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選択結果は異世界でした  作者: 守月 結
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003話 弱肉強食な異世界

毎日更新できればいいな。

勢いで書いてるんで設定崩壊しないようにしないと。

書き直す可能性もあり。

誤字脱字あればご連絡くだされば泣いて喜んで修正いたします。

「誰?」


その声は威圧しているといっても過言ではなかった。

剣を鞘に納めてはいるが、一部の隙も無いように感じられる。

こちらを見定めているのだろう。

そんな中俺は


「…はっ…あっ…」


声もろくに出せないでいた。

そりゃそうですよ、化け物イノシシに猛スピードで迫られ死の危険を感じ、そのイノシシが無残に殺され、しかも目の前にはそのイノシシを仕留めた女性、いや女戦士というくらいの雰囲気を持っているな、が鋭い目つきで睨んでいるのだから。

ガーネットのような紅く長い髪。

日本の女性のように整えている感じは一切なく、無造作に伸ばし放題といったところか。

警戒心をまったく緩めていない、切れ長の目。

身長は…平均的だな、160ちょいくらいか?

身体中、血まみれで(おそらく返り血)俺が着ている様な革の防具っぽいものを装備している。

インパクトが強烈すぎて完全抜けていたが、なかなかの美人だ。

属性で言えば、『気の強いツンデレお嬢様』ってとこかな。


「ここらへんじゃ見たことない顔ね。そこまで綺麗な黒髪は突然変異か遠方の大陸くらいにしかいないはずよ。」


どこか冷静に分析していると、女戦士が話し掛けてくる。


「いや…えっと、あの、その。」


「てか、あんたこんなところで何してんの?この辺にある村なんてうちくらいしかないし。村でもあんたみたいなの見たことないし。」


女戦士は警戒の色を強めていく。

威圧感というのだろうか、それが大きくなっていくのを感じる。


「……っぅ」


やばい、これが殺気というやつか?

息が詰まる、まだ呼吸が落ち着いてなかったところに、殺気のお替り。

『微妙な転生者』の僕にはきついっす。


「………はぁ。見た感じ武器もない、腰も抜かしてる、睨んだら震える。とても敵とは思えないわね。しかも…」


女戦士が俺の下腹部に目をやり、顔を曇らせすぐに逸らしてしまう。


え?なんで…………あぁああぁぁぁああ!


「あー、怖かったんだろうけど、その、そうなるまで怖がっているんじゃ、とてもどっかの偵察とか斥候の可能性はないかな。」


「………グスッ。はい………。」


山神真、改め、シン26歳、恐怖のあまりズボンを濡らしてしまいました。




********************




「で?あんたは誰?何者なの?」


すぐそばの川で俺はズボンを、女戦士は返り血を洗い落としていた。

女性の前でズボンを脱ぐのは抵抗があったが、「そのままにする気?」と嫌な顔をされたので普通に脱いで洗濯するようにした。

幸い、下着は履いていた。

女戦士は革の装備だけ脱いで、顔と装備に付いた血を洗い流していた。


「えーっと、実は僕もよくわかんないものでして。」


嘘は言ってない。

ろくな説明もされず、いきなり転生されて俺だってよくわかってないんだ。


「あぁ、なるほど。あんた『ウバワレ』なのね。」


『ウバワレ』?なんじゃそりゃ?

怪訝な顔をしていると、女戦士は説明を付け加えてくれた。


「あ、それも覚えてないか。要するに能力・記憶を何者かに奪われた人のことよ。」


なるほど、記憶喪失みたいなもんかな?


「ごく稀にそういう人がいるんだって。あたしも実際に見たことはなくて、話しか聞いたことないけど。『ウバワレ』とは言って、特定の人間に能力や記憶を奪われたわけじゃなくて、何らかの拍子に魂の能力・記憶が一部、もしくは全てが吹き飛ぶんだって。まぁ、治る人もいるし治らない人もいるらしいけど。」


まるっきり記憶喪失だな。あとは言いかた的に神隠し的な意味合いもあるのか?


