到着
ぼちぼち書いていきます。大体一週間か二週間にいっぺん更新するのでジャンプ感覚で読んでください。よろしくお願いします。
「……おいおい」
目を覚まして初めに感じだのは、心を吹き抜けるような爽やかな風だった。そして、足元からざあっという音がして気づく。どうやら今僕は木の上にいるようだ。
「よっと」
体を起こしてみると、手に葉の感触が伝わってくる。一枚千切って手に取ってみる。なんとその葉は、日の光に透けて薄く紫色だ。
「目を覚ましたようですね、フェイ君」
声の方を見る。そこには見慣れた人が座っていた。
「あ、マイさん」
『背水』と背中に書かれた何とも個性的な黒ジャージを着こなした長い黒髪のポニーテールの少女、マイさんはこちらに座ったまま手を使ってすっと近づく。木の上で立つのは危険と判断したのだろう。
「二人は、近くにはいないようです」
「そうか……じゃあ僕たち二人だ」
「そうです。ふふっ」
美しい顔を嬉しそうに綻ばせる。僕と一緒だから、という恋愛脳的発想が一瞬頭に浮かんだが、それはないとすぐにかき消した。
「どうやら──」
と僕が切り出した所で、頭上を大きな何かが通過した。驚いて見上げると、それは鳥だった。昔本で見たことがある、シンドバッドの冒険に出てきたロック鳥さながらの大怪鳥だ。白銀色に身を包んだその体躯はあっという間に小さくなっていき、しばらくして、巻き起こした風が木々と共に僕らを揺らした。
「……来ちゃったみたいだね、異世界」
見上げれば空には層雲が広がり、天頂に太陽は変わらず輝いている。でも感じる、耳で目で肌で。ここはさっきまで僕達がいた世界とは、全く別物であるということを。