上
「ヒカリ、天界に出て行ったんだって?」
クリスにリンが問えば、クリスは頷いた。
「天界を知り尽くしたいんだって、いずれあの子には『知恵の神』の称号を与えるつもり・・あぁ、そういえばリン、空に『力の神』の称号譲ったんだって?ありがと」
「いいよ、別に。これでやっかみに喧嘩うられないしな」
豪快に笑うリンにクリスはお菓子を渡してやる。
「ラブは『時の女神』名雪は『技術の神』空は『力の神』」
「カルミアは『酒の神』アメリアスは『呪いの神』千鳥は『機械の神』」
それぞれきちんと神の称号を手に入れた。
称号は身分証明のようなもの、称号もない神は思った以上にたいしたことない。
そして、それに当てはまるのが
「・・・・マリー」
リンは哀れむような目でマリーを見た。
ノー称号。
「・・・・ヒカリは言っとくけど、自分で辞退したから、まだ早いからって」
「分かってるさ」
リンはお菓子を口に入れながら悩んだ。
子の不始末は親の不始末。
マリーが弱いのは、リンのせい。あながち間違っちゃいないが対処しなければほかからちょっかいかけられるだろう、それも面倒だ。
「さて、どうしたものか」
リンの悩みとは裏腹に当の本人は天界のアイドルになるの~なんて、大して美しくないのに着飾って毎日遊んでばかりいた。
「ニートの娘を持った気分だ」
「実際そうじゃないの?」
クリスは冷たく言い放つ。
「リンはね、放置しすぎなのよ、たまにフォローしなきゃ」
「だりぃ」
「即答かよ」
クリスは指をならすと、どこからもなく本が落ちてきた、それをキャッチするとぱららーっと本をめくる。
「称号リスト・・長生きな神も隠居生活からそろそろくたばり始めてるみたいね、称号結構あいてるわよ・・でも、そうね」
文章を追っていた目が閉じた。
「マリーが取れそうな称号はないわ」
「逆にすごいな」
「すごかないって、いや、すごいか『馬鹿の神』ですらできないんだもの」
「・・・・・」
リンはもはや、何もいえなくなった。
「私なら縁切るけど」
「お前ならな」
リンは紅茶で口を潤わせ、立ち上がった。
「マリーを少しの間アクに預ける」
「アクに?」
「あぁ、あいつならマリーもまだ言うこと聞くし、運がよければアクの称号を譲ってもらえるかもだろう?」
「アクの称号ったって『魔界の貴婦人』じゃない、神じゃないし、アク自身の称号って正しくは『化粧の淫魔』じゃない」
「もう、この際なんでもいいだろう」
「リンも十分放棄してるって」