「あんたのステータスを教えて、そこに手がかりがあるかも。ステータスの出し方も覚えてない?」


「あ、それは多分さっきやったです。視界の右下にあるやつですよね?」


言って視界右下に意識を軽く集中させる。

うん、出てきた。


「ステータスはどのくらい?」


「え?どのくらいっていうと?スキルは『熱操作』って書いてますけど…」


原理理解と成長促進は言わないほうがいいかな?もしかすると一人一スキルかもしれないし。


「は?スキル一個だけ?」


やばい、一人一個ってわけじゃなかったのか。


「あ、あと『原理理解』ってのがあります!」


成長促進はおそらくあの案内人がせめてもの気持ちでつけてくれたものだろう。

無闇に教えないほうがいいと思う。


「『原理理解』…聞いたことないわね、どんな効果が書いているの?」


こっちはこっちで珍しいスキルなのかよ。


「えーと…『受けた攻撃の原理を理解することができる。』だそうです。」


「…それだけ?」


「はい、それだけです。」


「理解してどうするの?」


どうするんでしょう。


「さぁ…?」


「まぁいいわ、他のステータス値は?」


?他というと?称号か?それはさすがに伝えれないなぁ。ナシで答えればいいか。


「いえ、他は何も。」


「はぁ?」


こいつ何言ってんだ顔で言われた。


「HPは?MPは?力は?体力は?」


えー!?あるんすか!?


「い、いえ、なんも表示されてないです。」


正直に言うしかない、何せどんなふうに表示されるのか、平均値はどんなもんなのか、適当に言うことすらできない。


「もしかしてあんた…」


やばい、ばれるか!?

いや、ばれても問題ないのか?説明がめんどくさいだけで。


「全ステータスも奪われたの?」


「…………多分そうなんじゃないかと!」


ステータスって奪えるのか?記憶喪失でもステータスは残るだろ、多分。


「というか、奪われたら表示されないんですか?」


「そんなことないわ、単純にステータス値が低すぎて表示されないの。」


うへぇぁ…魂が貧弱なせいなのか、ステータスすらまともに表示されないって。


「そう…なんですね…」


少し、いや、だいぶ落ち込みながら返事をする。


「それより、今更だけど自己紹介がまだね。あたしはクリスティーナ。あんたは?」


おぉ!やっぱそれっぽい感じの名前!


「ぼ、僕はシンです。」


「シンね、てかあんためんどくさいね。」


えぇ…


「なんでそんな敬語なの?気持ち悪い。」


「あー…なんか癖でして。」


うん、日本人たるもの、初対面の人には不快にならないように丁寧な言葉遣いを。


転生したから、もはや魂だけだけど。


「もっと砕けた感じでじゃん。まぁ、別にいいけど。とりあえず、獲物を解体して村に持ってくから手伝って。」


あの化け物イノシシを解体すんの!?

