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日常小話

あるオタクたちの妄言

作者: くつぎ

 世界とは、思ったほど平等には作られていないらしい。


 そんなことを考えるのは、私が中途半端に恵まれているからなのかもしれない。

 例えば、私が……そう、食うにも寝るにも苦労するような環境にいたら、こんなことは思わないだろう。

 人間って難しい。生きるのって難しい。


「二次元に行きたい」


 ぽつり、そんなことを言えば、隣でうなずく親友。


「うんうん、わかる。わかるよ。私も叶うものなら二次元に行きたい、そして好きなキャラの写真や動画を撮りまくり、あわよくばお近付きになってお友達になってキャッキャウフフと過ごしたい」

「素敵かよ。その人生、素敵すぎかよ」


 そんな話をしながら、隣同士、お互いに携帯を触っている現在。


「どうにか二次元に行く方法ないかな? ネットで調べたら出てこないかな?」

「出て来るなら今頃二次元はこの世界の皆様で溢れ返っているよ」

「確かに」

「君の好きなキャラの隣にはすでに現世からトリップした方が恋人としている可能性も」

「うわあああ、それは嫌だ」


 我が親友よ、何故この空想に現実的な要素を盛り込んで来るんだ。


「こうなったら二次元世界の海岸に流れ着くことを夢見て海に入るしかないか」

「あー、それいいね。目が覚めたら異世界でした。それっぽいね」

「だろ」

「ただ、失敗したら溺死だね」

「苦しいやつだ」


 そんなくだらない話をしている途中で、我が親友は携帯をことんと机に置いた。


「生きるのって難しい」


 そうだよね。難しいよね。

 というか、同じこと考えてたんだね。

 ああ、私だけじゃなかったんだ。


「でも、死ぬのはもっと難しい」

「確かに」


 ソファの背もたれにもたれかかって、我が親友は天井を見る。

 同じように天井を見た。

 少しだけ、現実から目を逸らせた気がする。


「あーあ、私たちの幸せは遠いね」

「そうだね」


 世界は、平等じゃない。

 自分にとっての『幸せ』が、人によって違うからだと思う。

 生きるだけで幸せだと思えるならば、この世界は幸せに満ちているんだろう。

 別の世界に行きたい、なんて願ってしまう私にとっては、この世界はどこまでも不幸だ。


「二次元にトリップしたい」


 こうして私たちは今日も、不毛な願望を漏らして、それでも生きていくんだ。


「ね。トリップしたいね」


 だって私たちは決して、死にたいわけではないのだから。



現実から逃げ出したくなると、二次元に行きたいと思ったりします。そんなお話を書いてみました。

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