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女王陛下の婿探し~専属騎士だけれど、隣国の神学校へ男装し未来の夫を探しに行けと命じられました~  作者: 江本マシメサ
第三章 神学校の謎

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違和感

 その後、礼拝堂で祈りを捧げる授業が始まる。

 昨日、同じ授業があったときは、居眠りをする者もいた。

 けれども今日はいなくなった三人についての詳しい情報が開示されず、これ以上質問しようものならば処罰が下ると聞いて、怖くなってしまったのだろう。

 皆、目が恐怖に戦き、神に助けを求めるようにひたすら祈っていたのだ。

 そのあとはひたすら聖書を手書きで書き写す授業を行う。

 聖術を習う前に、信仰とは何かをひたすら叩き込む。

 そのあとは、きちんと内容を覚えているかの試験があった。

 赤点を取った者は放課後に追試が実施されるらしい。

 すぐに採点され、試験用紙が返される。

 私は百点中八十七点。

 ユリウスもこっそり私に見せてくれたが、九十八点だった。

 さすが、学年首席なだけある。

 ホィンはこの世に絶望したような表情で、試験用紙を受け取っていた。

 聞かずともわかる、赤点なのだろう。

 昼休みになり、昼食を終えたホィンがやってきて試験用紙を見せてくれた。


「アルヴィ、やってしまった! 見て、七点しかない!」


 赤点は三十点以下だというが、まったく届いていなかった。


「どうしよう! さっきブラザー・マテオに呼びだされて、赤点が続くようだったら留年するって言われてしまったんだ」


 しかしながらホィンは、成績順で並んだときに真ん中くらいだった。

 それについて、ホィンがこっそり秘密を教えてくれた。


「実は僕達、名前を入れ替えて試験を受けたんだ」


 フィンはホィンの名前を、ヘィンはフィンの名前を、ホィンはヘィンの名前を書いて試験に挑んだという。


「どうしてそんなことを?」

「僕だけが落ちるかもしれないから、連帯責任になるように、名前を入れ替えることにしたんだ」


 ホィンは入学試験前だけ必死に勉強して合格できたという。


「その、この学校の入学試験は、名前さえ書いたら合格すると言われているのですが」

「えっ、そうだったの!?」


 そうとは知らずに、替え玉作戦で三人揃っての入学を目指していたようだ。


「うわああ、なんてことをしてしまったんだ!」

「ホィン、落ち着いて。今は追試のことだけを考えないと。暗記のこつを教えてあげるから」

「いいの?」

「ええ。頑張りましょう」


 幸いと言うべきか、試験内容は同じだという。

 どこが出たかしっかり記憶しているので、聖書を片手にホィンの記憶に叩き込むこととなった。


 放課後、追試に挑むホィンを送り出したあと、ユリウスから声がかかる。


「アルヴィ、明日の朝も、同じ時間に教室に来ることができるだろうか?」

「ええ、もちろん」

「なら、待っている」


 今日は追試で残る生徒もいるので、調査はしないようだ。

 明日、今後どうすべきかということを話し合うつもりなのだろう。


「じゃあユリウス、また明日」

「ああ」 


 神学校での一日が幕を閉じたのだった。


 ◇◇◇


 寮に戻ってきたホィンは、笑みを浮かべていた。

 追試だと聞いて心配していたフィンとヘィン、パウウルと共に、ホィンが鞄から出した試験用紙に注目が集まる。

 そこには五十四点、とあった。


「ホィン、すごいです! 偉いです!」

「アルヴィの教え方がよかったんだよ」


 どうやら二回連続の赤点は逃れたようだ。

 フィンは安堵の表情を浮かべ、ヘィンはよくやった、と背中を叩いている。

 追試の話を聞いたパウウルは危機感を抱いたからか、普段から聖書をよく読んでおこうと誓ったようだ。


 ホィンの追試合格にほのぼのした空気になりかけていたものの、ヘィンの質問で空気が変わる。


「そういえば昨日の行方不明扱いになっていたクラスメイト達、どうなった?」


 にこにこしていたホィンの表情が、一瞬で暗くなる。

 それを見ただけで、フィンとヘィンはだいたいの事情を察したようだ。


「ああ、俺も気になってたんだ」


 ホィンはパウウルのために、クラスメイト達のその後を話すこととなった。


「実は、朝登校したら、例の三人の席がなくなっていて、ブラザー・マテオも彼らについて聞いたら罰則があるって言いだしたんだ」

「なんだそれ! いなくなったクラスメイト達のことを聞いたら罰があるって、ありえないじゃないか」


 その通りであるが、ここは教師である神父ブラザーの言うことが絶対である。

 異を唱えた結果罰を受けても、助けてくれる者などいないのだろう。


「ここ、なんだかおかしくないか?」


 パウウルの指摘に、皆黙りこむ。

 それは肯定しているようなものだった。


「まあでも、俺はここを辞めても行く当てがないしな……。変だと思っても、神学校を卒業して聖職者になる以外の道がないから」


 それはパウウルだけでなく、フィン、ヘィン、ホィンの三人も同じ。

 皆、言葉を失い、遠い目をしていた。

 そんな状況の中、ホィンが話しかけてくる。


「でも、アルヴィは貴族だから、帰る場所があるんだよね」

「ええ、まあ、そうですが……」

「いいなあ」


 彼らも国へ連れて帰れないものか、なんて思ってしまう。

 タオルを作る技術をもっていれば、この先も暮らしていけるだろう。

 パウウルも漁師の仕事を紹介してもいい。

 聖職者として生きる道しかないというのは、気の毒でしかなかった。

 今、彼らに選択を迫るのはまだ早いだろう。

 私の調査も終わっていないし。

 もう少しだけ見守っておかなければ。


 その後、食事を終え、奉仕活動と祈りの時間、入浴を終えると、外はすっかり真っ暗になる。

 パウウルは消灯時間になるまで、聖書を読んでいるようだった。

 ホィンも赤点を反省してか、予習してから眠るという。

 そんな彼にフィンとヘィンが付き、暗記のこつを教えているようだった。

 私はセシリアに手紙を書いて、枝に結びつけておく。

 朝――鐘が鳴る前にエリザベータを呼んで、手紙を持っていってもらった。

 頼む時間が早すぎると怒られてしまったが、夜目が利かない夜間に頼むわけにもいかないだろう。

 なんとか謝罪を受け入れてもらい、セシリアへの手紙を運んでもらうことに成功した。

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