031話 戦
気付いたらブクマしてくださる方が30になってました。
こんな私の小説をブクマしてくれるなんて、感激で貧血になりそうです←
「………さすがに、これは……」
やりすぎた。
正直な感想だ。
いやだってさ、できる限り全力でぶっ放したら、目の前にあった小さい山と森が跡形もなく消え去ったんだよ?
もちろん、魔物の大群も一緒に消滅した。
それでも明らかなオーバーキル。
サラとクリスの前で軽くテストで放った一発も、小高い丘を簡単に抉り取ってしまった。
今回はそれとは比べ物にならないくらい全力を出したからなぁ。
「…………あんた一人と戦うのと、軍事国家を相手にするどっちがいいって聞かれたら、迷わず軍事国家を相手にするって答える。」
爆発が収まってから、クリスが歩み寄ってきた。
「いや、さすがにそんなポンポン撃てないよ。正直あと一発撃てるかどうかしか魔力が残ってないし。」
「倒れないのが不思議なのよ……」
げんなりされた。
まぁ俺自身もこんな凶悪な威力になるとは思ってなかった。
俺がサラから教わった(くらった)魔法は、基本四大魔法要素、火・水・土・雷の初級・中級魔法だ。
それぞれが『ファイアー』『ウォーター』『アース』『サンダー』。
その接尾語として『ボール』『アロー』『ストーム』が初級。
『ウォール』『ジャベリン』『ソード』が中級。
上級は決まった魔法名はない、という形になる。
俺が使ったのは、土中級魔法『アースジャベリン』と雷上級魔法『ヴォルテクスディスチャージ』の混合だ。
属性の違う魔法を同時に複数使うことは可能か?という問いに対して「集中力と魔力さえあれば」という回答をもらったので、頭で色々と考えていたのだ。
火と水で水蒸気を作る…これは普通に水魔法を少し工夫してやればできなくはない。
火と土で金属を作る…これも土を工夫すればできなくはなかった。
火と雷…そもそも相性が悪かった。
水と土で沼を作って…それなりに成功した、足止めには使えそうだ。
水と雷…どうやら魔法で作った水は純水らしいので、あまり雷と相性が良くなかった。
そして土と雷。
ここで俺の頭が冴え渡った。
「これ…もしかしてすごい事出来るんじゃね?」
そう、男子たるもの誰しもが通る中二病時期。
俺も銃にはまっていた。
とはいっても、漫画なんかに出てくるリボルバーとかそういったものを意味もなくかっこいいと思っていただけであって、ミリオタになるほどのものではなかった。
そこで見たフレーズ、『超電磁砲』。
詳しい原理はもちろん知らないが、弾丸を電磁力で超加速し、恐ろしい威力の弾丸を撃ち出す銃、俺の中二心の琴線に触れてしまったのだ。
その時の知識をぼんやりと思い出しながら、魔法を微調整し完成させたのがこの合作魔法『超電磁砲』だ。
威力はご覧のとおり。
「だけどまぁ、これで随分とやりやすくなったはずだ、一気に攻め入ろうか。」
「いや、もうほとんど目の前にはいないわよ。ずっと先に方に魔物の群れがいるみたいだけど…」
クリスが指差す方に、小さく魔物の群れが見える。
逆に考えるとあそこまで魔物の群れが続いてたってわけだ、こりゃ一万以上の数がいたな。
それも七割位は削れているはずだが。
どうやって攻めようかを考えていると、陣の深くから伝令がやってきた。
「か、各員、警戒を厳にし、魔物を迎え撃てとのことです……」
伝令を届けてくれた団員が若干怯えているのがわかる。
…こんだけのことをやった張本人が目の前にいるんだから、それもしょうがないか。
「了解、俺も所定の位置に戻っておくか。」
「まぁ、あそこからなら二~三数時間は魔物も来ないだろうしね…」
そう言って、俺たちは最初に配置された場所まで戻っていった。
そして二時間後、魔物の群れがまた近くまでやってきた。
その際に『超電磁砲』一発分の魔力は回復していたので軽く薙ぎ払ったが、それだけでも十分な威力だった。
そして残った魔物の数も、おおよそ五千程度に見えた。
