030話 合作魔法
時間の関係上、ちょっと短めです
ほんとはもっと書ければよかったんですが…
おもむろに前に出た一人の冒険者。
団長からは「最初の一撃だけ、彼に任せるように。」と言われていた。
だが不信感は拭えない。
開戦直後の第一撃、これにはとても重要な意味がある。
その後の士気に影響するため、できるだけド派手であの大軍を吹き飛ばすよな大魔法がうってつけなのだ。
それなのに
「あんな冒険者ひとりで何ができるんだよ。」
聞いた話だと、今回の魔物の侵攻を知らせた功労者であるという。
しかもかなりの強さで、冒険者になっていからわずか一か月余りでBランクにまで上り詰めたとのことだ。
だからと言って別段力を感じるわけでもない、それに魔術師数十人による大魔法を超える攻撃など、あんな若造にできるとは到底思えない。
そんなことを考えていると、その冒険者の周りに魔力が集まっているのが感じられた。
「何をしたって意味ないだろ。」
そう考えていたこの若い騎士団団員、いや、この戦場にいるすべての人間が、この開戦の狼煙を生涯にわたって語り継ぐことになろうとは、この時は一寸たりとも思っていなかった。
「『アースジャベリン』」
魔法名を口にする。
ただ魔法を放つくらいなら、無詠唱で十分なのだが今回はそれでは終わらない。
意識を強く強く
ただひたすらに巨大で、硬く、鋭利に
そしてそれを無数に
そう考えてるうちに、俺の周りには恐ろしいほど頑強で凶悪的な三メートルほどの土でできた槍が百本程浮かんでいた。
いや、もはや土とは言うまい、まさに金剛石にも迫る硬度の鉱石の塊だ。
それだけでも圧巻だ、このまま魔物の群れにぶつけたとしてもかなりの損害を与えれるだろう。
だがまだだ
「『ヴォルテクス……ディスチャージ』!」
少しきつくなってきた。
さすがにこの数と今からの工程を考えると負荷が大きい。
作り出した大量の『アースジャベリン』に強力な雷の魔法を重ね掛けしていく。
それもできるだけ強力に。
「くっ…さすがにきっついな。」
ある程度満足できるほど雷を纏わせることができ、俺は次の工程に入る。
『アースジャベリン』を穂先を中心に高速回転させる。
毎秒百回転を超えてるんじゃないかという回転数で、大量の『アースジャベリン』を高速回転させていく。
「う…あ……もう少し…少なくても…よかったか…」
めっちゃきつい。
MPがガリガリ削られるのを実感する。
だができる限り、せめて俺の魔力が尽きる寸前まで出し切らないと。
「よし……!!!」
準備が整い、前方の魔物の大群に照準を合わせる。
更に回転数を上げ、魔力が空になるくらいまで雷を纏わせる。
最後の仕上げとばかりに、全ての『アースジャベリン』を、より強力な雷でできた"カタパルト"にセットする。
「さぁ……存分に味わってくれ……
サラから教えてもらった魔法と、俺の中二病時代の知識との合作魔法………」
放電現象がすごい。
近くにいるだけでその雷に焼き尽くされてしまいそうだ。
「『超電磁砲』!!!!」
魔法名を口にし、正しく光速に迫る速さで金剛石の如き巨大な槍が魔物の大群目がけて飛んでいく。
いや、正確には魔法を放った瞬間、俺の周りの槍は"消えた"のだ。
そして、魔物の群れは一瞬で蒸発した、周りの風景とともに
一瞬の間の後、轟音が轟き
その後には、立っていられないほどの爆風
見ためはそう"消滅"
正確には"核兵器に匹敵するほどの威力"で薙ぎ払ったのだ
岩やら土砂やら草やら木やらが少し後になって降り注ぐ。
俺の百本を超える『アースジャベリン』を出したくらいから呆気に取られていた最前線に者たちは、土砂が降り注ぐ中、それでも動こうとしない。
動けないのだ、今目の前で起きたことが何一つ信じられないから。
魔法?いや、あんな魔法は見たことがない。
スキル?いや、あんなスキルも見たことない。
ではなんだ?
魔物の大群は?
さっきまで目の前にあった森や山は?
そんな意味のない言葉が脳内にこだまする。
それは一番後方にいたガイン達も同じだった。
「…………」
「…………」
「…………」
誰も口を開かない
誰も何も言えない
誰も信じれない
目の前の光景を
「………"あれ"は、いったいなんなのだ……」
この戦場にいるすべての人間で、一番最初に正気に戻ったのはガインだった。
「…………"あれ"は強すぎる…」
この状況を作り出した人物を同じ人間と思いたくなかったからなのか、人格者の騎士団団長とは思えない口ぶりでシンを詰る。
「………シン君は、いったい何者なんだ……」
ローレンスも開いた口が塞がらないのだろう、その台詞の後も口が開いたままだ。
「………とにかく、敵の大部分は倒したと見て問題ない……のか……?」
ガインは自分の言った言葉が信じられない様子ではあったが、さすがは騎士団長、すぐに配下の者に作戦の変更と進軍を指示した。
そして一息ついて、椅子に深く腰掛けてこう呟いた。
「………あれが『ウバワレ』か……」
それは目の前の衝撃的な光景に目を奪われている者たちの中では、誰に聞こえるものでもなかった。
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