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女王陛下の婿探し~専属騎士だけれど、隣国の神学校へ男装し未来の夫を探しに行けと命じられました~  作者: 江本マシメサ
第四章 断食の夜に

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路地裏のお店

 大通りにある商店は国の監視を恐れてか、ほぼ閉まっている状態だという。


「路地裏にひっそりあるような店はだいたいやっているだろう」


 怖いもの知らずだった子ども時代に街をうろつき、隠れ家のような商店を発見したという。


「身なりのいい子どもがやってきたら、お店の方は驚いたのでは?」

「ああ、そうだったな」


 子ども相手に商売になるわけがない、と早々に追いだす店員もいたという。

 そんな中でこれから行くお店は唯一、子ども時代のユリウスをお客さんとして相手してくれた店主がいるらしい。


「しようもない、ガラクタみたいな商品ばかり売っている店なんだが、あいつらはそういうのが好きだろうから」


 ルームメイトの四人が気に入るような品があればいいな。

 なんて思いつつお店を目指した。


 ユリウスは複雑な路地裏の通りを迷いなく進んで行く。

 昼間なのに太陽が差し込まず、薄暗い。

 少し怪しい雰囲気があるものの、思いのほかお店が並んでいる。

 酒場に古書店などのよくあるお店から、占い店や祈祷店などなど、少しうさんくさいお店もある。

 迷路のような路地裏を十五分くらい歩いただろうか。

 ようやくユリウスが言っていたお店に行き着いた。

 そこは営業中、という看板がドアノブに下げられただけのお店。

 窓は曇っていて、店内にわずかな灯りが差し込んでいることしかわからない。

 

「ここだ」

「その、よく、このお店に挑もうと思いましたね」

「子ども時代は本当にどこが危ないとか、怪しいとか、そういう勘が働かなかったからな」


 大人になった今ならば、絶対にこのお店は立ち入らないだろう、とユリウスは言う。


「一歩入ったら、商品を購入するまで出られなくなるような外観をしているからな」


 なんて話していたら、突然お店の扉が勢いよく開いた。


「おい、どこの誰だ!! 堂々と店の悪口を言う輩は!!」


 七十代くらいの、立派な口髭くちひげを蓄えた白髪頭のお爺さんが元気よく登場した。

 じろりとこちらを睨んでいたものの、ユリウスを見てハッとなる。


「おい、お前、まさかユリウス坊か!?」

「そのまさかだ」


 なんでもここにやってくるのは七年以上も前だという。


「もう何年も顔を見せないから、くたばったと思っていたが」

「リロ爺より早くくたばるわけないだろうが」

「痩せっぽっちで生気がなかった子どもが、大人になるまで生き残れるとは思っていなかったが」

「失礼な」


 会話を聞いていると、かなり気心が知れた相手だとわかる。

 なんだか二人の空気感も少し似ているような気がした。

 きっとユリウスが影響を受けた人のひとりなのだろう。


「どうしたんだ、きれいなお姉さんなんか連れて」

「彼女は男だ」

「ん?」

「アルヴィは男だ」

「ああ……ん?」

「男! 神学校のクラスメイトだ」

「ああ、そうだったか。すまなかった」


 お姉さんと呼ばれてドキッとしたものの、ユリウスが否定してくれたので、不審な反応を取らずに済んだ。


「アルヴィ、気にするな。リロ爺くらいの年になると、男も女もわからなくなるんだろう」

「おい、そこまで耄碌もうろくはしていないぞ!!」 


 会話はこれくらいにして、お店の商品を見せてもらう。

 薄暗い店内に入ると、品物が所狭しとぎっしり隙間なく並べられていた。

 

「怪しい民族像に、奇妙な十字架、ぼろぼろのぬいぐるみ――相変わらずの、ガラクタばかりな品揃えだな」

「失礼な! 骨董品アンティークと呼べ!」


 たしかにガラクタのように見えるが、子どもが喜びそうなワクワクするラインナップである。


「ユリウス坊は二十歳前だったか。そろそろオシャレに色気づく頃だろう。どうだ、こういう品を持ってみるのは」


 店主がトレイに乗せて運んできたのは、腕輪や指輪などの装身具の数々だった。

 デザインから、数世紀前に作られた品のように思える。

 ひとつ、銀の腕輪が気になったので、店主に一言断ってからハンカチ越しに手に取った。

 精緻な模様が描かれていると思いきや、呪文が彫られているのに気付く。

 古代語なので、何を書いているのかはわからない。


「こちらは――?」

「お目が高い! それは月灯りを浴びると守護の力は高まる魔法の腕輪だ!」


 なんでも月が満ちるにつれて力を増す化け物から、身を守るために作られたアイテムらしい。


「お値段は金貨七枚!!」


 あら、お手頃な価格ね!! とはならなかった。

 思っていた以上に高い。

 いいや、魔法が付与されているのならば、安い物なのかもしれないが。

 腕輪はそっとトレイに戻した。

 ユリウスは真剣に装身具を眺めていた。

 彼ならばどれでも似合うだろう。

 なんて、装身具を見ている場合ではなかった。

 みんなへのお土産を考えなければ。

 これだけの品数があれば、迷ってしまう。

 店主から助言をもらうことにした。


「あの、ルームメイトにお土産を買って帰りたいのですが、何かいい品はありますでしょうか?」


 あらかじめ、遊戯盤の持ち込みは禁止されていることを伝えておく。

 すると、すぐにオススメしてくれた。


「あるとも! これだ!」


 店主が勧めてくれたのは、聖術の言祝ぎではない。

 おそらく呪文が描かれた札である。


「あの、こちらは?」

「化け物退治ができる呪符だ」


 なんでも化け物にこの呪符を貼って呪文を唱えると、炎が出てくるという。


「こういうのは、男ならば大喜びで受け取るだろう」

「そうなのですか?」


 ユリウスを振り返って問いかけると、否定はしないと言う。

 物騒な事件もあるようなので、護身用に持たせてもいいのかもしれない。

 値段も半銀貨一枚と、そこまで高くない。


「では、それをください」

「まいど! 三十枚、ぜんぶ持ってけ泥棒!」


 一枚半銅貨一枚と思いきや、三十枚で半銅貨一枚らしい。

 思いのほか、いいお買い物ができてしまった。

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