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クリス村 休止中~  作者: 綴何
しょう
90/105


 朝、シャワーを浴びて。ちょうどいい温度の外に出て木漏れ日に当たり、木々の下で涼しみながら読書をする。これがいつの間にかの日課になっていた。

 そして。そうしていれば、君がやってくるから……。


 「よう」

 「リン!」

 

 少女はリンに抱きついた。

 今は何もない森で細々と生きている僕は元は勇者だった。

 仲間や国や友に裏切られ、魔王に敗れ、たった一人で孤独に死んでいく運命だった僕の前にリンは現れた。

 

 『お前は死にたいか?』


 まるで慈悲のない言葉。でも答えることでどうにかなるわけでもない。僕は掠れた声で思いを口にしたの

 『生きていたい』って

 すべてに絶望して、何もない僕なのに、生きたいだなんてだなんて、笑うかなっておもったけど・・リンは僕の頭に手をおいて、なでてくれた。


 「生きたいなら生きればいい、生かしてやるよ。お前は生きていていいんだ」

 

 僕に希望をくれた。

 

 「お前変な奴だな」

 「なにが?」

 テーブルの上に食事を並べながら僕はリンを見た。コーヒーを飲むその姿まで芸術みたいだ・・むぅ、美形は何しても様になるからずるいよね

 「自分の生まれた故郷の次元すらも離れ、誰もいない森に独りで住んでいて、さみしくないのか」

 「うーん、時々ねさみしくなることもあるよ。でもね、リンが来てくれるからさみしくないよ」

 「ふーん、あっそう」

 できた朝食を机の上に置けば即座に伸びる腕。

 早く食べないと僕の分もなくなっちゃう!

 「人間は群れで行動するものだ。何故だかわかるか?」

 「さみしいから?」

 「罪を分かち合うためさ」

 「罪?」

 カラにした皿を重ねるリン。僕のほうを見もせずコーヒーを口にする。

 「そう罪、その罪を一人で背負うことはできない、誰かと一緒に共有しともに隠しただひたすら罪から目をそらす」

 「罪って、なんの?」

 「人としての罪」

 「うー?あの聖書どうたらってこと?」

 「俺が聖書について語るわけねぇだろバカ」

 ばかっていった・・。

 「罪は罪、でも罪は罰じゃない。分かっていてもつらいもんはあるもんだ」

 気が付いたら僕の朝食は終わっていた。

 片手にもっていたパンを口に放り込み、ホットミルクを飲み干す。

 「リンの話は難しいよ」

 「お前がバカなんだよ」

 「バカっていったほうがバカなんだもん」

 「あ?」

 「ごめんなさい、なんでもないです。はい」

 僕って弱い子・・。

 「よーし、狩りいくぞ狩り」

 いつのまにか両手には弓矢が。

 リンはいつも唐突に現れ、気まぐれに会話して、消えていく。

 それでも僕はいい

 リンは必ず来てくれるから

 僕を裏切らない、信用できる唯一の存在。

 だからいいんだ

 僕のこと、見てくれなくても・・


 「行くぞ」


 リンは、僕の名を呼ばない。


 「うん」

 

 リンはきっと僕の名を、知らない。

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