「ここで魔物どもを駆逐するぞ!」
「「「「「おおおおおおおおお!!!」」」」」
開戦の雄叫びを上げ、騎馬隊が突撃をしていく。
当初の想定では左右の森や林などに散開する手はずだったが、俺のせいで一面草一本生えない不毛の大地になっているので、正面からぶつかるしかなかった。
それでも最初の一撃でのインパクトも強かったせいか、騎士団の士気はかなり高く感じられる。
『気配察知』で魔物の強さも油断ならないものなのはわかるが、騎士団もそれにそうそう負けないような力を感じる。
剣の交わる音、魔法が飛び交う音、悲鳴絶叫雄叫び、戦争と呼べる戦いが始まった。
「圧倒的な戦力差が、かなり現実的に倒せるレベルまでになったんだ。ここで負ける訳にはいかない!」
「そうね!バックアップよろしくね!」
俺とクリスも駆け出す。
俺の方は魔力を使いすぎたせいで、若干体がだるい。
大事を取ってクリスのバックアップで一緒に戦う形をとっている。
そこまで気にしないでもいいかもしれないが、異常な気配を感じる魔物もちらほらいる。
「そこ!」
クリスが黒鉄の剣を乱暴に振り回し、あたりの魔物を駆逐していく。
切ってるというよりも、叩き付けているという表現のほうがいいかもしれない。
それほどに力強い。
「肉体強化の魔法…なんて恐ろしい…」
そんなことをつぶやいてしまうほどだ。
多分、開戦してからの撃破数はクリスがトップだろう。(俺は除く)
頭上では魔法が飛び交い、目の前の魔物が黒焦げになっていく。
かと思えば、視界の端に見える冒険者が魔物に食い殺されている。
その仇討だろう、パーティーメンバーと思しき冒険者が、雄叫びを上げながらスキルを放ち魔物を両断する。
「……」
俺は何も言えなかった。
これが戦場なのだ、元の世界では一切経験しなかった。
ここでは魔物の命も人間の命も、等価値で呆気無い。
だがそれを嘆く暇もない、それが戦場であり今俺が生き抜こうとしている世界なのだ。
気配察知を使い、クリスの動きを予測しそれのカバーに入る形で俺も参加する。
ステータスは俺が上だが、肉体強化魔法と経験の差でついていくのがやっとだ。
それでも特に問題なく魔物を切り伏せていく。
「クリス!あの奥にいるやつ!」
「えぇ、雰囲気が尋常じゃないわね!」
俺が感じた異常な気配の一つ、牛の頭に筋骨隆々の肉体、血糊のべっとりと染み付いた二メートル以上あろうかという大斧、ミノタウロスだ。
「ブォォォォォォォォォォ!!!!」
ミノタウロスは雄叫びを上げながら俺達に迫ってくる。
途中の魔物も冒険者も騎士団も物ともせずに一直線だ。
「あいつ、かなりの突進力…いや、純粋に馬鹿みたいな力なのか!正面から受けるのは…」
「大丈夫!」
俺が言いかけてクリスがそれを静止した。
直後、クリスがミノタウロス目掛けて飛びかかった。
もちろん、真正面からだ。
いくら肉体強化を使っているからといっても、それは無謀すぎるだろう!
「はぁぁぁぁぁ!!」
剣を上空から叩きつけるようにして振り下ろす。
ミノタウロスは難なく大斧で防ぐ。
かに見えた。
「へ?」
防いだはずの剣撃はミノタウロスの身体を両断し、大斧は無残にも砕け散っていた。
「手応えないわね!!」
いやいやいや!
周りの団員や冒険者も剣を構えながら唖然としている。
少なくとも剣の一撃で斧ごと両断できるような相手じゃないよ!
後に、この戦場で一躍有名になった冒険者がいた。
冒険者の二つ名は『紅血の暴君』
その暴君の如き不可避の暴力と、魔物の返り血に染まったかのような自身の紅い髪から名づけられた。
そしてその冒険者を知るものは口をそろえてこう話す。
「『紅血の暴君』にだけは絶対に逆らうな。逆らった瞬間にお前の視界は紅く染まる。」と。
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暴君…ハ○ネロ…




