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選択結果は異世界でした  作者: 守月 結
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052話 魔物ノ成長

「は?なんでそんな強い魔物がここにいるんだい?」


アレクが驚きの声を上げる。

魔物の研究をしていたせいで、アレクは魔物に詳しい。

そのアレクが強いという魔物。


「そいつは、そんなに強いのか?」


「うーん…僕が作ったキメラ、あれと同じかそれ以上だね。普通は、魔の大陸の奥地の大森林に住んでる。

アームドグリズリー程度なら、いてもおかしくないかな、この辺は魔物が強いし。

それでも数匹…その言い方だと、群れを作れるほどなんだよね?」


「うん…俺の村を作って、他の種族を入れようとしてたら、一番大きな家に住み着いちゃった…」


アレクのキメラ…特魔レベルか。

ウィルの強さは分からないが、あの熊…アームドグリズリーは、武術を使ってる感じもあった。

そんなのが群れでいて、そのボスは更に強い、ちょっと簡単には行かなそうだな。


「原因はわからんが、その強い魔物を倒せばいいんだな?」


「うん!ボス、倒してくれるの!?」


ウィルの方を向いて軽く頷く。

強いとは言っても、勝てないほどではないだろう。

唯一懸念点があるとしたら、魔法が一切使えないことか。


「クリス、魔法は肉体強化位なら使える。だけど、この結界内だとスキルも威力が低下するみたいだ。

純粋な剣術で戦うようにしてくれ。

サラは肉体強化の魔法を使って、回避と防御に専念。

アレクはサラにくっついてろ。」


「俺は!?」


ウィルが命令を待つ犬のように、尻尾を振って指示を仰ぐ。

うーん、どんぐらい動けるのかな。


「お前は………サラに襲いかかって来た奴の対応を頼む。別に倒せなくていい、俺かクリスが行くまで持ちこたえてくれ。」


森の中で一匹にやられてたから、単独で戦わせるのはまずいだろう。

本音を言えば、サラと一緒に後方にいて回避メインで動いて欲しいが、きっと反発するだろうし、"護衛"という名目上の任務を与えとけば、満足するだろう。


「了解!!」


ウィルは元気に返事をする。

少年の返事はこんなに微笑ましいのに…どうしてあのウザイケメンは…


軽く動きを確認しつつ、村の奥へ進む。

やはり『気配察知』は物凄く効きにくい、三メートルも離れれば一切スキルでは察知できない。

スキルは切り札だが、そのスキルが使えるか微妙なら、最初から使わなければいい。

ピンチはチャンス、チャンスはピンチ、スキルを使うときに不発だったら、逆にピンチになりかねない。


「あれだよ…」


そこには、アームドグリズリーが三十匹ほど。

大きめのログハウスを取り囲むように、他の動物?魔物?を食っていた。


「よし、行くぞ。」


俺とクリスは武器を手にする。

それを合図に、サラ、アレク、ウィルが後方へ

その気配を感じ取ったのか、アームドグリズリーがこちらに視線を送る。

その瞬間、犬の遠吠えのような鳴き声を発し、全てのアームドグリズリーがこちらに向かって来た。


「『アース…」


サラがいつものクセで、魔法名を呟く。

だが、魔力が拡散されて思い出したのだろう、魔法が使えないことに。


「…っ!『エヴァージョン・ネクスト』!」


回避率上昇の肉体強化魔法に切り替え、おとなしく後方に控えていた。

俺とクリスも無詠唱にて、肉体強化の魔法を唱える。


「クリス!さっき言ったけど、こいつらの動き、やたらと速いし特殊だ!一切気を抜くな!」


「わかってる!」


純粋な近接戦闘であれば、クリスは俺より強い。

余計な心配かも知れないが、あの熊の動きは危険だ。


クリスが剣を振り下ろす、するとアームドグリズリーは、前にも見た動きでクリスの剣を捌く。

それを予想していたのか、クリスは肩からとても受け切れない衝撃のタックルをし、熊の体制が崩れた。

そのまま剣を斬り上げ、熊を真っ二つにする。


「聞いてたけど!これは厄介ね!」


そう言いつつ、次の熊と相対するクリス。

次の個体は、前の奴の動きを見ていたのか、クリスと数合打ち合うレベルになっている。

恐ろしいほどの学習能力。

クリスと数合打ち合うということは……


「くっそ!めっちゃ強い!!」


俺ではギリギリということだ。

そんなのが、まだかなりの数。

というか、倒したのが二匹程度…


「こいつらなんなのよ!?」


更に一匹、クリスが切り捨てながらそう叫ぶ。

この強さは異常だ、どんどん強くなる上に、数も多い。

魔法が使えれば…いくらかやりようはあるのに。

攻撃用の魔法が使えない、これがこんなに厳しいなんて。

肉体強化の魔法も、強化には限度がある。

基本的に、自分の肉体能力をベースにステータスを上げるのであって、戦略の幅が広がるわけではない。

こいつらは、一度見た動きに即座に対応してくる。

単純な威力よりも、戦いかたのバリエーションが重要になる。


「だけど!なんでこいつら!」


「えぇ!一度には襲ってこない!」


そう、基本的に一匹か二匹、それ以上は周りで見ているだけだ。

それ自体も異常ではあるが、魔物のくせにこっちを研究しようとするあの目線…


「学んで…るんですか…?」


「……そこまでの魔物、僕ですら作れたことはないよ。」


後方で、サラとアレクが驚きの表情と、苦虫をすり潰した表情をしている。


「僕以外に、こんなことができる奴がいるとは思えないけど…」


アレクは何やら思案顔だ。

それを見てサラもなにか思う所があったのか、何かを考えている視線を送る。


「ボスも…姐さんも…俺が手も足も出なかったのに………あんなに戦えてる……」


一人、瞳を少年のように輝かせている…実際、少年だが。

三人は別々の表情をしているが、認識としては共通していた。


"このまま、勝てるのか?"






********************






「こなくそ!!」


やっとこさ三匹目を斬り倒す。

正直限界が近い。

というか、この後この群れのボスもいるんだろ?勝てるのか?

クリスも息を切らしながら、向こうは五匹目を斬り伏せた後だった。


「……はぁ…はぁ……」


体力も限界に近いようだ。

俺よりも激しい動きで、俺よりも多く倒しているのだから、それも当然だ。


「……もう少し、もう少し"時間"があれば……」


さっきから、何度か試しているのだが、それが一向に実を結ばない。

やはり無理なのか?

この結界内"だからこそ"学びやすいと思ったのだが。

いや、感触はある、だが実際には使えない。

あと少しなのだ、あと少しで…


「シン!!」


クリスが叫ぶ。

まずい!気を取られた!


刀で防ぐのが…間に合わない!!


そう思った時


「……………え?」


マヌケな声が口から出た。

誰かが助けてくれたとかではない、誰も助けに入れるタイミングじゃなかった。

だけど俺は助けられた。

人ではないモノに。


「…………今の今まで忘れてたな。」


"そいつ"に向かって声をかける。


そうだ、俺はこいつと共に戦ってきた。


そして、今も助けられた。


「ありがとうな、助けてくれて。」


素直に感謝の気持ちを伝える


「ごめんな、今まで放ったらかしにしてて。」


謝罪の気持ちも伝える。


「そして、一緒に戦ってくれ。」


そう、語りかけた、俺の右腕に握られている『刀』に。


それに答えるように、薄く青白く光って応える刀。


「これが終わったら、名前を決めような。」


そう言って、アームドグリズリーに向かって、改めて刀を構えた。

お読みいただき、ありがとうございます!

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忘れてたわけじゃないよ?ほんとだよ?


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