046話 逃走直後その2
何回書きなおしてもしっくりこない…
また今度書き直す可能性があります。
ストーリーには変更がないようにしますので、このまま読み進んでも問題ございません。
「どうしてそう思うんだい?」
アレクの笑みは変わらない。
「確証は何も無い、ほとんど俺の勘だ。理由は…ガインさんがお前に用があるのはわかる。だけど、目的はお前と俺だと言った。
その二人が勇者候補、まぁ俺はそう見えるだけで違うんだけど、これは偶然と言うには難しいんじゃないのか?」
アレクは俺の強さから、俺が勇者候補だと勘違いした。
それをガインも勘違いした可能性がある。
「ちょっと説得力にかけるかな。だってあいつは君を殺そうとしたんだよ?」
確かに。
最初の不意打ちの一撃、あれは俺達三人を殺す剣閃だった。
だけど、それもほかの可能性を考えると説明出来なくもない。
「もしくは…お前は勇者候補として用があって、俺は『ウバワレ』として用があったんじゃないかのかと思ってね。」
俺も上手く説明がつかない。
正直、支離滅裂な説明になってなくもないだろう。
「ガインさんは、俺の事を『今回のウバワレ』と言った。俺は『ウバワレ』ってのは記憶喪失の事だと思ってた。だけど、ガインさんの言い方だと、全く別の意味に聞こえる。
今回があるという事は、前回もあるという事だ。
そして…『ウバワレ』は……もっと別の、何か重要な意味があるんじゃないのか?」
少しだけ頭に浮かんだ嫌な想像をかき消しながら、アレクに問う。
アレクの表情は一層笑顔になっていた。
「へぇ!なるほどね!」
「ならやっぱり……」
「いや、僕も知らないんだ。隠してるとかじゃなくて、本当に知らない。」
お前、完全に何か知ってる雰囲気出してたじゃねぇかよ!
正解もクソもないじゃないか!
「だけど、あいつは僕が言ってないのに、僕を勇者候補だと知っていた。更に、僕の目的もある程度知っていた。
油断ならないやつだし、隙を見せちゃいけない相手だとは思ってたよ。だから、あいつから守ってもらうために、君たちに護送に参加するよう頼んだんだ。」
あの魔物と死霊魔術は予想外だったけどね、と苦笑する。
だとすれば…やはりガインも勇者候補と考えるのが自然か…?
いや、それもそうだが
「そう言えば、お前は、自分以外の勇者候補を知ってるのか?」
そもそもそれを聞いていなかった。
前はちょっと情報量が多すぎて、聞きそびれていたのだ。
「数人は。生きてる勇者候補で僕が知ってるのは…聖教国に二人、帝国に三人かな。」
聖教国と帝国なるものを知らないんですが。
…今はとりあえず置いとこう。
「全体で何人いるかとかは知っているか?」
「さぁねぇ。勝手な想像だけど、百年も生きてる勇者候補ってのは珍しいんじゃないかな?
いくら不老とはいえ、戦闘で首をはねられれば死ぬし、誰かに毒殺されることだってある。病気になる事もあるしね。
それに百年もあれば、その間に何らかの結果を残して有名になるか、魔物に殺されるかするのが普通じゃないかな。僕の場合は逃げ回ってたし魔の大陸だったから例外としてさ。
そんな珍しい存在の僕が知らない勇者候補…最近来た君みたいなのとか、よほどうまく隠れてた奴、それを考えてもせいぜい多くて十~二十人ってとこじゃないの?」
まぁ妥当な人数だな。
勇者候補イコール世界を救う手段だと考えても、それ程多くないだろうし。
「ガインさんが勇者候補の場合、最近来た人なのか…」
「団長の過去はあまり知られてません…数年前から騎士団団長になってるって事しか。」
「うーん、なんとも言えないなぁ」
「もし勇者候補じゃなかった場合は?」
クリスがあまり答えたくないことを聞いてくる。
これがクリスの野生の勘が働くと思う理由だ。
時たま、痛い核心部分を突いてくるんだ。
「……他の勢力…それこそ、勇者候補に対抗するための組織…とか?」
何のためにあるかはわからないが、そういったものしか考えられない。
いわゆる、魔王勢力とか?
そう言えば世界が崩壊しかかってるってことだから、その崩壊を導いてる勢力とか?
