別
朝、シャワーを浴びて。ちょうどいい温度の外に出て木漏れ日に当たり、木々の下で涼しみながら読書をする。これがいつの間にかの日課になっていた。
そして。そうしていれば、君がやってくるから……。
「よう」
「リン!」
少女はリンに抱きついた。
今は何もない森で細々と生きている僕は元は勇者だった。
仲間や国や友に裏切られ、魔王に敗れ、たった一人で孤独に死んでいく運命だった僕の前にリンは現れた。
『お前は死にたいか?』
まるで慈悲のない言葉。でも答えることでどうにかなるわけでもない。僕は掠れた声で思いを口にしたの
『生きていたい』って
すべてに絶望して、何もない僕なのに、生きたいだなんてだなんて、笑うかなっておもったけど・・リンは僕の頭に手をおいて、なでてくれた。
「生きたいなら生きればいい、生かしてやるよ。お前は生きていていいんだ」
僕に希望をくれた。
「お前変な奴だな」
「なにが?」
テーブルの上に食事を並べながら僕はリンを見た。コーヒーを飲むその姿まで芸術みたいだ・・むぅ、美形は何しても様になるからずるいよね
「自分の生まれた故郷の次元すらも離れ、誰もいない森に独りで住んでいて、さみしくないのか」
「うーん、時々ねさみしくなることもあるよ。でもね、リンが来てくれるからさみしくないよ」
「ふーん、あっそう」
できた朝食を机の上に置けば即座に伸びる腕。
早く食べないと僕の分もなくなっちゃう!
「人間は群れで行動するものだ。何故だかわかるか?」
「さみしいから?」
「罪を分かち合うためさ」
「罪?」
カラにした皿を重ねるリン。僕のほうを見もせずコーヒーを口にする。
「そう罪、その罪を一人で背負うことはできない、誰かと一緒に共有しともに隠しただひたすら罪から目をそらす」
「罪って、なんの?」
「人としての罪」
「うー?あの聖書どうたらってこと?」
「俺が聖書について語るわけねぇだろバカ」
ばかっていった・・。
「罪は罪、でも罪は罰じゃない。分かっていてもつらいもんはあるもんだ」
気が付いたら僕の朝食は終わっていた。
片手にもっていたパンを口に放り込み、ホットミルクを飲み干す。
「リンの話は難しいよ」
「お前がバカなんだよ」
「バカっていったほうがバカなんだもん」
「あ?」
「ごめんなさい、なんでもないです。はい」
僕って弱い子・・。
「よーし、狩りいくぞ狩り」
いつのまにか両手には弓矢が。
リンはいつも唐突に現れ、気まぐれに会話して、消えていく。
それでも僕はいい
リンは必ず来てくれるから
僕を裏切らない、信用できる唯一の存在。
だからいいんだ
僕のこと、見てくれなくても・・
「行くぞ」
リンは、僕の名を呼ばない。
「うん」
リンはきっと僕の名を、知らない。