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選択結果は異世界でした  作者: 守月 結
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022話 新武器試し

今日は早起きして予定通り書けた!

明日はできるかわかんない←

「で、全部使ってきたと。」


「はい…」


俺は今正座をしている。

こっちには正座の文化はないらしく、クリスは怪訝な顔をしていたが、俺が謝罪の意思を表現しているとわかってからは特に何も言ってこない。

なぜ俺がこんなことになっているのかというと


「そりゃ、予算は金貨十枚まで、とは言ったよ?でもね、完全に十枚使い切るとは思わないじゃない?」


「いや、すみません、使い切っていいもんだと…」


そう、剣を買い換えるだけのお金を手渡され、それで剣を買い換えたのだがそれを完全に使い切ってしまったのだ。


「あそこの武器屋は何度か行ったことがあるからわかるけど、あたしの黒鉄こくてつの剣ですら金貨二枚。予備の剣も含めて二〜三本くらい買ってくるもんかと…それでも余る計算だったんだよ?」


「いや、その…」


「それが剣一振り、しかも剣玉けんぎょくとかいう眉唾物を買ってきて…」


なんだろう、日本の奧さんに頭が上がらないサラリーマンのような状況だ。


「複数本買うように多めに渡したのにさ、ねぇなんでそういうこと考えれないのかな?」


「はい、すみません…」


俺も元の世界では、女性と付き合ったことくらいはある。

それでも社会人なりたての頃、一ヶ月くらいと極々短い期間くらいだったが。

その時も、女性に同じように怒られた記憶がある。

ならお金渡す時にそう言ってよ…とも思ったが、ここは変な言い訳や反論を言うべきところではない、そんなことをすれば火に油を注ぐことは明らかだ。

たとえ世界が変わっても、女性というものは同じように怒るものらしい、肝に銘じておこう。


「別に余裕がないわけじゃないよ?ガルーダを仕留めた時のお金だって丸々残ってるし、がむしゃらにクエストをこなしてたから、かなりのお金は貯まってる。でも万が一のことを考えてさ…」


そこからたっぷり三十分、クリスのお説教は続いた。

予想とはかなり違い、見た目以上にクリスの金銭感覚はしっかりしていた。

てか物凄いきっちりしていた、いい奧さんになれるよ。


「ねぇ、本当にこれってそんなにいい剣なの?ただの安っぽい剣にしか見えないんだけど?」


お説教が一段楽してクリスが剣について聞いてくる。


「店主が言うには、『自分の血を一滴、玉の部分にたらせば所有者として登録される。』って事だ。」


店主からの説明だと、この剣はミスリル製の刀身と柄で素材としてもかなりいいほうらしい。

実際に王都で買えば金貨二十枚くらいはするんじゃないかとのことだ。

なぜそんなものを金貨十枚で?と聞いたら


「まぁ兄ちゃんには贔屓にしてもらってるし、この街で大活躍してくれてるしな。実際、この剣もいつまでも持ち主なしってのは可哀想だしよ。兄ちゃんなら将来、ものすげぇでかい事しそうな気がするんだわ。餞別だと思って受け取ってくれ。」


