上
人間たちはいつも戦争をする。世界の頂点は人なのだと愚かにも慢心している。
時に自分たちを神格化させ、神の存在を空想化させる。
都合のいいときのみ神を崇拝する。
神は、そんな人を見てそれぞれの感想を述べる。
「人という種族を滅ぼすべきなのではないでしょうか」
「穢れが淀みきっています。改善すべき方法はそれしかないかと」
「光と闇の均衡すら破られようとしておりますぞ」
久しぶりの会議に参加してみればさっそくめんどくさい協議に入ってしまった。
天界最高位に位置する12神は元老院、幻獣王、精霊長、のコメントを聞きながら閻魔、先代のほうへ向いた。
「閻魔と、クスリ、アク・・はどうでもいいわ、二人はどう思う?」
アクがシカトかよ!っと突っ込んだが無視。
「そうねぇ、正直人間なんてどうでもいいけど。いなければそれはそれで均衡がとれなくなるものねぇ、人間の代わりになる均衡をとれるものがあるならそれでも私は構わないと思うけれど」
「わしからすれば、魂になれば人も獣も関係ない。人間という種族だけ滅ぼして何かが変わるとも思えんのだが」
人間末梢派反対という枠でいいらしい。
その反応に意外だという顔をする元老院。
「12神の意見も聞きたいわ」
クリスが顔を向けると、12神も人間末梢は反対だといった。
「人間が消えないのなら、均衡はどう整えますか」
元老院の言葉に、クリスは指で黙るよう指示した。
「人間を殺そうがそうでなかろうが同じでしょ?っていうか均衡がどうとかいう前にそれほどぶれていないし、私とリンという存在が均衡が保たれている証拠じゃないの?」
光の女神たるクリスと闇の女神たるリンの力はほぼ互角だ。
それすなわち世界の均衡も現している。
「それとも私が弱いって言いたいの?」
「滅相も」
あわてて保身に回る。
「リンは?」
「人間は滅ぼさない」
リンの珍しい即答にみんな黙る。
「むしろ俺は人間界との離別、不干渉をすすめる」
「アホかい?膨大な欲の塊の人間を放置してたら次元がいくつも崩壊しちまなうよ」
リンの提案にアクは大反対する、それにはみんな頷く。
「リンさん、人間たちは適度に放置適度に干渉が必要なのですよ。いくらバカなあなたでもそれはお分かりのはず」
「せやでリン、バカやんな」
ヴァニラとラゴウにののしられてもリンは首を横に振った。
「ほっといても滅びねえよ」
「リンちょっと過信しすぎじゃない?」
「バカなの?」
「ルミ!言いすぎだよ」
クリスは鈴を鳴らし注目させた。
「不干渉はなし、っていうか話戻すわよ人間末梢し均衡を戻すっていう案も却下。あとみんなリンのことバカバカ言い過ぎよ。今更じゃない」
「フォローのふりしてお前もバカっつってんじゃん」
リンは立ち上がりパープルの翼をはやし、飛び上がった。
「いっそかかわり持たねえほうが楽だと思うけどな」
そういって消えた。
「リンさんは本当両極端ですね」
あきれ声のヴァニラに対し、クスリは魔法で紅茶セットを出して啜りながらつぶやくように言った。
「でも、破壊神のリンが人間殺戮に反対するなんて珍しいと思わない?」
「せやな。なんでだろ」
ラゴウのコメントにクリスは笑った。
「あぁ、そうか・・そうだったわね」
忘れてたわ。
私たち・・人間だったわね。