③
リンは次元の壁から飛び出した。と、同時にリンは体に違和感を感じた。
ぶしゅっ・・風がリンの体を切り刻む。
「?」
リンの体が重力に従い下へ落ちる。
「おぉ?」
魔力が使えない。
と、いうかいくらあほでも自分が目的地を、人間界と地獄の針山の上と間違えるわけがない。
魔法で鳥へ姿を変えた風がなおもリンの体にまとわりつき、攻撃を仕掛ける。そのたびにリンの体から血が飛び散り肉を抉る。
リンは腕を組みながら考える
「ラブしかいねえか。生ぬるいやり方だ」
ざく
リンの体が針山に突き刺さる。
空中で切り刻まれた血が雨のようにリンの体に降り注ぐ。
「・・・・」
地獄の住民、鬼や亡者たちが何事かと集まってきた。
と、閻魔大王が降り立つ。
「リンか」
鬼が亡者を押しのけ魔王のために道を作る。
「貴様がなにをしようと、止められはせんし、我が発言するほど権利はない」
ピクリともしないリンに気にせず魔王が続けた。
「因果応報という言葉を知らぬわけではあるまい。貴様らが行う行動の一つ一つ深い意味があるのだろうが、我らにはわからぬ。振り回すのはやめてもらいたい」
「ぷ」
リンの口から血が飛んだ。
「ぷぶっへっへっへ」
鬼が金棒を構えたが、魔王が片手で制した。
「ぶあっかじゃないの?ぶっっこっぼっかぁーぁぁ・・ごぼごぼ」
口から流れ出た血で咽ているリン。
「ぴゅー」
おちょこ口にして噴水のように血を吐き、テレポートで移動した。
「タイム・ストップの魔法、次元トラップ、簡単攻撃魔法・・三ステップか」
空洞のできた腹に手を通しながらリンは笑った。
「さすがクリスの教育を受けただけは・・って普通なら考え付くぐらいか?」
肩を揺らし笑うリンを、化け物を見るような目で亡者たちは向けた。
「お前がサウジーナの娘でなければ、最下層の地獄に落としたものを」
「最下層ね」
リンは指を鳴らし、傷を一瞬で消した。
「落としてくれるんなら、落とされてやるぜ」
「ふん、嫌味な小娘め、地獄の最下層ごとき貴様にはなんの痛みもあるまい」
「へっへっへ。そりゃお互い様さ」
リンは穴の開いた服を引っ張り、破り捨てる。
白い肉体が薄暗い地獄に映える。
「地獄はいいな。落ち着く」
リンの足元に赤黒く光る魔方陣がしかれた。
「お前も堪能してみろ。ラブ」
リンが落ちてきたように、その空中に突如現れたのはラブだった。
「っく!?うわぁ、なんでリン胸もろだしなの?」
「おめーもこれからそうなるよ」
ラブは体の回転を変えて下をみた。
「うわあああああ!?串刺しはちょっと乙女的にいやぁぁ!?かな」
「しらねーよ」
魔王はリンを見下し、ため息をついた。
「貴様らは何を考えているのか、古き神々すらもわからんそうじゃないか」
「クスリの言葉か?」
「あの女よりも、さらに上」
リンは笑みを深めた。
「はははは。なあおい」
リンは笑いながら魔王を見上げた。
「因果応報とかいってたやつが、古き神々がわからんとか、笑わせてくれる」
まわるときはまわるし、まわらんときはまわらん。
呪いの如く続くのは重い思い想いのみ。
それが途切れることはない。
「お前らからみても、俺は化け物なんだろうな」