若干嫌な顔をしていると「どうせ『ウバワレ』なんだし、行く当てないんでしょ」と言われ、渋々人生初の生き物解体というものを経験しました。

中学のころ、教育かなんかのために屠殺場の映像を見たことがあるけど、実際にやるとなかなかに来るものがある。

こうやって生き物の命を奪って自分は生きてるんだなぁ、と改めて思った。

異世界で最初に経験したのは弱肉強食でした。

化け物イノシシを解体しながらいろいろと話した。

クリスティーナ(クリスでいいと言われた)は、この近辺のローグス村という山村で一番の狩り手らしい。

ローグス村は人口50人ほど。

このイノシシは村全体でも3日分くらいの食料になるそうな。

基本的に小さい山村なので農地とかはあまりなく、山菜だったりキノコだったり、こういった動植物を狩りで仕留めて食料にしているらしい。

この近辺は魔物は少ない上に弱いので、狩りをするのには結構都合がいいそうだ。

てかいるんだ、魔物。

ついでに言うと、このイノシシも魔物らしい。

クリスは手際よく血抜きをし終えて部分ごとに解体しながら訪ねてきた。


「あんた、アイテムボックスにどんくらい空きがあるの?」


アイテムボックス?あぁ、そういえばステータス画面にそんなもんがあったようななかったような。


「えぇっと…容量300種、上限数各99個、みたいで…みたいだよ。」


「300!?99個!?」


えらく驚かれた。


「…嘘でしょ?300って…」


ここでチート性能が出たのか!いや、アイテムボックスってあれだろ?入れ物にたくさん入れれるよ!ってことだろ?そこでチートでもなぁ。


「普通は10かそこらだし、そもそも上限99個って、王宮魔術師でもそんなのいないよ。あたしでも5種10個なのに。あんたもしかしてものすごい魔術師?」


いいえ、微妙な転生者でございます。


「うーん、記憶がないけど多分そんなんじゃないと思う。ステータスも魔法も全部なくなってるし。」


適当に言い訳するしかないよな。


「何せ俺は『ウバワレ』だから正直知りようもない。」


「そっか。でもそんだけ容量があるなら解体したもの全部持ってけそうだね!」


ナチュラルに荷物持ちに任命された。

その後、いくつかに分けてアイテムボックスに収納していく。

適当に収納しようと思って手を触れると、勝手にアイテムボックスに入っていく。

ちなみに生命体は入れることができないらしい。

他には、一回で入れれる大きさも制限があるみたいだ。

これは魔力量とかで決まるみたいだ。

ステータス最下限の俺はチマチマした大きさのものしか入れれない。

今は肉の大きさで言えば1キロくらいの大きさが限度らしい。

そこは総容量でカバーしつつ、イノシシを小分けにしていく。

イノシシを解体し終えて、クリスの村へと案内してもらうことになった。

道すがら、いろいろ話を聞いてみた。

スキル、ステータスは訓練すれば上がっていくみたいだ。

特に何かするというよりも、最初は適当に筋トレとか身体を動かすしかないらしい。

スキルは使えば使うほど、体は鍛えれば鍛えるほど、少しずつステータスが上がってくみたいだ。

軽くレベルについても聞いてみたが、そんなものはないらしい。

ちなみにクリスのステータスは。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


クリス

我流剣技初級


HP :300

MP :20

力 :30

体力:40

敏捷:30

魔力:5


スキル


生命刀

→一撃にHPを付与して威力を上げる。


連続剣

→五連続で切り刻む。その後数秒は動けなくなる。


魔法


ファイアーボール、ファイアーアロー


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


らしい。

我流であっても村で称号持ちはクリスだけらしい。

というか村での狩人は5人しかいないそうな。

クリスは完全前衛型の戦士タイプだな。

厳密には狩人なんだろうけど。

そんなことを話してるうちに村が見えてきた。

村の入り口で門番(いや、特になんも装備してないおっさんだが)がこっちにやってくるが、俺を見て訝しそうな表情をする。


「おぉ、クリス戻ったか。…そいつは誰だ?」


「よ、ガルド。こいつは『ウバワレ』のシンだ。雑魚だけど便利だから拾ってきた。」


雑魚って言った!

薄々気付いてたけどこいつツンデレお嬢様属性じゃない!ただの毒舌だ!


「…ご紹介に預かった『ウバワレ』のシンです。」


微妙な顔で挨拶をする。


「ほぅ!『ウバワレ』か!初めて見た!」


やはり『ウバワレ』は珍しいらしい。


「テキトーに面倒を見てやるさ。若い男の働き手は足りなかったし、こんなところで拾ったのもイシュルート様の思し召しだろう。」


イシュルート様?思し召しっていうくらいだからこの世界の神様的なものか?


