ちらっ
クリスの家の末っ子は双子。ルーナとレイアース。リンにはどちらが姉か分からないらしい。
リン家の末っ子はミント、その上にミンミン。双子が生まれることを予想してわざわざふたつタマゴを用意したわけじゃないが、たまたまちょうどいい人数合わせになったとリンは笑っていた。
アメリアスと名雪は二人肩を寄り添いながら本を読んでいたが、突如聞こえた悲鳴に顔を上げた。
「あら、ちょうどいいところにレイアース」
「はい?」
ストレートで黄色っぽいオレンジの髪色のレイアースにアメリアスは声をかけた。
「さっきの悲鳴誰??」
「リンさんです、キメラさんに噛みつかれてました」
まだ反抗期らしい。
「じゃほっときましょ」
「おー。るー…レー・・レイアース?クリス知らない?」
ソラはレイアースの頭をなでながらたずねた。
「はい、レイですよ!ルーナと畑へいってます」
「……ソラ」
咎めるような名雪の声にソラは罰が悪そうに笑みを作った。
「髪色しかわかんねーんだもん。悪いな」
「大丈夫です!・・分かりずらいなら私髪切りましょうか?」
「あーいいよいいよ。わたしのためって悪いし」
素直な妹の頭をなでながらソラは断った。
ソラはアメリアスのほうを見た。
「お前はこの二人間違えずに呼ぶよね。何?コツとかあんの?」
「人の名を呼び間違えないということにコツなんてないわ」
「・・・・ばか」
名雪の一言にガガンっとなりながら目を泳がせた。
読んでいた本を閉じ、アメリアスはソラを見つめる。
「でも、そうね。その名が嘘か本当かどうかなら見極めることができるから、いくらそっくりな双子でも、名を間違えるということは私はしないわ」
「へえ、そんな特技あったのか」
「特技というか・・職業的にかしら」
「?」
不思議そうな顔をするソラにため息をもらせば、バカにしたろと声がかかる。
「私は呪いの神よ?」
「だから?」
今度は名雪がため息ついた。
「私がバカみたいだから、さっさと答え言えよ。もうバカでいいから」
めんどくさくなったソラが急かす。
「生まれたばかりの赤子は存在が希薄なもの、それに対し縛りをかける呪いが『名』であるの」
「あー、そういうことか」
やっと納得したソラに対し、今度はレイアースがクエスチョンマークを浮かべていた。
「良くも悪くもつけられた『名』はその人、もしくはそのものの存在を表す。そこに存在するための『名』ならたとえ名をかえ、ごまかしてもかけられた名前は薄くはなれども消えはしない。私には分かる。ということ」
「子どもには全く優しくない説明だな」
レイアースはおどおどしながらソラをみあげる。
「あーつまりな、名前は呪いで呪いならアメリアスの担当だからわかるってことだ」
「分かりました!」
「ざっくりね」
「こいつらにはこんくらいのがわかりやすいだろ」
「!」
レイアースは顔を上げた。
「どうした?」
「気配を・・感じました」
「気配?」
アメリアスもソラも名雪も気をはるが、なにか違和感を感じず。首をかしげた。
「もう消えました・・最近ちらちら感じます。お母さんは気にしなくていいといいますが。レイは不安です」
「クリスが大丈夫つったら大丈夫だろ」
「そうね、クリスの後からやりゃ大丈夫だろ。っていうざっくり思念がなければね」
「・・・・・」
レイアースは空を見上げた。
「レイは不安です」
「そんなに不安?」
名雪の言葉に頷いた。
「たまごがころがりそうで」
「?」
「たまご?」