037話 終戦
なんてこったぁああぁぁ!何故か投稿できてなかった!
バックアップ機能から復元できたけど…ここで毎日更新(朝6時で)が止まってしまうとは…
休みの日にでも2話くらい投稿するかもです
「………ん……」
「目が覚めたか。」
アレクが薄く目を開ける。
目の前にはシルベルト王国騎士団団長、ガイン・ルウェインが腕を組んで座っていた。
部屋にいるのはこの二人だけ。
アレクの手足には枷がはめられている。
かつてサラが同様に拘束された際に使用されたものと同型、一時的にスキル・魔法の使用を禁止しステータスを初期状態に戻す拘束具だ。
アレクは自分がどんな状況になったのかおぼろげながら理解していた。
「……僕は、負けたのか。」
「戦争はまだ終わってはいないがな。」
ここは本陣の最奥、最終防衛ラインに位置する急造砦の内部のとある一室だ。
シンに負けて気を失ったアレクはそのまま拘束され、本陣へと連れて行かれた。
アレクを捕らえたと言っても魔物が消え去るわけではない。
シン、クリス、サラ、その他最前線組はそのまま戦場で残党…と言えないほどの数だが、を狩っている。
だがアレクがいなくなったおかげか、魔物同士の厄介な連携や組織だった動きはなくなりつつある。
やはり司令塔として機能していたのだろう。
そう時間もかからずこの戦争も終わるとみられる。
「それはともかく、貴様から聞き出さなきゃいけないことがあるんでな。」
「はっ!何も話すつもりはない、殺すなら殺せ。」
「まぁそう言うだろうな、だがそう簡単には引き下がれない。」
ガインが立ち上がりアレクの元に歩き出し、目の前まで来るとアレクの顎を片手で乱暴に引き上げた。
「"王"はできたのか?」
「……!お前!何でそれを!?」
「質問にのみ答えろ。」
「っ…………」
「……その様子だと完成はしなかったか。」
「……僕はお前なんか知らない…」
「貴様の知っていることが全てだとでも思っていたのか?元勇者…いや、元勇者候補。」
アレクが悔しそうな顔をする。
自分が知らないこいつが、自分の目的の一つを知っている。
しかもアレク(自分)のこともある程度知っている。
それが不愉快に他ならなかった。
「ふん、まぁいい。別にこんな方法で王ができるとは思っていなかったからな。」
それだけ聞くと、ガインは部屋から出て行った。
そこに残されたのはアレク一人。
この二人の会話は誰にも聞かれることはなく、ただ新たな黒いシミのみが人知れず広がっていった。
「ふぅ…この辺もあらかた片付いたな。」
「そうね……あとは……本当に…残党……狩り……」
「で、ですね……」
戦場のど真ん中。
魔物の死体が累々と積み重ねられ、それ以外にもところどころに人間、魔物、両方の亡骸がそれこそ吐いて捨てるかのように転がっている。
そこに生きているものは数名、シン、クリス、サラ、最前線で一緒に戦っていた数名の冒険者、騎士団のみだ。
「みんなは休んでていいぞ、ここから『気配察知』で感じれる範囲にはもう魔物はいない。少し休憩して、残党狩りに……」
そう言いかけた時、生き残っていた人達が一斉に絶望の表情を浮かべた。
……そう言えばずっと戦いっぱなしだったな。
俺自身も少し疲れているし。
俺より圧倒的に弱い人達だし、無理も無いか。
「いや……やっぱり、少し休んだら砦に帰還しよう。」
生き残った例の中年騎士が何か進言しようとする直前に、前言を撤回する。
中年騎士含め、全員があからさまにホッとした表情をし、各々が地面に崩れ落ちる。
「俺、もう無理……」
「俺だった無理だよ……」
「私も……」
「砦まで持つかな…………」
先程まで最前線で魔物と地獄のような命のやり取りをしていた者達とは思えない弛緩した表情。
いや、むしろその反動か。
俺達の参戦によって状況が変わり、司令塔のアレクを倒し、魔物が目に見えて弱くなっていくのを感じていた。
そしてここら一帯の魔物を駆逐し尽くしたと俺から言われれば、まだ戦場であっても気が緩んでしまうのも仕方ない。
…緊張しっぱなしだったんだろう、俺も自分のものさしで考えすぎたな、反省しよう。
「それにしても、よくここまで倒せたなって思うわ。」
クリスが魔物の死体の山を見て感慨深く話す。
「数ヶ月前の俺たちなら、間違いなくこの魔物一匹に殺されていただろうな。」
「えぇ。"あの子"がこんな魔物を作り出していたなんて……」
アレクが女の子とわかって、クリスも少し面食らったらしい。
呼び方が"あいつ"から"あの子"に変わっている。
「でも、最後の瞬間、確実にやられたと思いました。体制が崩れたように見えたのは"敢えて"だったんですね!」
サラが思い出して興奮したように話す。
「う、うん………」
普通に見とれて体制崩したなんて絶対に言えない。
「でもどうして、アレクが転移する場所が…」
「あ、あれは、あいつのスキルを『原理究明』で理解したからだよ。」
話を無理やり違う方向へ向ける。
「え?ってことはシンも使えるようになったの?」
「いや、理解できても使うことはできなかった。でもその代わり、アレクが登録した座標…正確には"座標に置いた目印"を俺も見ることができるようになったんだ。」
よし、話を反らせそうだ!
「???」
「えーっと…まずあいつの『転移』スキルを説明するね。
事前に登録していた座標に瞬時に転移ができるスキル。座標を登録するには、一度自分の足でその場所まで行ってマークを付けなきゃいけない。そのマークは同じスキルを持つもの同士にしか見えない。ただし、登録できる座標は魔力量に比例する。また、『転移』は連続して使うことはできない、一度使うと数秒は転移ができない。
ってとこかな。」
「……なるほど、シンは使えるようにはならなかったけど、アレクがつけた座標へのマークを見ることができるようになった、ってこと?」
「あぁ、そういうことだ。」
「それで転移場所を知らないふりをして、そこへ転移するように誘導した動きをしたんですね!さ、さすがです!」
「そ、大正解。」
あの角度からは、あの場所に移動すれば確実に死角に入れる、そういう場所に何とか誘導できた。
半分は偶然だったが。
だが奴のスキルで、微妙に一文だけ気になる記述があった。
"そのマークは同じスキルを持つもの同士にしか見えない"
まるで、他にも同じスキルを持つ者が複数いるかのような文言だ。
この一文のおかげで助かったが、どうも気になる…
「…シン?」
「ん?あぁ、なんでもない。」
気にしてても仕方ないな。
取り敢えずみんなの代わりに俺が気を抜かず警戒に当たるとしよう。
それからしばらく休憩した後、俺達は本陣へと戻っていった。
そしてそこで、ほぼ魔物の殲滅が完了したこと
あとは残党狩りであり、戦争には勝利したこと
それが騎士団長より改めて伝えられた。
後に"ブルムの大魔侵攻"と呼ばれる戦争が、人類側の勝利で終結した瞬間だった。
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関東は蒸し暑いですね




