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真っ黒。世界は常に真っ黒。
世界の一部理解するにも高度の脳みそが必要とする。あぁ、不思議だ。
知りたいと問う、ならば何故と返ってくるだろう。問う疑問に対してどうして問うのかと問う。
問答返しか。
別に悪いわけじゃないけど。
昔むかし、自分の自我がはっきりとしない小さなこどものとき、なぜ?なんで?と沢山聞いて沢山知った。そうして培ってきた情報は人格の一つとなる。
私はなんだろう。私とは誰なんだろう。私の周りにあるものは何だろう。私の居る場所はなんだろう。とっても、不思議。
そうしてこうして『世界を創る』
自分だけの世界。
そして、自分の世界と、外の世界との違いを知り、知識とし培い、そして傷つく。
傷ついた分だけ私は成長し、私は『世界を守るための防衛本能に従う』
自分だけの世界を守るために、周りの世界に順応し、世界を広げ、壊れないように適度に合わせる。
そうして自分と世界は回る。
世界は問えば答えを返してくれるが、私自身に対しては応えてくれない。努めて義務的である。
誰か、世界が黒いんだ。
白い世界を知らないか?
「デンキつけたら?」
パッと明るくなる。
「そんなんだから目が悪くなってぐるぐる眼鏡かけることになるんだよ」
「なんや、カルミアかいな」
「姉に向かってなんやはないでしょチドリ」
赤い着物を来たカルミアの手にはワイン瓶がしっかり握られている。
「何必死こいてノートパソコンに打ち込んでいたわけ?」
「あ、見んといてぇー!!やめてぇぇぇー!!!」
ノートパソコンを奪われ、弄られる。
読み終わったあとカルミアはチドリを見た。
「厨二病?」
「それ言うたらアカン!うちらの存在そのものがそうやん!!」
「私たちに罪はないわよ。いい?それグレー発言だから」
パソコンを投げ返される。
なんことだ。
「知りたいのなら調べることね」
「わかってへんなぁ!!知らんからこそ!そそられるロマンがあるんねや」
「あっそ」
カルミアは何しに来たのか分からないが、背を見せ部屋を出ていこうとする。
「なんや、うちに用ないんかい」
「あったわよ。でも、あんたじゃダメだってわかったから」
「うちやダメ?なんのこっちゃ」
「分かるわよ、そのうち」
カルミアは部屋のデンキを消した。
「うお!?」
不敵な笑みでこちらを振り返った。
「分からないのがロマンなんでしょ?」
そういって扉を閉め、再び沈黙と黒い世界がやってきた。
明るい外の世界にいるカルミアはワインを飲み干し、穴を覗き込む。穴は狭く暗い。
「・・・・世界は広いわねぇ」
広すぎて、迷子になってしまう。
迷子になって行きつく先は結局暗闇なのかも知れない。
鼻歌は青い空に消えて掠れて何も残らない。
何も、残らない。
結局。
「過去は見えても未来は見えないのよ、どうしても」
知りたい。早く知りたい。
どうしようもなく絶望な未来だとしても、知りたいのよ。そして思い出してほしい。過去の自分を、思い出して私を
「相変わらずネッチコクて一途ねぇ」
「ラブ」
振り返る。
時の女神だけが持つことを許されるロットで肩をトントンとたたいている。
「私はどちらでもいいけど、あんまり賛成は……本当はしてないんだぁ」
「過去も未来も、あの二人にとっちゃ変わらないでしょう」
「私たちとの記憶の共有部分はね、でも、生きてりゃ誰にも言いたくも、思い出したくもない過去があるもんでしょ」
「あんたっていっつもそうよね」
にらむカルミア。
「過去未来を覗き見る力があるなら、先を教えなさいよ」
「なにいってんの」
ラブはおかしいといわんばかりに笑い出した。
「過去も未来もみえないよーん、ちゃんと規定あるしぃー?それに」
ラブは杖を軽く振った。
周りの時が止まる。
「見ようとも思わないよ。おぞましい」