中
魔法が盛んな次元に降り立ち、人間のふりして学校に通う。
学校には魔法を使う生徒がたくさん居て、実習では森に行きモンスターと魔法勝負していた。
クリスはここでも優等生で、リンは劣等生だった。
「ねぇ、クリスちゃん」
魔法学校でクリスとダッグを組んでいる少女エミーは魔法補助道具である杖を両手で握ったまま不思議そうに聞いた。
「クリスちゃんって普通のおうちの普通の子なんだよね」
「エミー、普通の子ってのは違うかな」
クリスは杖でモンスターを殴りながら、答えた。
「私はただの天才なだけ」
「自意識過剰!」
眼鏡をかけた委員長が魔法呪文を唱え、攻撃しながら叫んだ。
「嫉妬してる?委員長私の才能に・・ふ」
「クリス、後ろ」
背後に迫るモンスターをクリスは呪文もなしに杖から魔法を放ち、消し炭にした。
わかっていましたとも。そう言いたげな笑みを向けて。
リンは木の上から三人の様子を見ながら、つまらなさそうにあくびをして、飛び降りてきた。
「ちょっとリン!団体行動中なんだから離れないでよ!魔法使いってのは群れで行動するもので個人的な勝手な行動は団体の死を……」
「モンスターの群れ北方向にて発見。どうする?」
「聞きなさいよ!」
委員長のコメントを無視しながらリンは歩き出す。エミーは苦い顔をした。
「もう授業終了の時間だしぃ、怖いし、危ないから、やめておこうよ」
「そうね、ノルマは達成できたしね」
「よっし、じゃあ行くか」
クリスは杖に座り、浮遊する。
「ちょ!行かない方向でまとまってたじゃない」
「半分だけの可決ではまとまったとは言わないから」
「だからってクリスの判断で決まるのはおかしくないの!?」
「仕方ないわね。じゃ多数決で行く?」
「四人しかいないのに多数決もないんじゃない?」
クリスは唇を尖らせた。
「じゃあ仕方ないから行くよ」
「行かないって言ってるじゃない」
「じゃあいいわ、私とリンで行くから」
「だから、団体行動を乱さないでって」
リンは魔法リングを構え、こぶしをふるった。
「きゃ」
魔法を食らったモンスターは委員長の背後で消え去った。
「モンスターの群れ、ご到着」
リンはそういって腕に炎を纏わせた。
「きゃああ!!ってすぐ近くにいたのなら最初っからそう言ってよ」
「魔力の気配が無数にあったのに気が付かないほうが悪い」
クリスは防御壁を作り出しながら撤退への道を作る。
撤退する気はないが。
「なんで?学園近くにこんなに獰猛なモンスターが?!」
「あぁ、たぶんこれのせいだろ」
リンはでっかい岩のような卵を取り出した。
「・・・・それって」
「こいつらの卵だな」
エミーは倒れた。
「ちょ、バカなの!?卵は回収破壊は禁止ってルールでしょ!バカなの!?」
「落ちてたんだよ」
「は!?落ちてるわけないでしょ」
モンスターが一気に飛び上がって襲い掛かってきた。防ぎようがない。委員長は絶望の瞳をしたが、クリスは微笑んだ。
「どっかーん!」
音符のつきそうな楽しそうな声で杖を回した。
そして、本当にどっかーんという爆音が響いた。
開いた口がふさがらない。
「全力で結界張りながら、全力で攻撃魔法を放って、矛と盾の実験してみたけど」
黒い煙がマワリに立ち込める。
「結界のほうが強かったみたい」
クリスは消し炭になった杖を風に捨てながら、つぶやいた。
「ね、魔法の国でもキャバシーオーバーだったみたい」
てへっとクリスは笑った。
「なぁ」
リンは魔法のリングをつぶしながらクリスのほうを向いた。
「ここでちょっと、魔王ごっこしていいか?」
「どこまで?」
「全部破壊、魔法の国VS俺。後で戻すからさ」
「じゃあ私邪魔する役ね。勇者的な」
二人はにやりと笑った。
「ふ、二人とも・・・じょ、冗談だよね」
「エミー、起きてた?」
クリスは手のひらをエミーに向けた。
「次は一緒に旅しようね」
きっと楽しいから。