本気出してみた。
「クリスって本当に強いの?」
「……」
ラブのコメント。
週末クリス家は集まり、お茶会を開く。あったりなかったりだけれど大体はよく集まる。
ラブの大胆不敵な台詞にほかの娘たちは黙る。こいつ、また面倒なことをと思いながら
「強いわよ。少なくともお前たちよりは」
「魔法をのけても?」
「体術ならリンのほうが強いわよ。だって私か弱いもの」
魔術師、魔法使い、精霊なら魔法メインで活動しているから、魔力がなくなればほとんど無力になるもの。それは神とて同じらしいが、クリスは典型的な魔術師タイプらしい。
「だいたいねぇ、強い強くないなんてあんまり関係ないのよ」
「どゆこと?」
「力が弱くても、魔力がつよけりゃ勝てるし、魔法が使えなくても体術がまさってりゃ勝てるし。ようは自分の長所をいかに生かし、いかに相手の弱点をつけるか。が、問題よ」
「……クリス、体術苦手じゃないよね」
名雪がお茶を飲みながら言った。
「私、クリスに体術で勝ったことない」
「スピードでなら勝ってるでしょ」
「……複雑」
「つーかクリス達ってチートでしょ」
「違うってば」
クリスはケーキをカットしながら首を横に振った。
「ただ人より一歩前できるだけよ」
「……」
「……」
「……」
ラブはため息ついた。
「自分持ち上げるの好きだよね」
「なにいってんの、神様なんて自分好きばっかよ、目立たなきゃ人間崇拝してくれないし」
「そういや、人間界でのクリス神名なんなの?」
「一応『月の女神』で通ってるから、国によって違うわね。大体アルテミスのが多いんじゃない?」
「へぇ、でもそんな信者多くないよね」
「知名度あればボーナスで魔力供給多くもらえるからいいのよ……って、何の話してんのよ」
切り分けたケーキを皿の上にのせていく。
「!」
ぴくり。
クリスは一瞬で結界をクリス村範囲にはった。
が、何も起きない。
「どうしたの?」
「いいえ別に」
どこか別のところを見ながらクリスは言う。
名雪たちもならって気配を澄まし、異常を探るが何も変化は感じられない。
「つか、最近クリスやリン、何に警戒してんだ?」
ソラの言葉に名雪も頷く。
「レイアースも……気配を感じるといっていた。何がいる?」
「さぁ」
クリスはレイアースの頭をなでながらおどけた。
「気になるなら、探してみたら?」
「いや、探してみたらって……」
ソラはフォークを片手にケーキを刺す。
口に運べば甘いイチゴとふんわりしたスポンジにちょうどいい甘さの生クリームが口の中いっぱいに広がる。シンプルなショートケーキでも、クリスが作れば一味違うように感じる。
なにが違うのかと聞かれれば困るが。
「旨い」
「でもそうねぇ」
紅茶を入れ、満足そうに香りを楽しむクリスはラブのほうを見た。
「あんまり、のぞき見されるのも好きじゃないわね。で?ラブ」
「え?」
「知ってるんじゃない?正体」
「さぁ?だって謎の存在すら今知ったのに」
「そう」
微笑んだクリスに微笑み返すラブ。
(落ち着け私。クリスはただ探りを入れただけ。何も知らない……はず。知ってるわけがない)
ラブは道化師のように嗤う。
(ぞくぞくする。うへへ、バレテもばれなくても私は面白ければいいや)
つまらない人生を繰り返すより、こっちのほうが数倍面白い。
役者より、傍観のほうが尚面白い。
物語はこうでなくては