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選択結果は異世界でした  作者: 守月 結
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044話 創られし大罪人

書き方のコツがわかってきたようなそうでないような

「ふむ、反応速度はかなりのもの…いや、これは最初から警戒していたということかな?」


「そりゃ、まだ戦闘中ですからね。」


刃を交じわらせ、互いに一歩も引かない。

クリスとサラは未だに硬直しており、何が何だかわかってない様子だ。


「いや、『最初』からという意味だよ。」


「……まぁ、なんとなくは。」


確信はなかった。

と言うか、アレクに護送に参加してくれ、程度ならここまで警戒はしなかった。

アレクを無事に王都まで護送する、それが俺達レベルじゃないと務まらない。

それ程のトラブルが発生する事を、アレクが予想…いや、確信していたからだ。


「やれやれ…今回の『ウバワレ』は本当に厄介だな。」


『ウバワレ』?

最近聞かなくなってたが…一応、俺は『ウバワレ』ということになってたか。

だが、この『今回の』?


「何やら、色々と行き違い…勘違いがあるみたいですけど…」


「いや、そんな事はないだろう。私は極めて正確に現状を理解しているよ。」


交わっている刃に力が籠る。

それを瞬時に感じ取り、こっちからそれ以上の力で剣を弾く。

そのあたりで、やっとクリスとサラの硬直が解け、ガインさんと相対する。


「だ、団長!!な、何なんですか!?」


「………殺す気?」


サラは混乱の極みと言った感じ

クリスは…驚いてはいるが、動揺は見られない、やはりほんの少しではあるが、予想していたのかもしれない。


俺達三人はアレクを守るようにしてガインさんと向き合った。


「狙いがその娘という事もわかっているのか。」


「嘘ですね。アレク"も"でしょう?」


「……確かに、アレクも君もだ。」


殺気は感じない、全く。

それが問題なんだ、殺す気がないのに完全に首を切り落としにかかってきた。

俺が警戒していたから良かったものの、あんなノータイム、ノーモーションで殺しに来るなんて、予想していなければ防ぎようがない。


「残念だが、タイムアップかな。」


ガインさんが、そう言った時、俺の『気配察知』にも、騎士団らしき集団が近付いてくるのが感知された。


「ここでやるのが理想的だったが、まぁいい。後後で問題ないか。」


「何を……」


その瞬間


「貴様ら!その娘をどうするつもりだ!?」


「は?」


ガインさんが、剣を構え先程とは打って変わって、いつもの荘厳な顔付きでこちらに怒気を飛ばす。


「まさか…団長…」


サラの予想が当たったのか、ちょうど騎士団の先頭集団が顔を出す。


「団長!ただ今到着……!どうしたんですか!?これは!?」


若い騎士が驚きの声を上げる。

そりゃそうだ、この状況はどう見たって


「裏切ると言うのか!?」


って事に見えるよな。


「そんな!我々の英雄が…サラまで…」


「……最初からその娘が狙いだったのか、それとも篭絡されたか!?」


「ちょっと!何言ってんの!」


「そ、そうです!話を聞いてください!」


「クソッタレ…そっちこそ『最初から』こうするつもりだったのか…」


こっちが何を言ったところで、騎士たちの信頼度はガインさんの方が圧倒的に高い。

ゾロゾロと騎士たちが魔法陣へと向かってくる。

そして一様にこの状況に驚愕している。


「嘘だろ…」


「いや、でもあの強さは異常だった…」


「計画されてたのかよ…」


ひどい言われようだ。

集団心理とはこうも簡単に誘導されてしまうのか。


「大人しく投降しろ、命までは取らない。」


「さっきこっちの命を無感情に刈り取ろうとした人の発言とは思えませんね。」


「何を言ってるのかわからんが…こちらを惑わそうとしても無駄だぞ!」


完全にこっちを悪者にするって算段かよ。


「……予想よりも面倒な事態になったねぇ。」


今まで黙っていたアレクが口を開く。


「なんか解決策はないか?」


「無理だね。僕の『転移』が使えれば…いや、根本の解決にはならないかな。」


だろうな。

だがこのままおとなしく捕まるわけにも行かない。


「…不本意だけど」


そう言って俺は全力の殺気・剣気を発する。

この場のみ、濃密な死の香りのする空間へ一瞬で変わり、ガインを含め騎士団全体が動揺するのが感じられた。


「っ重い!ここまでの殺気を隠していたとは!」


ガインさんが何か喚いているが知ったことじゃない。


「お前ら…覚悟は良いな?」


出来る限りの怒気と殺気を含んだ俺の言葉は、正しく騎士団に伝わった。


「し、シン、本気!?」


「た、戦うんですか!?」


二人が焦ったように声をかけてくる。

…これは"勘違い"をする前に、さっさと行動したほうが良さそうだ。


「行くぞ!!」


叫び声の直後、俺は刀にできる限りの魔力を集中させ、地面に叩きつけた。

叩きつけると同時に、魔力の爆発が起こり土草が盛大に舞い上がる。

そして方向も調整していたので、それは全て騎士団へと降り注いだ。


「クリス!サラ!逃げるぞ!」


この二人が勘違いしたままだと、俺の攻撃の直後に騎士団に斬りかかってしまうかもしれない。

できれば騎士団の人を傷付けたくはない、だがガインのみを倒すことも、現状では厳しい。

こんなところで殺し合いなんてまっぴらごめんだ。


「クリスはアレクを担いで先頭を!

