上
「クリス、結婚してくれ。君を愛している」
「ありがとうオーディウス。でも私『純潔』の誓いをしているから、こたえられないわ」
答える気もないけど、っとクリスは心の中でぼやいた。
「関係ない。君を奪わせてくれ」
オーディウスはそういってクリスに襲い掛かったが。
「ごめんってば」
クリスは魔法でひらりと逃げた。
ぶちのめしてもいいけど、そればっかしてたら評判悪くなって、またクスリやらが文句いってくるし。
我慢した自分って偉いとさえも思う。
「ふう」
あの手この手でクリスをわがものにしようとする輩は男女関係なく多い。もともと神に性別なんてないような気もしなくもないが、そこは気にしない。
「あぁ、もううっとおしいわね」
家に帰ればあの男から大量の白百合と情熱的な真っ赤な花束、これはもう一週間目になる。
「もってもてぇ」
ラブはそういってクリスを茶化したが、睨まれて口を閉じた。
「どうせ送るならもっとこう伝説的宝なもの送ってこいっての」
「いやいや、無理でしょ」
空がクリスの家に入って、まずいやそうな顔をした。
「誰の趣味だ?」
「クリス」
「の、おっかけよ」
クリスは魔法で花束を消した。
「どこにやったの?」
「BOX」
クリスはため息をつきながら外へ出た。
今日一日は変わりのない日を過ごした。・・今日は
「ふぁあ~あれ?今日は静かね」
鉄龍と針龍のぶつかる音も聞こえない。
「?」
窓を開ける。
「ぶ!!」
クリス村の外をみれば、どこかしこもクリスオンリー。
「き、きもーーーーー!!」
しばらくして、正気に戻ったクリスは頭を押さえた。
「なにこれ。夢?」
「そう」
後ろを見ればスリープがいた。夢の中で生きる神、スリープとムマ。
ということは、ここは夢の中か。
「そういえば、ここクリス村じゃないわね」
よく見れば天界の貴族街じゃん
「なんで私ばっかなのさ、何のいじめ?」
いくら美人でも大量にいたら気持ち悪いでしょう。
「私たちがしたわけでないわ」
ムマのコメントにスリープが「そうよ、気持ち悪い」と続けた。
自分で言うのはいいけど、言われると腹が立つ。
「で?誰の仕業?」
「あなたは身に覚えあるはず」
「自分で解決して。私たちは手をださない」
「夢と幻の神なら、どうにかしなさいよ」
「「断る」」
即答でかぶんなし。
「これの元凶は夢に取り込まれたの」
「取り込まれれば悪夢しか見ないのにね」
珍しいことではないので、気にしないらしい二人はバカだね~と顔を見合わせうなづいた。
仲がいいのはいいけど、それ担当なんだから解決してくれてもいいのではないだろうか・・。
一応二人のほうが上だからそんな言わないけどね!
「でも、そうね。いざとなったらこれ」
「券?」
渡されたチケットにはでっかい太文字で『夢園へご招待一回分』とかかれていた。
「いらないし」
「もらえるものは」
「もらっとけ?」
「そういうこと」
スリープのかけ声にかえしてしまった。
「はぁ、もううざったいからささっと終わらせよう」
「あぁそうそう」
ムマがクリスを呼び止める。
「夢の中は初めてだろうから、先に言っとくけど。この世界では現実世界の力が30%も出ない上に、あくまで夢の中だから夢主が絶対」
「?」
「魔法は期待しないでってこと」
そういって二人はどこからかやってきた馬車に乗ってからからから~と去って行った。
「・・・・は?」
わけわかめ。
「発祥地はここかしら」
いろんな服を着たクリスが忙しなく出入りしている館が一つ。そこに足を踏み入れれば、唖然とするしかなかった。
大量のクリスがいるのにもかかわらず、触れることさえもできないガラスの花瓶の中に入ったオーディンがいた。
「何してんの」
彼のまわりには白百合と赤いバラが大量に置かれていた。おいているのはクリスでも、オリジナルクリスには全く理解できない。
「おいこら」
切なげに呆けていたオーディンのいる花瓶をける。
こちらに気が付いて驚いた表情を見せた。
「こっちが驚きだっての、なにしてるの」
オーディンの口が動く。
本物の君が、来てくれるなんて、夢のようだ
「夢の中よ、夢に飲まれたオーディン」
彼は何とも言えない表情をして、こちらに食い入るように見つめてきた。
夢でもいい、君から来てもらえるなら、本望だ
「!」
がしゃん。
クリスのまわりに柵がはえたとおもえば、それは鳥かごのような牢屋を作ってクリスを閉じ込めた。魔法で壊そうとしたが、魔法が使えなかった。
「・・・・『夢主が絶対』ってこのことね」
あくまで夢。されど精神。これはまたやっかいな・・。
君と、いつまでも見つめあっていたい。
なんて。
こいつ莫迦?