「それもそうだな。ローグス村へようこそ、シンさん。」


ひげ面のおっさんはニカっと笑って歓迎してくれた。

村は低い塀とちょっとした堀に囲まれてあって、想像してた山村よりもずっとしっかりしたものだった。

魔物も出るらしいし、これが最低限の防衛なんだろうか。

クリスに簡単に村を案内され、村人と何人か挨拶をした。

俺が『ウバワレ』だと聞くと、どの人も微妙な顔をしたがおおむね歓迎してくれた。

やはり全てを無くした『ウバワレ』をほっておくことは、イシュバール様とやらの信仰に背くらしい。

そこは何となく日本人の古き良き田舎村っぽい感じを受ける。

そのあと、村長に事情を話すために村で一番大きい(といっても日本で言うちょっと大きな合掌造りの家)家へと向かう。

村長宅でもおおむね他の村人と同じような対応をされた。

ちょうど使わなくなった家があるらしく、そこを使ってくれて構わないということだった。

あとは簡単に村の掟というか、盗みはするなとかまぁ常識的なルールを教えていただいた後、村の広場に向かった。

そこでは何人かの村人が待っていた。


「そいつが『ウバワレ』のシンか。」


クリスと同じような革の鎧を身にまとった、30歳前半の良きパパっぽい人が声をかけてきた。


「はい。今日から村でお世話になりますので、よろしくお願いします。」


「礼儀正しい奴だな。歓迎するよ。おれはノードンだ。」


挨拶をして軽く握手を交わす。

どうやら気に入ってもらえたようだ。


「ところでクリス、今回の獲物はどんくらいの量とれたんだ?」


「あぁ、シンに持ってもらったんだけど、結構な量を持ってこれたよ。」


実は村に来るまで、山菜やら野兎やらを狩っていたのだ。

俺はアイテムボックスからかなりの量の獲物やら山菜やらを取り出して並べていった。


「こいつはすげぇな!アイテムボックスがめちゃくちゃでかいのか!」


普通はアイテムボックスに限りがあり、獲物を狩っても持ってこれないそうだ。

持ってこれても何往復もしなければならないし、荷台とかを使おうにも起伏が激しい上に、少ないとはいえ道中に魔物も出るのでアイテムボックスに入れないと危険とのことだ。


「これはしばらく狩りをしなくてもよさそうだな。何よりこのビックボアの肉が大量にある!村総出で狩りに行ったくらいの収穫量だな!」


「だろ?こいつアイテムボックスは優秀なんだ。」


今のところ、それ以外取り柄はないですけどね、ははは。


「そっかそっか、働き手が増えるのはいいことだ!今のステータスは全くないんだっけか?鍛えてクリスくらいの狩人になってくれれば文句なしだな!」


ノードンさんが豪快に笑う。

他の村人も大量の獲物を見てどうやって分け合おうかうれしそうに話している。

そんな感じでアイテムボックス内をすべて吐き出し、手伝ったお礼なのか歓迎なのか、その場でBBQのようなものが始まり俺も同席させてもらうことになった。

なかなかに楽しかった。

肉は日本で食べたイノシシの肉とそう変わらなかった。

他の食材も特に違いは感じなかった。

これなら問題なく生きていけそうだ。

BBQ終了後、俺が住む空き家に案内された。

空き家っていうか、これ馬小屋…。いや、他の村人の家も似たようなものだから期待はしていなかったが。

雨風が防げるなら何とかなるか。

なんか動物の毛皮と藁で作られたベットのようなものがあったのはとてもありがたかった。


「案内してくれてありがとう。」


案内してくれたクリスに礼を言った。


「大したことじゃないよ。それより明日からあんたを鍛えようと思う。いつまでもステータスが最低じゃぁ狩りに連れていくのも危なっかしいからね。」


「狩りに行くことは決定なんだね…」


「村で狩りができるのは5人。そのうち1人があたしで、万が一のために3人を村に置いといて、もう1人は町に買い出しに行ってきてもらって帰ってくるのは1週間後くらいかな。」


そうなると俺が訓練して使えるようになってもらわないと困る、と。確かに。


「了解。俺も強くなりたいとは思ってるから、ご指導をお願いいたします。」


正直このスキルで何ができるかわかんないけど、ステータスは上げとくべきだろう。

勇者じゃないなら、その辺の魔物にでも軽く殺されそうだ。


「ん。じゃまた明日。」


クリスはそう言うと家を出て行った。

家に一人になってベットらしきものに寝転がる。

今日はいろいろなことがあって疲れた。

いきなりの異世界転生。

いきなりの死の危険。

と同時に救いの女神(毒舌)に助けられる。

気になることもたくさんあるし、頭の中がぐちゃぐちゃだ。


あー、明日からどうしよう。






そんなことを考えてると、簡単に眠りにつくことができた。

これが夢だったらいいという気持ちもある。

でもワクワクしているのも本心だ。

冒険は始まったばかりだ。


…勇者じゃないけど。






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