サラは防壁を張りつつクリスに続いてくれ!

アレク!お前はクリスに逃げ道の指示をしろ!

殿しんがりは俺が務める!」


そう伝えると、一瞬驚いた顔をしたが即座に各々の役割についた。


「アレク!どっちに行けばいいの!?」


「もうちょっと優しく担いでくれな…痛い痛い!わかったよ…そっちだ!」


「し、シンさん!行きますよ!」


「大丈夫だ!『気配察知』の範囲外でなければいくらでも追える!ここは任せて先に行け!」


まさか、人生で一度は言いたい台詞トップ3の一つを、こんな場面で言うとは。

もっとカッコつく場面で言いたかったなぁ。


サラは不安そうな顔をしつつも、この場を俺に任せてクリスの後に付いて行った。


「何を考えているのかわからんが、全員逃がさんぞ。」


「それはどうかな?俺がここで足止めできれば、それも可能だろ?」


ぶっちゃけきつい。

ガイン一人でも、俺と同じくらいの強さを感じる。

それ以外にも、弱っているとはいえ騎士団の部隊、それにあのマキシムの気配も感じる。


「フン!!」


「チッ!」


上段からの一撃。

受け止めた手がしびれる。

やっぱガインは強い、油断してたらマジでやられる。


「シン!」


そこにマキシムが乱入してきた。


「マキシムさん!」


「見損なったぞ!裏切りとは!!」


話を聞きやしない。

ウザイケメンめ。


「ちょっとは考えてくださいよ!俺達がこんなことしてなんになるんですか!?」


ガインとマキシム、二人の剣をギリギリで躱し、受け、なんとか説得を試みる。


「何を言うか!?団長が嘘を付いているとでも!?」


「あぁ!そう…「耳を貸すな!マキシム!!」」


ガイン!てめぇ!

二人の絶妙なタイミングでの攻撃に、ジワジワと俺のかすり傷が増えていく。


「そこ!」


「いっ…!!くそっ!」


左肩にいい一撃をもらってしまった。

そこにガインの追撃が来る。

それもギリギリで回避しようとするが、先ほどの肩の一撃でかわしきれず、左腕は刀を握るのも困難な程の裂傷を負ってしまった。


「っいってぇ!話くらい聞けよ!」


「断る!」


更に追撃が来たが、大きく後ろに飛びのいて躱す。

周りの騎士たちは戦いに参加出来はしないが、俺を逃すまいと包囲網を形成している。


「逃がしてくれない…感じだな。」


「当たり前だろう、君は大罪人だ!」


あぁ、大罪人決定かい。

裁判とかあるのかな、弁護士…なんてものはないか。

ぼんやりと考えながらも頭は冴えていた。


「もうそろそろいいかな。」


「本気をだすとでも言うのか?」


ガインとマキシムが剣を構えて迎撃体制を取る。


「あぁ、最初から戦う気はなかったんだ。」


体内に溜め込んでいた魔力を解放する。

この魔法は難しいし、相性の良くない二つを組み合わえているから、すぐに発動することができなかったんだ。


「なにを……」


「……『フラッシュフレア』」


魔法名を言った瞬間、俺の周囲から眩い光と爆音が発せられた。


「なっ!!」


「気をつけろ!独自魔法だ!油断せずに警戒に当たれ!」


その光の強さに、全員の目がくらんでいた。

どんな効果の魔法かわからない、しかも光で目がくらんで相手の場所もわからないとなると、できる範囲で場当たり的な防御しかできない。

そう、それが狙いだ。


「………?全員無事か!?」


ガインが大声で叫ぶ。


「は、はい!」


「こちら、特に攻撃は…」


「私達も、何かされた様子はありません!」


「何もない?まさか…」


全員の目と耳が治った時、そこにシンの姿はなかった。


「目眩ましをするためだけの魔法…そんな使い方をするとは…」


あの魔力量、それを全て逃走に使うとは。


「……一応、周囲の捜索をするように。」


「は!しかし、後ろから魔物たちが…」


騎士がもっともらしいことを言う。

そもそも騎士団がここに向かってきたのは魔物を迎撃するためだ。


「いや、それは"もう大丈夫だ"。捜索に移れ。」


「は!は?はぁ…」


確かに魔物の気配は感じない、なぜだ?

その騎士は大きな疑問を感じたが、上からの命令の前にその疑問は掻き消えた。


そして、他の者たちも同様の疑問は持っていたが、『街を救った英雄の反逆』という最大のトラブルの前に、その疑問はやはり有耶無耶になってしまった。

その後に魔物からの襲撃も無く、『アレクを狙ったもの』という都合のいい解釈をしてしまったのも原因であろう。


こうして、シン一行は英雄から一転、反逆者へと身を落としたのだった。

お読みいただき、ありがとうございます!

ブクマ・感想・評価等本当にありがうございます!これからも楽しんでいただけるよう頑張ります!


アニソンを聞きながら書くと、無駄にテンションが上ります。

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