中
クリスの育てる娘はどれも、普通の天使には到底及ばない美しさを兼ね備えていた。その理由はクリスが美の女神の称号を持っているゆえの影響と思われるが、とにかく美しい。
只一人、名雪を除いて。
「・・・・こいつ、いつからお面被ってたっけ」
リンは木陰で本を嗜むお面少女を見ながらクリスに話しかけた。
クリスお気に入りで自慢の庭園で自分の村の子どもらと一緒に編み物をしていたクリスは、手を止めることなく即答した。
「そういうものよ」
「まじか」
子ども達は時間を見ると、手を置いてクリスの服を引っ張った。
「おかしーおやつー」
「クリスのおやつーおやつー」
リンはソレを見て、同じく時計を見た。
「三時か・・名雪ってさ、オレのとこのアメリアスと仲いいじゃないか?あいつらそろいもそろって無愛想っつーか、反応薄いよな」
「育てたのは私達でも、創造したのは私達じゃないし、あの子達も同等に扱われているけれど、階級的に見たらバラバラだものね」
天使レベルの子もいれば神レベル、それ以上のこもいるが、クリスたちと同等レベルは居ないので、あれだが、ちゃんと両親に育てられていれば出会うことすらなかったであろう娘達だ。
レベルも鍛えれば上がるから、階級制度も下克上すれば関係ないが・・。
「名雪」
アメリアスは名雪の隣に座ってその肩に触れた。
「ん」
「その本貸して」
「いいよ・・」
二人の貸し借りを見ながら、クリスはお菓子を用意しながらリンに言った。
「私の娘は共通するところあるけど、あんたの娘皆無よね」
「あるよ、そっちだってないだろう」
「皆共通して賢いもの」
「それはねぇけど、俺の娘だって共通するものあるぞ」
「なに?」
お菓子に手を伸ばしてにかっと笑った。
「戦闘不能になっても五分で即復活だ」
「そりゃすごい」
クリスは紅茶をつくりながら流した。
「・・・・あ、ねぇ戦闘馬鹿のリン?」
「戦闘馬鹿は余計だ」
「空の相手もしてくれない?あのこ魔法より体動かすほうが向いてるみたいなの」
「マリー相手にさせればいいんじゃないか、あいつムカつくぐらい挑発してくるのに逃げ足はやいし、訓練になるぞ」
「いやだよ」
空がリンの後ろで否定した。
リンは振り返ると、よっと手を上げた。
「あいつ、弱いじゃん」
子ども達に混じってお菓子を啄ばむ。
「三分で終わるよ」
「なによ!年下の分際で生意気」
「げ」
たまたまクリス庭園前を通ったマリーに聞かれたらしく、酷く憤慨していた。
「あーはいはい悪かったな」
空の悠然とした態度に腹が立ったのか、マリーはしょぼい魔法力で空の顔面に気孔弾をぶつけた。
「ぶ!」
「おーほほほ!ざぁみそら!!」
「あいつアクに似てきたな」
「そうね」
空は逃亡を図ったマリー目掛けて高く跳び上がり、そのままカカト落としで撃沈させた。
ソレを見たクリスは紅茶を飲みながらリンに言った。
「三分ももたなかったわね」
「あいつは俺も認める雑魚だからな」
でもヤッパリ復活は早かった。
「おぼえてなさいよー!」
「はぁ」