と、なんとも目頭が熱くなるようなかっこいい台詞を言われてしまったのだ。


「で、所有者登録すると、すぐに今自分に合った形状と性能の剣になるらしい。」


「へぇ…じゃあちょっとやってみてよ。」


俺は指先を軽く切り、玉に血を滴らせた。

すると剣は薄く発光し、急激に姿を変えた。

光が収まると、一振りの剣と鞘に変化していた。

薄く青み掛かって若干反りのある片刄の刀身、鍔は六角形の金細工、柄は握りやすそうに柄糸が巻かれている。

これって…


「ねぇ、これ、結構珍しい形状してるよね、確か名称は…」


「あぁ、『刀』だ。」


そう、まさしく日本刀だった。

俺の日本人の血がこの形状にしたのだろうか。

こっちの世界でも刀はあるが、それほどメジャーではない。

西洋の形状の剣に比べると、刀は折れやすく実用的ではないせいだろう。

おそらく刀の鍛冶職人も、日本の職人と比べてそれほど多くないであろう事も影響しているかもしれない。

よく見るのは、刀というより刀の形状をした剣って感じだ。

だがこれは違う、完全に俺がよく知る刀だ。


「なんか折れやすそう。」


「いや…こいつはかなり力任せに使っても問題ない。むしろクリスの黒鉄こくてつの剣より丈夫だと思う。」


「え?なんでわかるの?」


何故だろう、刀の意識というかそういうものが流れ込んでくる。

俺が所有者として登録されたからだろうか、この刀の声が聞こえる気がするんだ。

この刀の特性、使い方、性能、刀が語りかけてくるような気がする。

手に持って振るってみる事すら必要がない、もうすでに旧知の仲のような感覚だ。


「…早速使ってみたいな。」


「ちょうどいいから、ギルドの訓練場を借りて模擬戦してみようか?」


それもいいかもしれない、しばらくクリスと模擬戦なんてしてないからな。


「よし、行ってみるか。」






ギルドに着くと、騎士団のウザイケメンことマキシムとサラに出会った。


「おぉ!これはシンとクリス!こんなところで会うとは奇遇だな!」


「あ、はい、そうですね。」


相変わらずうるせぇ。

サラを含め他の騎士団の団員も軽く頭を下げてくる。


「我らはちょうど一クエスト終わらせてきたところだ!国民のために活動するというのは気持ちがいいな!」


別にボランティアってわけでもないだろうに、やたらと充足感がえられたらしい。

というかここで会話する流れになってるが、別に俺たちは話す事も用事もないんだが。


「お疲れ様です、では俺たちはちょっと用事があ「ところで君達もクエストを見に来たのかい!?」」


被せてきやがった。


「…ちょっと訓練場を借りてクリスと模擬戦でもと思いまして。」


「なんと!模擬戦か!いいな!我々も見させてもらおう!」


いや、だめだよ。

てか決定事項かい、俺たちに見てもいいか聞かないのか。


「冒険者には秘密にしなければいけない部分もありますので、あまり手の内を見せ「ははは!私も部下もそんな無作法はしないよ!そこで見た事はもちろん口外しない!」」


クリスがもっともらしい事を言って断ろうとするが、またしても被せてきて却下された。

あ、めっちゃ不機嫌になってる。

うーん、別に隠すような事はないし、騎士団とも変に険悪な空気になるのも避けたいしな。

あ、そうだ。


「わかりました、ではご自由に観戦してください。」


「ちょっとシン!」


「ははは!そう言ってくれると思った!もちろん内容は秘密にしておくよ!」


「その代わりと言ってはなんですが、俺たちの知りたい情報があるんですがよろしいですか?」


「騎士団の機密に関わることでなければ、なんだった話そう!さぁ、聞きたまえ!」


「いえ、それは終わってからで。」


クリスは嫌がったが、俺が条件を出したことで察しがついたのか、最終的には納得した。

例えマキシムがバロックのことを知らなくても、交換条件として言えば、きっとできる限り調査とかはしてくれるだろう。

そういう考えもあってこの話を受けた。


これがバロックの足がかりになればいいが…




********************




「さて!両者剣を構えて!」


なんでこいつが取り仕切ってんだ?

訓練場を借りれたのはいいが、それだけが納得できない。

クリスなんて額に青筋立ててるぞ。


「では、はじめ!!」


そう言ってマキシムは中央から飛びのいた。

あの重そうな鎧なのに素早いなぁ。


「とか考えてる場合じゃないか。」


さっきまでのイライラ顔は何処へやら。

クリスはしっかり戦闘態勢に入っていた。

ステータスは俺の方がずっと高いだろう、だが戦闘力ってのはステータスだけじゃないからな。


先に動いたのはクリスだった。

地を蹴り、一瞬で間合いを詰める。

疾い

振り下ろされた黒い剣筋をすんでのところで受け止める。

別に動きが見えなかったわけじゃない、反応できなかったわけじゃない

ただただ対応が遅れてしまったのだ。

たった一合打ち合っただけだが、それだけでクリスが前とは比べ物にならないくらい強くなっているのがわかる。


「…!今のを軽々と止めるとはね!」


それはクリスも感じていたことらしい。

俺たちは村にいた時よりもずっとレベルが上がっているようだ。


「『生命刀』!」


クリスはスキルを放った。

HPもかなり高くなっているし一刀に込めたHPも多いのだろう、一撃がものすごく重い。


「くっ!」


ギリギリでなんとか耐える。

折れないとはわかっていたが、クリスの剣は黒鉄こくてつの剣、単純な重量も頑強さも他の剣よりずっと性能が上だ。


「『高速剣』!!」


「まじかよ!?」


高速剣が使えるようになってたのか!

