上
「どうでもいけどさ」
唐突にクリスは言った。
「やっぱ、もう少しバラエティがほしいわね」
「と、いうと?」
「タマゴ増やしました」
手には卵。
「・・・・・・・・・・」
空はめんどくさいものを見るような目をした。
「大丈夫、リンのとこもだから」
「何がどう大丈夫なんだ」
「なになにー?また妹?」
ラブが突如時空の裂け目から現れた。
クリスはそうよと返事し、卵を見せた。なんとなくだが、もうすぐ生まれてきそうだ。
「たまには弟ほしいよおかーさん」
「嫌よ。私が男いらないもん」
クリスはぷーいっとそっぽ向いた。
「まぁいいけど。世話するの私じゃないし」
「お前らなぁ」
空は呆れ切った声を出した。
「天使だってなんだって、いきてんだから。生きているものをほいほい増やすってのはモラルとしてどうかと」
「必要生産よ」
「その言い方ですでにアウトな気がするのはあたしだけか」
もはや何も言えずにいるソラをよそに、ラブは卵をこんこんと叩いた。
キッチンからクグリが出てくる。談笑している三人に紅茶を勧め、また奥に引っ込んでいった。クリス自慢のガーデニングの見える庭で紅茶は悪くないが、空はもやもやした気持ちのまま紅茶を味わう。
「というか、あたしらじゃクリスたちの代理にすらならないってことか?」
「あら、自分を卑下しなくていいわよ」
「してんじゃなくて、あんたのその行動が物語ってんだろ」
クリスはくすっと笑った。
「言ったでしょ。バラエティがほしいって。別にあんたたちに不満があって増加したわけじゃないわよ」
「こーんなに優秀なラブちゃんいるのに、信じられないよねぇ」
「お前なんてどうでもいいわ」
「あのねぇ」
クリスは卵をなでながら二人を見た。
「多けりゃいいってもんじゃないってことぐらいわかってるわよ?説教されるまでもないわ」
「言えよ」
「なに」
「本当の目的だよ。なんかあるんじゃないのか?」
クリスはにこっと笑い、空の頭をなでた。
「なんにもない」
「ないのかよ!?」
と、卵が揺れる。
「あら」
ぴきぴきと罅が広がり、卵が割れた。
「あら双子」
珍しく、双子天使の誕生だった。
クリスは二人を交互に見て、名前を考えているらしかった。ラブもクリスの横から双子の赤ちゃんを覗き見る。
「かわいいじゃん!同じ顔は一つでいいわよって思ってたけど、悪くないね」
「お前ってたまにひどいよな」
空もそういって顔を覗き込んだ。
「オッドアイなんだな」
「そうね・・リンのとこはどうなったかしら、見に行きましょうか」
「え、名前は?」
クリスはスタスタと歩いて行った。
「わっついつざねーむ!?」
「は?何語?」