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クリス村 休止中~  作者: 綴何
子育ての章
64/105

下1


 家の横の広大な農場での仕事を終え、優雅に紅茶を飲むクリス。

「クリス・・」

 ヒカリがおずおずと建物の影から顔を見せた。

「ん、どうしたの?」

 コップを置きながら訊ねれば、ヒカリは頬を染めながら聞いた。

「お膝の上に、すわっていい?」

「いいよ、おいで!」

 ヒカリは嬉しそうにクリスの膝の上に座った。クリスは嬉しそうなヒカリの頭を撫でながら、疑問を口にした。

「どうして、私がオリジナルってわかったの?」

 赤ちゃん達のお世話や、家の掃除、お菓子つくりをしているクリスは、クリスのコピーであり、ここでのんびりしていたクリスがオリジナルだった。

「分かるよ、だってお母さんだもん」

 ヒカリは、春の木漏れ日のような暖かく輝かしい微笑を見せた。

「・・・ヒカリは、そのうち春の女神の称号を手に入れるかもしれないわね」

「?」

 クリスはヒカリの頭を撫でた。

「ヒカリ」

「なぁに?」

「アナタは賢いから、先に教えておくわね」

 クリスはヒカリに耳打ちした。

「神は神であるが、神は神を越えれず、人より優れている人、それが神」

 ヒカリはクリスの顔を不思議そうに見たが、クリスは微笑んで紅茶を飲んだ。意味は自ずと分かるだろう。そういう顔で

「天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らずという言葉を残した人間が居たわね。大きな挫折や苦しみ、罪を認め、受け入れた本当の人間らしい言葉だわ」

 風がそよそよと吹き、花びらが散った。

「果てしなく時間は流れるな、誰か特定なわけでなく。永久に」

「リン」

 木の上からリンの長い紫色の髪の毛が垂れる。

「俺さ、たまに思うんだ」

「何を」

「お前さ、なぁーに考えてんのかなって」

 葉っぱで作った草の妖精を手のひらから放ちながらリンは消えた。

 クリスは鼻で笑った。

「何を考えてるかって?おかしなこと聞くね」

 クリスは指を鳴らして葉っぱの妖精を花の妖精に変えた。

「考えない『我』なんて有り得ないわ」

 ヒカリは温かい日差しに眠気に襲われたらしく、目をこすってクリスにもたれた。

「よしよし」

 優しくその頭をなで、クリスは子守唄を静かに歌った。

「天界ほど、曖昧なものはないのよ、リン」


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