中
「もうリンいい加減にしてよね、どこにいるのよ」
いろんな次元を探し回ったがリンは一向に姿が見えない。いらいらしながらもクリスは家に戻った。
「一日たっちゃったじゃない。戻ったらお仕置きね」
ふうっと一息ついて、ふと顔を上げる。
「おやつ作ったら勝手に戻ってくるか」
一応探したんだから、別にもう自由に行動してもいいでしょ
そう思いクリスは魔法で鋏をとりだし、自慢の庭園を進み、広大な畑に入っていく。その奥にクリスが大事に育てていたイチゴをとりにビニールハウスの中に入った。
「!!」
クリスは空の籠と、鋏をその白いしなやかな手から力なく落とした。
「イチゴが・・イチゴがとられてる!!」
しかも食べとき!っという時期のイチゴのみ
「・・・・・・・・・・・・だ~れ~が~ぁぁああ」
クリスは怒りに燃えて走り出し、12神を呼び出した。
クリス邸にて集められた12神(リンは欠席)はため息をついてあきれていた。
「ころすころすころすころすころころこここお」
「怖いっ怒り心頭だな」
「私の魔法かいくぐってイチゴ盗むなんてお前ら以外にいないのだよ」
「「集めた理由それかよ!!!」」
クリスはふんっと鼻を鳴らした。
「といっても、あんたらが私にそんな挑発的なことするような命知らずだとも思わないわけよ」
みんなはじゃあなんで、という顔をした。
「お前たちがその気がなくても、必然的に手を貸してしまっている・・なんてこともあり得るでしょう?」
彼女たちは頭をひねって考えてみたが、首を横に振った。
「最近クリス村から出てないから、ないわ」
「せやな、わいもリンと・・あっ」
ラゴウは慌てて手で口を押えたがもう遅い。
すかさずクリスはラゴウの頭をつかんだ。
「リンと・・何?っていうかリンがどこにいるか知ってる?」
「し、知らへん、わいは別になんもいうてへんねん」
「へぇ?隠し通せるとでも?」
クリスの笑顔が怖い。
「よお、みんなそろって何してんのさ」
「リン!!!」
手にはイチゴ。
「おまえかぁぁ!!」
「え?なになに??」
クリスは魔法でだしたハリセンでリンを殴ろうとしたが、手を止めた。
「ん」
「どうしたクリス、やらないのか」
「リン、あんたいままでどこいってたの?」
「スィート・スィート・フルーティアっていう次元世界で果物狩りしてた」
リンの腰にはたくさんの果物でいっぱいだった。
「どうりで、私のイチゴに劣ると思ったわ」
傲慢・・。
「イチゴがどうしたって?」
「誰かが私のイチゴを食った」
リンの手に持っていたイチゴをクリスは奪いながら憤慨した。
「あ・・俺の」
「リンじゃないでしょ?私の恐ろしさ知ってるものね」
「まぁな、てかあれじゃねえの?イチゴ泥棒」
「捕まったって新聞に書いていたでしょ」
「あれ、片方だろ?」
みんなはリンのほうを見て口をぽかんっと開けた。
「え?しらねえの?うさわじゃ二人でつるんでいたらしいぜ」
こういう悪な情報は悪魔のほうが耳聡い。
特に女の子にもてるリンはそういう系のほうが知っている。
「そいつね、きっと・・ふふ。私のイチゴに目と手をつけるなんてね」
みんなは犯人に同情した。
「でもそうね一回目は許してあげる」
クリスが珍しくおおらかなので、リンが笑った。
「なに?あのねぇ、油断していたとはいえ、この私の結界をもぐりこんだのよ?そこは評価してやるべきだと思うわけ」
「確かに、クリスの結界に入れるやつなんてそうそういないもんな、で?二度目は?」
リンのコメントにヴァニラは疑問を述べた。
「二度はないでしょう、クリスさんも本格的に結界張るのでしょう?」
「うん、でもまぁ、私に考えがあるわ」
「考え?」
クリスはうなづくと、にやりと笑った。
「簡単よ、一晩中見張るのよ!リンが」
「俺かい」
「長いお説教と、一瞬の死と、雑用どれがいい?」
「雑用」
「よろしい、じゃ、頼んだ」
自分たちが呼ばれた意味ないんじゃないだろうか、とそう思わずにはいられない12神であった。