マジでまずい、体制を整えきれていない。

『高速剣』は『連続剣』よりも強い、回数の制限がないしダウンタイムもない、そう思われることがある。

だが実際は、『高速剣』には重大な弱点がある。

『連続剣』は肉体の状態(怪我や練度など)を無視して斬撃を半自動で放ってくれる。

だが『高速剣』は動きや制約が自由な分、すべてを自分でこなす必要がある。

つまり、自分自身の練度、状態、剣筋、そして放つ際の体制もだ。

こんな体制が整わない状態で今から放っては、おそらく撃ち負ける。


「こうなったら………『生命刀』!!」


こちらもかなりのHPを犠牲にし、力で対抗する。


「っ!」


クリスが『連続剣』を放っている刹那の隙に、正面から力をぶつけた。

そうなれば受けざるを得ないクリスは、『連続剣』を中断し俺の剣を防いだ。


「まさかの正面突破…」


「それしかなかったんでね。」


それから何度かお互いの動きを確かめるかのような打ち合いが続く。

だがお互いに技術を全力で出しきっており、おそらく見ているマキシムは本当の死合だと思ってるんじゃなかろうか。

一撃一撃が、間違いなく急所を狙い、気を抜くと剣が止まらずそのまま致命傷を与えかねない。

そんな中、急にクリスの動きが止まった。


「そろそろお互いに本気になってかない?」


「だな。もう小手調は終わったし。」


クリスの雰囲気が変わる。

同時に俺の方も気合を入れ直す。

以前、村で模擬戦をした時は手も足も出なかった。

次にやった時は、ステータス的には俺の方が高かったが、単純な経験で軽くあしらわれた。

そして今、ステータスでは圧倒している、なのに決定打がない。

なりふり構わなかったら多分勝てるが、ここまで細かい技術に差があるとは。

もっとも身近にいて、未だ明確には超えられていない壁。

ちょっとワクワクしてきた。


今度は俺から動いた。

スキルも何も使わない、ただただ全力で今日一番の高速で放った横薙ぎの一閃。

クリスなら最悪防げるだろう、そう思っていた。

だが、クリスは刃が肉薄しているのに全く動こうとしない。


(どういうことだ!?)


クリスは避ける気がないのか!?

いや、防ぐ気もない!

このままだと真っ二つに…!

そう思った刹那。

本当に百分の一秒もない瞬間。

確かに聞いた、クリスの声を。


「『かすみ』」


そして、その言葉を聞いた後に、俺はクリスを切った。

いや『クリスだったもの』を切った。

砂のような、蜃気楼のような、まさに『霞』と呼ぶにふさわしい幻影を真っ二つにしたが、クリスの幻影はそのまま消えてなくなっていた。


「はい、あたしの勝ち。」


次の瞬間には、俺の首元に背後から剣を突きつけられていた。


「……まいった。」


俺は刀を鞘に収め、負けを認めた。


「ま、一回限りのだまし討みたいなもんだし、二度と通じないだろうけど今回のあたしの勝ちは揺るがない!」


「別にそんなに強調しなくても勝ちは勝ちだよ、安心して。」


まさか、あそこで新スキルを使ってくるとは。

ここまで強くなっても勝てないか。

さすがにちょっと悔しい。


「……何でもありの殺し合いなら、間違いなくシンが強いけどね。」


クリスの呟きを聞こえなかったふりをする。

俺達は仲間なんだ、そこまですることじゃない。

その本気の殺意を向ける相手は別にいる。


「……さて!あたしが勝ったんだし、勝利の褒美は何かなぁ?」


「え!?そんなの聞いてないよ!」


「言ってないもん!」


なんかよくわからんが、褒美があるという話になってしまった。

まぁ喜んでるし、別にいっか。

俺が金貨十枚も散財してしまったわけなんだし…


ちなみに、俺のスキル『原理究明』はきっちりクリスの『霞』を習得していた。

お読みいただき、ありがとうございます!

ブクマ・感想等本当にありがうございます!これからも楽しんでいただけるよう頑張ります!


なんか戦闘シーンを重く書けない

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