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選択結果は異世界でした  作者: 守月 結
61/103

060話 ほんの少しのミス

ギンッ!


キンッ!


ヒュッ!


剣がぶつかり合う金属音、刃が空を切る音が路地裏に響き渡る。


「クッ!」


マキシムの剣閃に声が出てしまう。


「どうした!?そんなものではないだろう!?」


「……いやぁ、ちょっと長旅で疲れてましてね。」


そんな軽口を言い合う。

実際本気でマキシムと戦うと、恐らく一瞬で決着がつく。

だが、今は勝つことが重要ではない。


「今のうちに本隊に知らせに行け!」


「はっ!」


「!…させるか!!」


地面を強めに蹴って、伝令に行こうとした騎士に追いつこうとする。


「フンッ!」


それをマキシムの剣で遮られ、追うことが出来ない。


「チッ」


「先ほどのスピードは無理のようだな!もう数分もすれば本隊が来るぞ!」


「……面倒なことを…」


俺はそう、悔しそうな台詞を吐く。

だが"これでいい"。

ある程度の信ぴょう性を持たせることは出来たはずだ。

後は…『気配察知』を全力で展開し、ガインが来るのを待つだけだ。

その間に何人かこちらに近づく、強めの気配を察する。

……こいつらも倒しておいたほうがいいかな。


「マキシム隊長!」


「応援に来ました!」


「ふむ!油断するな!団長の言ったように、全力を出せる体力はないようだが、それでも強いぞ!」


「……」


俺達が全力を出せない?

あぁ…俺自身が言ったように、長旅で野宿…疲れが取れきれないと思われているのか。

だがそれは俺のこだわりによって解決されている。

野宿の度に、ウィルと会った時のように結構豪華な部屋というか家というか、それを作っているのだ。

下手な安宿よりも快適だった。

風呂も魔法とスキルで作ってたし、多分、戦争中よりも元気なんだが。


「まぁいいや…他に数人ここに強い奴が向かってるっぽいし、さっさと片付けときますか。」


「何を……」


そうマキシムが言いかけて、俺は演技をやめた。

マキシム以外の騎士をすれ違いざまに無力化する。

気を失わせる、手足の健を斬る、とにかく殺さないレベルで倒していく。

だが、その行動はマキシムにはほとんど見えていないだろう。


「………ふぅ、お終い。」


そう言って、マキシムの目の前に戻ってくる。

俺の影をギリギリ目で追えていたマキシムは、驚愕の表情をしている。


「お、お前、そんな体力があるはずが!」


「さっきまでの動きのことを言ってるのか?あんなもん嘘に決まってんじゃん。」


俺の刀は相変わらず、淡い光を放っている。

だが、前のように勝手に動く感じはない。

戦いになると発動するタイプか?と思ったが、そういうわけでもないらしい。

まぁ、それはいいとして…


「で?どうする?」


「……私一人でも戦うに決まっているだろう!」


マキシムが襲い掛かってくる。

それを、先ほどとは全く違い片手で刀を上げ、受け止める。


「なっ!?」


「最後に教えとこう、ガインは信用するな。あいつはヤバイ。」


それだけ言って、俺はマキシムを斜めに切り裂く。


(ばかな…あの時は団長がいたとはいえ、まだある程度相手になったはずだ…なぜこんなに…)


マキシムはそう考えながら、意識を失っていった。






********************






「ついに現れたか!」


ガインの目に闘志が宿る。


「すぐに編成を組んで向かわせろ!」


「はっ!ですが、獣人捜索で散っているため…すぐの編成は…」


「構わん!近い者からすぐに向かわせろ!」


ガインという人物は本来であれば冷静沈着、普通の人間が考えないことまで考慮し、あらゆる戦況を分析することに長けている。

だが今のガインは、待ちわびたターゲットが出てきたことに興奮しており、本来ならばもう少し思慮深く…タイミングが良すぎることに意識が無くはずだが、今はそこまで考えれてはいない。

いや、もしかすると、シンたちと獣人、その結びつきはあまりに無理矢理であり、無意識下で考慮外に追いやっていたのかもしれない。


ガインの命を忠実にこなす部下。

ガイン本人が盲目となっている今、それこそがシンの狙いだと気付くものはいなかった。






「かなり慌ただしくなってきましたね。」


シンとは全く逆方向の路地裏に身を潜めながら、サラがそう呟く。


「えぇ、予定通り、シンのいる方に騎士が全員向かってるっぽいわね。」


「大丈夫でしょうか…」


サラはかなり心配した表情をしている。

いくら小出しだと言っても、この街の騎士団を全員相手にするようなものだ。


「大丈夫よ、あいつなら。」


クリスも心配ではある。

いくらシンが規格外だとしても、同じく通常で規格外の強さを持つガインと、その他精鋭を相手にする。

それははっきり言って、この国の最高戦力と戦うに等しい。

今はまだ、魔術師部隊までは見えない。

だが、これ以上手をこまねいていると王都からの増援がどんどん増すだろう。

だからこそ、準備をかける時間もないし、強行手段に出るしか無いのだ。


「大丈夫、大丈夫……」


まるで自分に言い聞かせるようなクリスの言葉に、サラもそれ以上何も言えなくなる。


そして、二人でその場で待つこと一時間ほど。


シンのいると思われる方向から、大きな爆発音が聞こえた。

更に、廃墟と思われる建物が、土煙を上げながら倒壊する様子も遠目に見えた。


「!サラ!」


「はい!クリスさん!」


二人はフードを目深に被り、戦闘態勢を取る。

そしてその状態のままゆっくりと、それでいて隙がない状態で、王国と帝国をつなぐ門に向かっていったのだった。


お読みいただき、ありがとうございます!

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