下
紫色のバラ園、赤い血の流れる噴水、灰色の大理石でできた大豪邸。
その中にある一室は豪華で床は高級の毛皮のじゅうたん、部屋の主はレザーソファーに座り、やってきた来客に目も向けず、かけられた言葉を耳にする。
「ペジのやつが来たって?」
アク・マウジーは化粧を厚く塗りなおしながらリンの言葉をおうむ返しに返した。
リンは意外そうな顔をし、アクの顔を覗き込んだ。
「へぇ、お前らがまた仕掛けてきたのかと思った」
「ペジねぇ、あいつじゃエデンにふさわしくない、せいぜいなれても地獄の主の幹部さ」
「一応あいつお前の息子だろ?っつーことは俺の兄貴にもなるのか?」
「まぁ、そうなるかもね」
今度はマネキュアを塗りながらアクは適当に返事した。相も変わらずこいつは考えているようで何も考えていない。
もともと最高権力者に取り付いている下級悪魔の身ゆえにか、あまり先に興味など内容に見える。
「ペジは俺と同じで卵から生まれたのか」
「さぁてね」
アクはクククと笑う。
「あたしがサウジーナに憑りついて格上げになった時にはすでに居たような気がする」
「なるほど。つまり奴についてお前聞いたところで意味はないということか」
「そうゆうこと」
リンは頭を掻きながら目を泳がせた。
「じゃあいいや」
手をひらひらさせながらリンは歩き出した、その背を見ながらアクは声をかけた。
「どうするつもりなんだい?」
「せいぜい利用させてもらうさ」
クリス村に帰った途端、ペジ登場したがワンパンでぶっ飛ばした。
「はーい、リン一家集合」
指を鳴らし、家族全員集合させる。
「なによ」
ちゃんぽんしていたカルミアの手にはワイングラス。中身を一気に飲み干し、艶やかな息を吐く。
「今から俺の兄貴がくるので」
「見てたで、ワンパンされて消えたやん」
「お前らで対処しろ」
千鳥のコメントをスルーする。
「対処って」
アメリアスは首をかしげた。
「ヤルってこと?」
「過激ね」
マリーは汗を流しながら過激発言する姉妹を見る。
リンは腕を組んだ体制で首を横に振った。
「いや、毎回来られても正直うっとおしいからよ、もう来るかっと思わせるような嫌がらせをな」
「「「しょっぼっ」」」
「一応私たちより強いんでしょ?」
「本来ならな。だけどあいつは生まれの傲りで自分を鍛えることをしていない。それとは違いお前らは小さいときから限界スペック突破するまで鍛えたから余裕で倒せるぞ」
伊達に鍛えてきたわけじゃないと笑うリン。
「自分の命狙ってきてるんだから、自分で対処したら?」
カルミアの言葉にリンは鼻で笑った。
「ああいうのは格下だと思ってるやつにやられたほうが折れやすいんだよ。ということで、みんなで協力してマリーに倒させろ」
「え?」
突如名前を呼ばれたマリーだけでなく、その場にいた全員が驚いた顔を見せた。今、なんと?
「んでマリーがやつを倒したら村人全員にそのことを言いふらせ」
「凄い嫌がらせやね」
ずれた眼鏡を治しながら千鳥はニヒルな笑みを浮かべた。
「じゃ、マリー行きましょ」
「え?え?」
「まずはマリーがどのぐらい弱いか相手に知らせないとね」
「え?」
状況を飲み込めていないマリーをよそに首根っこを引きずり去っていくカルミアとアメリアス。
その様子を見送り、リンは腰に手を当てた。
「リン、手抜きね」
「これも修行さクリス」
隣の家の塀に座り、その様子をはじめから眺めていただろうクリスは紅茶を優雅に飲みながら微笑んだ。
「ペジじゃ話にならないわ、彼がちゃんと修行すればやっと相手になる程度なのに」
「どちらにせよ、いいんだよ」
家の中から泣き出した赤ちゃんの声を聴き、リンは家の中へ入って行く。
「経験は大事だろ」