038話 尋問開始
時間の都合上、ちょっと短いです。
そして6月の忙しさはなかなかなので、毎日行使が途絶えがちです、すみません…
明日にでも、複数投稿できたらいいなと思います…
「死者、約三千人。負傷者、前線の者ほぼ全て。行方不明者、五百人以上。……か。」
ガインさんにより、戦勝の終結と歴史的勝利が告げられてから今日で二日。
戦後処理の一環として、改めて犠牲者・負傷者の把握、魔物の残党狩り、戦場の処理なんかをしているが
「いたたまれないわね…」
「あぁ……」
王国騎士団はおよそ一万と少し、単純な消耗率は四割くらい、かなりの大損害だ。
ここで勝利できなければ、どのみち蹂躙されるとわかっているからこれだけの消耗率でも引けなかったが、実際に今現在も戦える人間となると…
「恐らく、千人行くか行かないかってところかな…」
「国を守る騎士団としては、とてもじゃないけど難しいわね。」
「こ、この国はずっと戦争をしてませんが、野盗などもいますし、他の場所の、魔物なんかも対応しないとですから。」
サラが不安そうに答える。
シルベルト王国は周辺国に比べて、ずっと治安がいいらしい。
国民は富んではいないが、可もなく不可もなく暮らしているし、魔物も今回のことを除けばそこまで強力なのはまず出現しないそうだ。
つまり、国が穏やかだから騎士団もそれほど数はいらない、と。
今回の件でその少ない騎士団が更に少なくなった、サラにとっても深刻な問題だろう。
ちなみに、サラは『キーチェーンマジック』の一件から俺とクリスと三人で行動することが多くなった。
マキシムとしても表沙汰にこそしなかったが、ほぼ裏切りの状態だった者を堂々と騎士団の中に何食わぬ顔で配置するのは、示しが付かないとのことで、事あるごとに俺たちと同行するように計らってくれているのだ。
「まぁ色々と思うところはあるが、そろそろ整理もできてきたし、本題のヤツの所に行こうか。」
「そうね、聞かなきゃいけないことがたくさんあるし。」
「はい、私も…『キーチェーンマジック』の事を聞く必要がありますし…」
俺達三人は、一路、騎士団仮本部へと足を向けた。
「これはこれは、シン殿!」
「こんにちは。団長には話を通してあるはずだけど、いいかい?」
「はい!お伺いしております!シン殿であればいかなるときも通していいと!」
仮本部へ行くと門番が元気に挨拶をしてきた。
俺はこの門番を知らないが、門番は俺のことを知っているようだった。
なんか知らない間に有名になってる…顔も知れ渡ってる…
背中にこそばゆいものを感じながら、仮本部内を歩く。
その度に色々な団員に声をかけられた。
あるものは普通に挨拶、あるものは感謝、あるものは尊敬の言葉、あるものは勧誘、あるものは弟子入りなどなど…
そんなものには興味はなかったが、有名人になるって大変なんだな。
頻度は違えど、同じく戦場で活躍したクリスにも人だかりができている。
本人は不満そうだったが、見る限りまんざらでもないようだ。
「でも何であたしだけ『姐さん』って呼ばれるのかしら?」
なんか俺とはちょっと違う意味で有名になったらしい。
仮本部の最奥、仮なのでそこまででもないが、比較的重厚な扉の前に立つ。
そこに秘書のような団員がいて、中にいる人物に要件を伝える。
無事、許可が出て我々も入室する。
そこには騎士団長のガイン、ギルド長のローレンス、中隊長のマキシム、という当現場における最高幹部と呼べるメンツが集まっていた。
「シン殿、よく来てくれた。」
「いや~待ってたよ。」
「三人とも元気そうだな!」
「いえ、こちらこそ遅れてすみません。」
「(無言で会釈)」
「し、失礼します!!」
お互いに三者三様の反応をする。
「正直、要件があるのは我々の方なので、寧ろお時間をいただきありがとうございます。」
「今回の戦争の一番の功労者だ、君らのためであればいくらでも時間を作ろう。」
「まぁ戦後処理できるってことは、我々が生きてる証拠。
本来なら大々的に表彰というか、報酬とかを払わなきゃいけないくらいだよ。今のところ君達には何も返せてないけどね。」
そうか、報酬とかもあるのか。
てか表彰って…なんかめんどくさい感じの響きだな。
「でも今はそれよりもアレクの件だろ?」
そう、俺達がここに来た理由、それはアレクへの尋問する必要があったからだ。
戦後のゴタゴタで後回しになっていたが、俺達の今回の戦争の一番の目的だ。
「いいだろう、付いてきくれ。」
俺たち六人はガインさんを先頭に、仮説本部の中を移動した。
そして、とある厳重に警備された一室へと入った。
その中には、手足に枷をはめられ、自由には動けないと思われる状態のアレクがいた。
「よぉ。また会ったな。」
「僕は別に会いたくなかったけどね。」
敢えて皮肉って、奴が言いそうな台詞で挨拶をする。
それがわかったのか、アレクは少しムスッとして返事をした。
「僕に何か用でも?」
「あなたに聞きたいことはたくさんあるわよ。そのために戦ったって言っても過言じゃないんだから。」
「へぇ、そこまで言い切っちゃう?」
「いいから答えてもらうぞ。」
どうも調子が狂う。
いけ好かない黒ローブだと思っていたが、蓋を開ければめっちゃ美少女。
でも声と態度はあのムカつく感じ。
……雑念は振り払って必要なことだけ聞き出そう。
「んー、まぁ答えてもいいけど……君たちだけってのが条件だ。」
「お前、自分が交渉できる立場にあるとでも思っているのか?」
「えー?でも君たちは村のこととか聞きたいんだし、僕に聞くしか手段がないでしょ?じゃぁこの条件を飲むしか無いよね?」
「……いいだろう、我々は席を外す。シン殿、何があっても手枷等は外さないでもらえますかな?」
「わかりました。許可していただきありがとうございます。」
「あ、サラ、君も残っていいよ。シン、クリス、サラ、この人達以外は出て行ってもらおうか。そうすればだいたいのことには答えよう。」
なぜ俺達以外を外させる必要があるのか?
それはいまいち分からないが、こっちにとっては好都合だ。
戦いの最中、こいつは俺と同じ転生者だということはわかった。
そこの部分はあまり触れたくはないが、情報を聞き出す上で必ず触れる必要があるだろう。
そう考えると、人数が最小限になるのはありがたい。
いい加減、クリスには打ち明けないと申し訳ない感じがするしな。
「………さて、この部屋には僕達四人だけになってしまったわけだけど、シン、誰か隠れているような感じはするかい?」
「…いや、『気配察知』で探してみたが、みんなドアの外だ。聞き耳をたてている様子もない。」
「そっかそっか。」
アレクはスキルも魔法も封じられているから確かめようがないのだろう。
「さて、何から聞かせてもらおうか。」
「その前に僕の正体を教えといたほうが話しが早いんじゃないかな?」
そう言ってアレクは背筋を伸ばし、少しだけ改まって自己紹介を始めた。
「僕の名前は、アレックス・ウィズ。シン、君と同じ勇者候補だよ。」
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