその呼び方をする人はいなく、ただの『門』と呼ばれているそうですが。」


申し訳無さそうにサラが応える。


「ふーん…あんた相変わらずよく知ってるわね。」


そうクリスに言われて少し恥ずかしかったのか、サラはフードを余計に目深に被った。

そして二人で門の入口にある、騎士が駐屯している小屋の目の前まで歩く。

関所を通る人間は騎士によりチェックされる、さながら衛兵や門番のようなものだ。


「止まれ。」


そう言う騎士は、それだけでかなりの腕前だとわかる身のこなしで近づく。


「帝国に行くから。」


「駄目だ。今はこの街全体で非常事態宣言がなされている。

何人たりともこの門を通過させる訳にはいかない。」


そう言って背後の騎士たちが、いかにも『通れません』と言うかのように槍をクロスさせる。


「それに上の命令で、通行するものは全て厳密な確認が必要だ。

見たところ冒険者のようだが…ギルドカードを見せてみろ。それにフードも取れ。」


クリスはこの騎士の不遜な言い方に若干腹を立てたが、特にそれを表に出さず黙っていた。

サラも同様に「随分と偉そう…」と呟くが、特に行動を起こそうとしない。

二人とも、この騎士の問いかけを完全に無視していたのだ。


「……どうした、はやくしろ。」


騎士の語尾の少しの怒気と威圧が混ざる。

それすら意に介さず、クリスは盛大な溜息をつく。


「あんたこそ何言ってんの?」


「………は?」


この手練の騎士…少なくとも中隊長レベルであろう騎士にとって、このような返答はここ数年聞いたことのないものだった。

そのせいか、間抜けな返事をしてしまう。

自身がバカにされている、という事に気づいたのはその数秒後だった。


「貴様!なんだそ「うっさいわね」


自身の言葉を遮り、あまつさえ更なる罵声を浴びせてくる不審者。

騎士の怒りは頂点に達しようとしていた。


「あたしは『帝国に行くから』って言ったの。

あんたたちの許可とかどうでもいいの。寧ろあんたたちが…」


クリスは剣筋が見えないほどの速度で剣を抜き、目の前の騎士を切り払った。


「邪魔!」


「『フレアジャベリン』!」


クリスの抜剣を合図に、サラの魔法が炸裂する。

火の上級魔法、『フレアジャベリン』。

単純に火の魔法を極限まで高め、更には着弾時に爆発すら起こす高難易度魔法。

火の魔法の配分を多くし純粋に威力を上げるのも手だが、爆発の方に配分を多くすれば、混乱を起こしやすく更には爆炎と爆風で煙幕にもなる。

今回は後者。

相手を倒すことよりも混乱させ、何が何でも門をくぐる必要があったのだ。


爆音と土煙が舞う中、魔法が命中した駐屯小屋は跡形もなく、騎士たちも突然の強襲に全く対応できていない。

そこら辺の地面も、サラの魔法のせいで穴だらけになっている。

さっきまでは門前の詰め所、という感じだったのだが、一瞬で戦場跡みたいになってしまった。


「な、なんだ!」


「ててて敵襲!!」


「うわあ!!腕が!腕が折れた!!」


クリス、サラが相対した騎士は三人ほどだが、周りにはかなりの数の騎士がいる。

しかも、門をくぐるまでにまだそれなりに距離がある場所で行く手を遮られたのだ。

間違いなく、シンたちの強襲を警戒したものであろう。

今、街外れでシンが奮戦してくれているが、それでもここまで警戒しているのは、さすがはガインの采配と言わざるをえない。


「サラ!今のうちに…」


そう言いかけた刹那。


「クッ!」


クリスが素早く後方に飛んだ。


「ク、クリスさん!」


「大丈夫!かすっただけ!!」


そう言うクリスの胸元には、胸当てを切り裂きうっすら血が滲んでいる。


「そうか…貴様らが"大罪人"か。」


土煙の中、幽幻のように立ち上がる人影が一つ。

先ほどクリスが切り払ったはずの騎士だった。


「なるほどな…そこらの騎士では相手にならないというのは本当のようだ。」


「…あたしも、あんたがさっきの一撃で倒れてくれるもんだと思ってたけど…」


そう言うクリスの声は、若干の焦りが見える。

先ほどの一撃は、殺さないまでもかなりの深手を追わせたはずだ。

それにもかかわらず、特にそんな様子も見せず立ち上がるこの騎士はなんなのだ。


「騎士の礼儀として名乗っておこう。私は第一中隊隊長、ナージェス。」


「……あたしは礼儀とか無いから名乗らないよ。」


「ふ…知っているさ。その赤毛、大罪人クリスティーナだな。……いや、『紅血こうけつの暴君』と呼んだほうがいいかな?」


「興味ない。」


そう言って互いに剣を構える。

ここで時間をかける訳にはいかない。

あらかた片付けたとはいえ、すぐに他から増援が来る可能性がある。

それに、今、囮を買って出てくれているシンにも申し訳がない。

だが、ここでサラから全く嬉しくない情報を聞くこととなる。


「気をつけてください。私も初めて見ましたが第一中隊長は騎士団の中で、実力は元よりその底なしの体力から『不倒たおれず』の異名を持っています。」


「私の異名を知っているとはね。さすがは元騎士団、大罪人サラだ。」


「……私は罪を犯したとは思っていません。」


そう言ってサラも杖を構える。


「時間稼ぎにはうってつけの異名ね。全く…厄介な奴。」


「ほぅ…私が『時間稼ぎ』?随分と舐められたものだ。」


ナージェスのは気が膨れ上がっていく。


「団長と互角に戦ったシンとかいう大罪人ならば私に分が悪いが、貴様ら程度…時間稼ぎどころか、ここでその命刈り取ってくれる!」


距離を詰めるために一気に駆けて来るナージェス。


「『剛剣』!!」


「『アースジャベリン』!!」


まだ土煙が舞う門前にて


更に土煙が舞うような轟音が轟き


クリス・サラ 対 ナージェス


の戦闘の火蓋が切って落とされた。

お読みいただき、ありがとうございます!

ブクマ・感想・評価など、とても励みになります!


気付いたら総合評価が300を超えてました。

本当にありがとうございます。

拙い文章ではございますが、楽しんでいただけるよう精一杯頑張ります!

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