別れ
「大天師様と大魔師様?」
クリスが首を傾げながら聞くと二人は微笑んだ。
「そうそう」
「うわ、これ以上に無い紫髪の似合う女」
リンの頭をわしわし撫でながら姉御肌の女性が良い笑顔で言った。属性で言うなら悪魔らしいけど、なんというかどちらかというと、明るいタイプだ。
「なんなんだよ」
リンがわしゃわしゃしている手を払いのけた。
「おぉ、反抗期か?」
「いや、誰でもいやだろ」
大魔師の名を、『ルルー』といい、大天師の名を『ララー』といった。二人は相反する眷属だと言うのに
ビックリするぐらい仲が本当に良かった。
故に、基本人見知りをするクリスとリンも、表面だけではなく、次第に心の底から打ち解けていったのであった。
「おーい、クリス・リンおいで」
「なに?ルルー」
ララーが杖を片手に何か力を溜め込んでいた。光が大地から発せられ杖に凝縮される。
「さぁ、行きましょう!!」
行先も言わず何かを発動した。
光が一瞬にして大きく輝き、消え去ったときには四人は見知らぬ土地に居た。
「ココ何処?」
「ココはアメリカだな」
「そうね、アメリカね」
「アメリカってー……」
クリスが二人のお気楽な神様をみた。
「人界だ」
人がクリスたちがもといたときよりも、遥かに時は進んでおり、建物も木でだけでなく、コンクリートでできたものや、馬車ではなく、車に変わっていた。
「学校では聞いていたけど、やはり人界は私達の居る空間とは時間の流れが違うわね」
「壊したら面白そうだ」
「「リン」」
「嘘だよ」
地に降りると同時に、二人の神の服がドレスからここの土地の人たちが着ている服と同じ服に変わった。クリスとリンもソレにならう。
「くんくん」
リンが犬のように鼻を鳴らす。
「いい匂い」
公園にあるお店の目の前でリンはよだれをたらしてソレを眺めていた。
「リンちゃんヤメイ!」
頭を叩く。
「おやお嬢さんたち、元気だねぇ。よかったらお一つドウゾ」
若い夫婦のやっている店だったらしく、二人は同意と善良でホットドックを二つクリスとリンにあげた。二人はとても良い笑顔になった。
「ありがとう!」
「すみません、お金払います。いくらですか?」
ララーが財布を片手にお店の人に聞けば、お店の人は微笑んで手を振った。
「いいえ御代なんて、こんな素敵な笑顔で食べてもらえるのなら儲けものです」
ルルーとララーも微笑んでお店の人にお礼を言った。
「で、なんで連れてきてくれたの?」
クリスは買ってもらったアイス片手に二人に聞いた。
「うん?いや意味ないけど」
「は」
ララーは魔法で作り出した扇子で自分を仰ぎながら笑った。
「いや、将来大出世するお二人とこうしてデートしたら、永い時の中での自慢話の一つになろうかとおもってね」
「話題づくりのために連れてきたの?」
「ふふ」
ララーはルルーと見合って笑った。
「帰ろうよ」
「うん」
クリスとリンは手を繋いで自分の家である神殿へと帰っていっていた。
「ねーリン気がついた?」
「気がついた。最初に」
二人は笑顔でお互いの顔を見合った。
「じいちゃんも、ばあちゃんも幸せそうだったな」
「うん、相変わらずさえない人生送ってるみたいだけどね」
因果応報
また、会えますように……。
正直彼女たちは自分たちが上がった理由を忘れています。