上
クリス村の公園のベンチで空はまったりと座っていると、誰からも相手にされずむくれている最弱のマリーが横に大きな態度で座った。空は露骨に舌打ちし、いやそうな顔をする。
「ね、なんか魔法美少女っていいと思わない?」
マリーの唐突の言葉に空は心の底からため息つきながら、無視した。
ため息ついて無視するっていう行為に腹を立てたマリーがヒステリックに叫びだす。
空は嫌々相手してやることにした。
「魔法美少女って、美はともかくとして魔法使う少女ってことだろう?一応あてはまるじゃねぇか。よかったな」
「違うわよ!魔法少女って言ったらあれでしょ?マスコットにふりふりのゴスロリ」
「・・・・着たいのか?」
気持ち悪いものを見るような目で空はマリーを白い目で見つめた。
「私はお色気担当だから」
「ない胸でよくいうよ」
「なっ、あんたよりはあるわ!」
「は?お前よりあるし。なんカップかいってみろよ」
「ブラしてないくせに!」
「スポブラだバカ」
クリスはゆっくり二人の前に現れるとビックハリセンで一網打尽に薙ぎ払った。
「うるさいのよ無い乳ガール」
「いや、だからっ・・ってちげぇし、話それたけどまぁいいや。自主練しよっと」
立ち上がる空を見ながらマリーはぽつりとつぶやいた。
「何よ、自分魔法少女ごっこしてたくせに」
空は立ち止まる。
「した記憶ねぇよ」
「あるわよ」
クリスが即答した。
「・・・・・」
「魔法使うというイメージアップのためにやってみた。のりのりだったじゃない」
「は?私が?ありえない」
「・・・・」
クリスは指を鳴らし、昔の映像を見せる。
小さいころの空は今と違いロンゲで魔法少女の格好ですっごいノリノリで「めておー」っと魔法をぶっばなしていた。
「見せなくていいし、あとマリー笑うな〆るぞ」
「あら、いいじゃない。若気の至りじゃない?それにわたしらだってやったし」
「魔法少女?」
クリスは頷いた。
「階級がまだ天使だったころの話よ」
「・・・・」
「・・・・・・」
「・・続きは?」
「は?」
クリスはにっこりとほほ笑んだ。
「聞きたい?」
手がマネーの形だ。
「なんだよその手」
「か」
「ねを欲してんのはわかってるけど、なんで払わなきゃいけないんだよ」
「世の中甘くないってのを教えるために」
「たかが昔話聞くだけに大層なこったな!」
リンもたい焼きを持って現れた。
「お、リン」
「?」
もぐもぐ口を動かしながら微妙に遠い距離でこちらの様子をうかがっている。
「こっちこいよ」
なんだよその微妙な距離。
「あのさ。たい焼き・・餡入りのたい焼きって縁起いよな」
「なんで?」
「餡子入りのたい焼き、略して安泰」
「?」
「?」
リンはたい焼きを三つ丸ごと口の中に突っ込んだ。
「昔話聞きたいのか?」
「いきなりだな。どうでもいいよ」
「私は聞きたいわ」
空はもう帰りたかったがマリーに服をつかまれた。
「では、話してやろう」