下
「イチゴ泥棒がそんな二日続けてくると思うか?」
「さぁ?どうでございましょう。クリス様の作物は本当においしいですから」
リンはバードと会話しながら闇に溶けていた。
「クリス様はなぜ結界をおはりになったのに、リン様に警護につかせたのでしょうか」
「俺への嫌がらせと、犯人の可能性だな」
「といいますと?」
クグリが木の陰からひょこっと出てきた。
「リン様、わが主からです」
「おぉ、おっかしー!」
いただいたお菓子を口にさっそく放り込みながらリンは続けた。
「12神はクリスの恐ろしさを知っているから無謀はしない、けれどクリスの結界に干渉できるほどの力を持つのはこのクリス村内では制限される」
クグリの入れたお茶を受け取りながら指を立てた。
「俺か、あいつか、どっちかの娘の仕業だな」
「子女様たちも、お分かりなのではないですか?子は親に逆らえぬものですわ」
「クリス様曰く、じぶんの力を試すため、かもしれないとのことです」
「ま、無謀なことしたくなるのも、若気の至りだよなぁ」
リンは立ち上がり、その手から縄を出現させ構えた。
「連続してくるなんて、強欲なんじゃねぇの!」
縄を蛇のようにしならせ捕獲しようとしたが、捕獲物は素早い動きでそれをかわし、ビニールハウスの中に入っていった。
「げ、まじか二重の意味でクリスに殺される」
リンはテレポートし、ビニールハウスの中へ飛んだ。
「お前誰だ、ラブか」
闇を操り、逃げ回るやつを捕まえようとするが
「ゴキブリ並みに速いな・・でも、闇の神たる俺に勝てるとでも?」
ビニールハウスごと闇に沈める。
(闇の結晶残ってたらクリスに絞められるな・・ささっと捕獲を・・何!!!)
影で作った闇の檻の中には何も捕獲されていなかった。
「うそだろ」
「そうとうやるわね」
「あ、クリス」
「でも、犯人が分かったわ」
次の日。
「なんです、こんな朝早くから」
ヴァニラはクリスとリンの顔を交互に見ながらに首をかしげた。
「なんですじゃないでしょ、ヴァニラ。私に言うことあるんじゃないの?」
「クリスさんに言いたいことならたくさんございますが?」
「こいつよ!!」
クリスは魔法で捕獲しておいた新入りを頬り投げた。
「あぁ、やはり彼女でしたか」
「知ってるなら言えよ!」
「いえね、確証もなかったのです。それにこの子は純粋にイチゴが好きなだけですし・・クリスさんはお強いですから平気でしょうと思いまして」
「こいつのイチゴにかける情熱なめてたら驚くわよ」
「俺ら出し抜くぐらいだもんな」
ミルフィ・ハニーはわたわたと暴れた。
「追放は免れないわね」
「ご、ごめんなさい!反省しています、ですからそれだけは~、私、私もうクリス様のイチゴ以外は盗りませんから!!」
「おい」
クリスは怒りマークをのせてバカ天使の頭をなぐった。
「クリス様のイチゴほんっとにおいしかったんです、もうほかのイチゴ食べてもきっと満足できません!お願いしますクリスさま、イチゴ売ってくれないでしょうか!!」
「最初から商売にもっていっきゃいいのよ、なぜ盗むんだか」
「大事にしていたから売ってくれないのかなって」
いろいろ間違ってる。
「はぁ、わかった許してあげる、売ってあげるから。もう盗むんじゃないよ?」
「ぁ、はい!!」
イッケンラクチャク。
シバラクシテ・・・・・・
「ってミルフィー!!お前だっきゃ!また盗んでるんじゃないの」
「お金がなくて」
「知るか、出ていけ!村から出ていけ!!」
「あぁ、そんな、家を消さないでください、あぁ!」
クリスにとっての最大の害虫ができたのであった。
「あ、ミルフィによって受けた私の被害はヴァニラが払ってよね」
「え」