④
キラキラ光るクリスタル。
なんか、落し物しては上等なものだった。いつも落し物を拾う癖のある私が、自分でも言うのはあれだけど大概がゴミであるのに対し、珍しいことだった。
仲の良い姉妹である片割れに光るクリスタルを見せた。
「どうしたの?それ」
「落ちてた」
手をたたかれた。
その衝撃とともにクリスタルが落ちた。
「い、痛くね?酷くね?」
「ゴミ拾うなっつったべ?」
手をさすり、不満げな顔を見せると、片割れは歩き出した。
「あ~・・・・待ってー」
クリスタルを拾おうかと思ったが、二度落ちたものを拾うほど、興味もなかったので歩き出した。
光ったクリスタルは存在を放つように光るが、草木の下に隠れたそれは誰の目にも止まらず、意味をなさなかった。
仲の良い姉妹は手をつないでランドセルを揺らす。
「それでな」
「じゃあ、主人公は二人な」
「ん・・一人でもいいけどな」
「えー。それじゃ面白くないと思うよ」
「誰だよ」
その小さな二人とすれ違うように歩くアメリアス。
小さくため息をつく。
「リンの言うことはごもっともだけど、ヤル必要あるのかしら」
本来敵どうしである天使と悪魔の差別化のための一時殺し合い。
悪魔にとっての本能、天使の抹殺・・という行為
と
天使にとっての本能、真実の守護・・という行為
ぶっちゃけクリスタルの意味は分からないけれど、天使である彼女らが悪魔に屈せず、真実を見つけ守護できればいいわけだ。
いつまでやるのだろうか
クリスタルが見つかるまで?
私たちが本当に彼女らを殺すまで?
「空は遊びだとクリスは言ったといったわね」
何もない空間からカルミアが現れた。
「あるみ・・じゃなかった、あーアメリアス」
「いつになったら名前覚えるわけ?」
ゆらり、紫色の炎がアメリアスの体から見えるがカルミアは気にせず、腕を組んだ姿勢を見せた。
「クリスに千鳥とあほのマリーがやられたわ」
「そう、というかマリークリス村から出れたの?」
「いや、しょっぱなからノされた」
そしてクリスの中でカウントされていない。
「・・・・そういえば」
カルミアはふむと顎に手を当てた。
「前にラブがクリスとリンが戦ったらどちらが強いか、という話をしてたわね」
「そうなの?くだらないわ」
くだらない、均衡がとれているということは平和を示す。
均衡でなければいま世界が正常に回ってはいないだろう。
「もしどちらかが少しでも強いというのなら、どこかしら世界に影響があるはずだもの」
「あら、二人だけで世界が回っているわけじゃないのだから、わからないじゃない?」
「古き神々も、平衡した横並びの強さよ。必ずね」
「そう考えているのは世界が狭い証拠よ」
カルミアの言葉にアメリアスはむっとする。
「前から思っていたけれど、あなた何をたくらんでいるの」
「何を?」
笑みを浮かべる。
「知りたくもないわ」
「そう、残念ね。教えてやらなくもないけど?」
「結構よ」
「私はしりたいわね」
二人は振り返った。
「!」
「がっ!?」
二人はそれぞれの方向へ吹き飛ばされた。
「く、クリス!いつの間に・・」
アメリアスは魔力を封じられ、呪いの魔法を発揮できなくなった。
「ついさっきよ」
二人に目もくれず、周りを見渡す。
(先ほどまで気配がなかったのに、急に気配が現れた・・この二人の仕業?)
草むらを消し去れば、そこには適当に飛ばした探し物、クリスタルがあった。
「発見。この勝負、私の勝ちね」
強制テレポート全員クリス村に送還された。
クリスは高笑いをしながらクリスタルを掲げた。
「いっちばーん!っていうかみんなひどいわね」
千鳥は真っ黒焦げ
空は首を押さえたままくの字で倒れている。
ラブは全身穴だらけだし
アメリアスとカルミアは負傷気味。
ちなみにマリーは最初っから最後まで地面に犬神家ポーズだ。
リンは名雪の頭をつかんでいる。
「これからお楽しみだったのに」
(助かった!本当に助かった!!!)
お面をはがされそうになった名雪は急いで下がった。
「ま、結果は見えてたから、楽しかったな」
リンはそういって首の骨がずれた空の首を治した。
「分かっていた?」
名雪がそう問えば。
「俺がお前ら殺すわけ、ないだろ?」
太陽神にふさわしい、清々しい明るい笑みだった。