051話 獣人の…
遅れて更新…
しかもちょい短め…
「ちょっと待ってくれ、色々ツッコミたい部分がある。」
必死の懇願を一旦遮る。
「まず俺は君の師匠ではないし、ならない。」
よくわからんがそこは断固拒否だ。
ウィルはあからさまに残念な表示をして、更に何か言いかけるが、それを手で制し続きを話す。
「次に『助けて』ってのは?こっちは事情によっては、手助けくらいできる。」
こちらも急ぐ旅路だが、さっきみたいな魔物一匹倒して終わり、みたいなのだと協力できる。
クリス、サラをチラ見しながら話すと、意図が正確に伝わったんだろう、二人とも頷き返してくれた。
もちろんアレクの意見はあっても無視だ。
「……実は、俺の村にある魔物が住み着いちゃって…
そいつを倒してもらいたいんです!」
魔物ね。
まぁ倒すくらいなら、そんなに時間はかからないか。
だけど、村ってどこだ?
「それくらいなら。その村はこの森の奥にあるの?」
「ありがとうございます!ボス!はい!村はこの森の結界の更に深い場所にあります!」
今度はボスかよ。
「ボスでもなくて…まぁいいや。それより結界?そんなものがあるのか?」
「はい!見つからないように段々強くなる結界があるです!」
だから今まで見つからなかったのか。
ていうか、この子さっきから丁寧語が微妙におかしい。
この歳ならまだ慣れてないのか。
それでも今だけ礼儀正しいのは感心だな。
「そう言えば…森の中に行くほどに、シンの気配が薄くなってったような気がするわね。」
「もしかして魔法が使えなかったのも…」
「はい!まじゅつしごろし?の効果もあるそうです!」
随分と都合のいい結界だな。
「わかった。襲われてるってことは、急いだほうがいいな。」
そう言って俺達は準備を始める。
夜の森はかなり危ないが、そうも言ってられない。
せっかく作った野営だが、壊していくか。
…いや、ルジャータもいるし、このままでいいか。
「俺が案内します!」
ウィルはそう言って先頭を歩く。
いくらなんでも、それは危険過ぎると言ったのだが
「俺の種族は夜目が利きます!夜でも見えますよ!」
そう元気に言われては反論のしようがなかった。
夜目が利かない俺は、『気配察知』で視界を補う。
だが、それもウィルと出会った所くらいまでが限界だった。
何が限界だったのかというと
「嘘だろ…『気配察知』が…殆ど効かない…」
隣りにいるクリス、サラ、アレクの気配すら危うい。
先頭を歩くウィルの気配は、なんとかギリギリ、と言った感じだ。
「奥に行くだけで、こんなに強力になるなんて…」
「へぇ…僕は今何も感じないけど、君らがそう言うなんて、かなり強力なんだねぇ。」
「気のせいだと思いますが、体内の魔力すら圧迫されてる感じが…」
次々に変調を訴える。
この結界、聞いていた以上にヤバイやつじゃないか?
そんな結界内を、ヒョイヒョイ動くウィルは、流石は獣人といったところか。
「もうすぐ!」
テンションが上がっているのか、口調が歳相応の無邪気なものに変わっていく。
そして、薄暗い森の中、なんとかウィルの後を付いて行くこと、数十分。
目の前がいきなり光に光に覆われた。
「っ……」
次に目に飛び込んできたもの
それはまさしく、獣人の村だった。
俺達のいた、ローグスの村と同じかそれ以上の大きさ
だが、その住居は全く異なるものだった。
ログハウスのように、数本の丸太を組み合わせた、少し大きめの家
所々にある、掘ったかのような大きめの穴、これも住処のようだ
ローグス村は、せいぜいが茅葺き屋根の劣化版、こっちは完全に家と呼べるもの
一部、竪穴式住居だけど
他にも細かく見ていくと、庭の柵だったり井戸だったり、物凄く丁寧に作られている。
技術レベル、という点ではブルムの街よりずっと低いかもしれないが、村としての便利さ、綺麗さ、という点では多分、今までで最上位だ。
だが唯一、疑問点がある。
「なぜ誰も居ないんだ?」
そう、村の綺麗さとは打って変わって、人の気配…いや、生き物の気配がしない。
畑にも、軒先にも、家の中にも、道にも
まるでモデルルームのような、時代劇のセットのような、"作られた静けさ"
なんか……気持ちが悪い
「すごいでしょ!?」
何故かウィルは誇らしげだ。
別に、お前が作ったわけでもないだろうに。
「あぁ、すごい。で?村の人は?」
「??」
ウィルは小首を傾げる。
……あれ?言葉が通じないのか?そんなわけないよなぁ
「えーと…ここで住んでる人は?」
「俺!」
「いやそれはわかる。他の人だよ。」
「他の人?」
小首を傾げた上、頭にハテナマークが浮かんでいる。
「いないよ?」
………はぁ???
いないって、どういうことだ??
「だって"俺の村"って言ったじゃん!」
「…………え?ホントに"お前の村"なのか?」
「そうだよ!」
ウィルは満面の笑みを浮かべる。
頭がおかしくなりそうだ。
え?じゃあこの村のこの光景、こいつが全部作ったの?
「どおりで…不気味な感じがしたわけね。」
「はぁ…獣人っぽいですねぇ。」
「そういう種族ってことかぁ。」
他のみんなは納得顔だ。
待て待て待て
おかしいだろう。
「は?なんでみんな、そんな訳知り顔なの?」
「え…獣人は成人したら、一人で群れを作り、そこから繁栄させていく、という掟のある種族もいますし…」
「あたしも、聞いたことあるくらいだけど。」
「僕は連合国にいたからね、珍しくはないかな。」
おかしいだろう!
どんな獅子でも、千尋の谷よりも厳しい環境に放り投げないだろう!
元の世界なら、いくら掟でもすぐに警察が飛んで来るよ!
「………分かった、もういい。俺の常識は一切通じないってことが分かった。」
こめかみを抑えつつ、無理やり納得させる。
「それはいいとして、住み着いた魔物ってのは?」
ここに来た要件はそれだ。
魔物を倒す、やることは変わらん!
「……兄ちゃ…師しょ………ボスが倒してくれた、アームドグリズリーの群れのボス……ディザスターグリズリー。」
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