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選択結果は異世界でした  作者: 守月 結
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053話 シンの刀

ストーリーの進みはそれほどでもないです

「ちょっと…今、剣筋がありえない動きを…」


クリスの顔が、信じられない物を見る目になっている。


「あぁ、"こいつ"が助けてくれたんだ。」


そう言って俺は刀を軽く持ち上げる。

まるで、それを誇るように刀が薄くまたたく。


「でも刀に意思があるなんて、聞いたこと…」


「うーん、多分さっきから俺が試していることと、何らかの関係があるかも。」


先程から試行錯誤している事を、もう一度試してみる。

感触はさっきより、ずっと滑らか。

うん、これなら行ける。


「………ふぅ。」


少しだけ目を閉じて集中する。

その間にも、アームドグリズリーは襲い掛かってくるが、それすら気にならない。

俺の代わりに、"こいつ"が迎撃してくれる。


キンッ!


熊の鋭い爪を、刀が迎撃する。

俺から殺気や事前の動きを感じられなかったからか、熊が焦ったような表情をする。

そんなものはお構いなしに、俺は集中を高める。


(この感じだ…きっとこのまま、うまく操作すれば…)


刀の青白い光が、強く、それでいて眩しくなく、温かいものになってくる。

それに比例して、刀がやってくれる迎撃が激しい物になってゆく。


(もう少し…あと少し…)


更に速くなる剣閃。

鋭く、速く、力強く

それはまさに…






「……え……」


それに最初に気付いたのは、サラだった。

その光に見覚えがあり、魔術師という事も関係している。


「なんだいあれ?刀が勝手に動いたように見えたけど。」


ステータスが下がっていても、アレクも一応剣を使う。

シンの刀の動きの不自然さに気付いた。

だが、サラほど核心に迫る疑問ではなかった。


「あれは………そんな……文献でも……理論上、不可能な………」


サラは頭を振って否定する。

自分も、騎士団の座学で基礎知識くらいは学んだ。

でもそれは"実現可能性は、限りなく低い"、そういう結果だったはずだ。

もちろん、"絶対に不可能"ではないので、できなくはないだろう。

歴史上、文献上、ただの一度も成功したことがない、その事実を無視すればだが。


「???」


ウィルが小首を傾げる。

アレクもサラの顔を見て、少し戸惑っているようだ。

その理由は、サラの表情だ。


口では否定をし、有り得ないと連呼している。

だがその表情は期待に満ち溢れて……否、歓喜に震えている。




「『魔法剣』…………剣技と、魔法の融合………」






「……よし!できた!!」


深い集中の後、俺の刀が一層力強く光り輝く。

その光は、やはり眩しさはなく温かい。


「熊共、もうお前たちは怖くないぞ。」


刀を軽く握り、リラックスした状態で熊に近づく。


「シン!!刀を構え………」


クリスの叫ぶ声が聴こえる。

だが、その声に対し「大丈夫」という意味を込めて薄く笑って応える。

それを見たクリスは、言いかけていた言葉を飲み込んだ。

熊は変わらず、武術を体得しているような身のこなしで襲いかかる。


「遅い。」


無動作からの、片手のみでの斬り上げ。

俺が言葉を口にした瞬間、熊は真っ二つになっていた。

真っ二つになった後も、恐らく意識が追いついていないのだろう、熊は攻撃をするために動こうとする。

上下に別れた状態でそんなこと、できるわけがない。

滑り落ちた上半身が必死に動くが、やがて力を失い、その瞳から生命の炎が消えるのが見えた。

それを気にすること無く、次のアームドグリズリーに相対する。


「"俺たち"の敵じゃないな。邪魔だ、どけ。」


刀が一瞬大きく光ったかと思うと、三~四匹、一度に"焼き払った"。

魔法は使えないわけじゃない、外に魔力を出せないだけだ。

俺は"刀に魔力を込めた"のだ。


魔力を形にして体外には出せない、そう思っていたのだが

戦っている最中に刀を握っている手に力が入り、いつものクセで魔法を使おうとした。

やはり魔法は霧散したが、一部が刀に移ったような気がしたのだ。

その時に思った

魔力を体外に出せないわけじゃない、外気に触れると霧散するのだ、と。


そう気付いてからは、戦っている最中に少しずつ、魔力を込めていったのだ。

魔力が霧散するおかげで、うまく刀に魔力が伝わったかが分かりやすかった。

それでも、戦いながらの試行錯誤はかなり難しかった。

ある程度魔力を込めた時、刀にある変化が起きた。


信じがたいことではあるが、まるで意志を持っているかのように、自発的に俺を守るように動いたのだ。

この刀は剣玉けんぎょくが変化し、俺に合わせて生まれたもの。

こういうことも…ないわけではないのか?

少なくとも、意志を持った上に、俺から生まれたもの…俺の魔力が通わないわけがない。

そう思い、魔力をさっきと同じように魔力を込めたのだ。


その結果は見ての通り

火魔法を込めると、刀の切り口が燃え上がる。

肉体強化の魔法まで込めれると思わなかったが、切れ味とスピード、威力が格段に上がる。

それを、俺自身のステータスと合わせると…まさに無限大の戦術、動きができる。


「お前らも、邪魔だ。」


他のアームドグリズリーも同様に切り裂く。

そもそも、動き自体は俺達よりずっと遅い。

見慣れぬ動き、俺達の先を読むような動き、それでスピードをカバーし俺達と渡り合っていたのだ。

その先読みができず、擬似的にだが魔法を使えるようになると、最早敵ではない。


「嘘でしょ……」


先ほどまで手こずっていた相手を、いつもの魔物のように屠る俺を見て、クリスが呆れたような、信じられないような顔をする。


「これで!」


最後の一匹も切り伏せる。


「………なんかもう、色々聞きたいけど…」


クリスが黒鉄こくてつの剣を肩に乗せ、ジト目で見てくる。


「あんたには、驚かされないことがないわね…」


「こ、今回もなんというか…偶然……」


一瞬、刀が光ったような気がする。

「偶然にするな」と怒っているかのようだ。

本当に意思が芽生えたのか?


さて、次はこいつらの群れのボスだ。

そう思った時


先ほどのアームドグリズリーの咆哮よりも強力で、禍々しい

叫び声にも似た、爆音が聞こえた。


「っ!うるせぇ!!」


「キャッ!」


その咆哮自体が物理的破壊力を持っているような

音の壁…ソニックブーム?というのか

そんなものを叩き付けられたかのような、激しい衝撃が襲いかかってくる。


「むちゃくちゃだろ!これ!」


咆哮でこれって…本体はどんな強さだよ。

そしてその咆哮に耐えられなかったのか、大きめのログハウスが騒音を上げ崩壊していく。

その瓦礫の中に残ったのは…


「……あぁ、強いわ。」


緑色の体毛

他のアームドグリズリーより一回り大きな躯体

そして、アームドグリズリーよりも、ずっと大きな覇気


こいつを倒すのは、かなり骨が折れそうだ…

お読みいただき、ありがとうございます!

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