上
「クリスさん、少しいいですか?」
「ん?」
ヴァニラがクリスに話しかける。
「かしこまって何?見合いならいやよ」
「いいえ、そうではないのですが・・天界の天使をクリス村で保護してほしいとのことです」
「へぇ、別にいいけど?」
「そうですか・・」
ヴァニラは横にずれると後ろには淡いピンク色の髪の毛をふわっと伸ばしたエンジェルがいた。彼女はクリスと目が合うとにっこりと愛嬌のある笑みを浮かべた。クリスは好感を持ち歓迎した。
「ミルフィ・ハニーっていいます!クリス様に迎えていただき感謝でございます!!」
「あなたの家はここね」
地図を渡し村の条約について説明をした。
「あわわ、目が回りました」
「ゆっくり覚えていけばいいわよ」
「はい!がんばります!」
クリスは微笑んで見送った。
「さてと、今日はケーキでも作りましょうか」
クリスは冷蔵庫を開けた
「あ、ない」
イチゴが切れていた。
クリスは自分の自慢の農業畑に行き、イチゴを採りに出かけた。
「あ~」
まだ採りごろではなかった。
とれないこともないが、クリスはいまだというタイミングでないとつみたくない主義だった。
「クグリ」
クリスはクグリを呼び出した。
「天界でイチゴ買ってきて」
「はい」
すぅっと消えた従者を見送ることもなくクリスは腕を組んで今日の飲み物を何にするか考えていた。
「・・・・ん?」
天界お見通し新聞紙を手に取る。
「なぞの『イチゴ泥棒ついに逮捕』・・イチゴ泥棒?」
天界にもくだらない泥棒がいたものだ。
「クリスなにみてんの」
「あら、ラブ・・新聞をちょっとね」
「あぁ、それ?知ってるよー天界ならず地界人間界魔界幻獣界のイチゴというイチゴをとりつくすっていう、変な泥棒だよね」
「そうね、変ね」
ラブがクリスの畑のあるほうを見た。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
クリスは新聞を投げ捨てた。
「何?」
「やー、クリスも気をつけたらいいんじゃないかな」
「何に?」
「泥棒」
クリスはラブを見て鼻で笑った。
「私を誰だと思ってるの?っというかイチゴ泥棒捕まってるじゃない」
「そうだけどねぇ」
含みのある笑みを浮かべたラブはクリスが何か問う前に時空を移動して消え去った。
(わが娘ながら、読めないわね)
それでも負ける気はしない。
「・・・・一応魔法かけときましょ」
扉を開け外に出ると、申し訳なさそうな顔でクグリがたっていた。手には何もない。
「クグリ?」
「申し訳ありません、天界にもどこにもイチゴが無くて・・」
「あぁ、新聞で見たわ泥棒のせいでしょ?仕方ないわ、明日にしましょ。戻っていいわ」
「はい・・」
クリスはおやつ時間ごろに来るであろうリンに、何をかわりに渡すか考えながらキッチンに立つ。
「なんか用?」
クリスの背後にはクスリ。彼女は微笑むとクリスに紙飛行機を飛ばした。
「最近は天界も物騒なものでね。異次元に進出し、最高神として君臨しようとする輩も増えてきたのよ」
「時空管理者がそのためにいるんじゃない」
「まだロットを扱えきれていないわ」
「そういうふりをしてるだけじゃなくて?」
「あら、そう思うの?」
「まぁいいわ、で?」
クリスは紙飛行機の紙を広げた。
「この記録と私に何の関係あるわけ?」
「リンとお前はいわば表裏一体・・あまり行き過ぎた行為を控えるように注意するのも相対の我らの務め。その記録にあるように、リンは異次元を飛びすぎてる」
「飼い犬をしつけるのも大変だわ」
「リンにかぎってはないとは思うけれど、頼むわね」
「・・・・リンねぇ」
消えたクスリの残像を見ながらクリスはつぶやいた。
「私とは違うものね」
クリスは白い純白の翼を広げた。
「相対ね」
一枚の羽を残し、彼女は時空を飛んでいった。
この後に起きる事件も知らず。