……そんな奴らに狙われるとか、考えたくないな。
「少なくとも、この国で俺達は大罪人になったって事は変わらないか。」
自分で言って嫌になってきた。
「でもどうするの?王都に行って正直に事情を全部話す?」
「それともこの国を滅ぼすかい?」
「クリスの案は恐らく無理だろう。ノコノコ出ていったら、テキトーな理由で殺される可能性が高い。
アレクはどうかわからないが、俺達三人は間違いなく命はないだろう。」
アレクの案は完全に無視する。
俺の『超電磁砲』を上手く使えば一国と戦うことは難しくないだろうが…何が楽しくて国を滅ぼさないとダメなんだよ。
「現実的なのは、他の国に逃げるってとこですかね…」
てかそれしかないだろうなぁ。
とてもじゃないけど、逃げ続けれるとは思えない。
「はぁ……ガインさんの事も推測しかできず、今後は何とかして亡命…でいいのか?そのことを考えなきゃいけないし…この古城にいつまでもいるわけにはいかないし……問題は山積みだなぁ……」
頭が痛くなってきた。
ふと外を見るとからあたりはかなり薄暗くなっている。
「……今日はもう休もうか。色々あり過ぎて、頭の中が限界だ。」
「そうね。あたしももう無理…」
「そういう風に言われると…私も急激に疲れが…」
「みんなだらしないねぇ。」
俺とクリスとサラがアレクに怨嗟を込めた視線を送る。
誰しもが、お前のせいだよ!と言いたくて仕方ない感じだ。
だがここで言っても始まらない。
「………最初は俺が警戒しとくから、みんな休んでて。
外から見えるから、松明とか火はなるべく使わないようにしよう。」
そう言って、俺達は順々に見張りをすることにし、眠りについた。
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「少しいいかい?」
俺が警戒をしていると、アレクが声をかけてきた。
サラとクリスは寝息を立てて寝ている。
アレクはただおぶさってただけだから、それほど疲れていないんだろう。
「なんだ?」
「いやぁ、なんか申し訳ないかなぁって思ってさ。」
「今更だろう。俺たちはお前から情報を得る必要がある、だからお前を助けた。それ以上でも以下でもないんだ。」
事実、こいつがすべての情報を俺たちに教えてくれてたとしたら、きっとここまで助けなかっただろう。
アレクのみを置いて逃げるなんて選択肢だってあったんだ。
「最初の条件だと、王都まで僕を護送したら村の人達の居場所を教えるってことだったよね。」
「…この状況だと、その条件は不達成ってことになる。できれば別の条件で改めて取引したいんだが。」
「僕の研究所。帝国と魔の大陸との境目くらいにある。」
急にアレクが場所を語りだした。
「どういう風の吹き回しだ?」
驚いて少し声が大きくなる。
それに反応するかのように、クリスが少し身を捩った。
起こしちゃったか?と思ったが、そのまますぐに寝息が聞こえてきた。
「………別に。命の恩人と言えなくもないし、目的としては『殺されないために』って意味で護送を頼んだんだ。王都に行きたかったわけじゃない。結果的に依頼は達成されてるよ。」
アレクはバツが悪そうにそっぽを向いてそう言った。
こいつでも悪いとか言う感情はあるんだな。
「そうか…ありがとう。」
「…やめてよ。僕が君たちの敵ということは変わんないんだから。」
その顔は、いつものムカつく笑顔とかではなく、歳相応の人からお礼を言われて気恥ずかしくなっている女の子そのものだった。
それを見て、何故か笑いがこみ上げてきてしまった。
「………ップ」
「……何?」
若干の殺気を込めつつ、アレクが睨んでくる。
いつもの憎まれ口はなんなのか、今のしおらしさの本の数パーセントでいいから向けてくれれば、まだ可愛げがあるのに。
「いや、別に何も。」
「…………僕も疲れてるみたいだ、寝るよ。」
そう言ってアレクも床に寝転がって寝に入った。
アレクにどんなことがあって、どんな思いで、あんな戦争を起こしたのか。
そしてどんな百年を歩んできたのか。
気にはなったが、話さないなら別に聞き出し必要もない。
でも、さっき見せた顔が素顔の気もしなくない。
『気配察知』を展開しつつ、俺も少しだけ意識を薄めてながらそんなことを考えた。
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