下
「たかいたかーい」
リンは事務的な声でそういいながら10回建てのビルと同じ高さぐらいに赤ちゃんを投げてはキャッチして、投げては受け止めた。
繰り返し繰り返し投げる受ける。
「リンさま・・もう少し柔らかく」
バードが手をおろおろとさせながらリンに声をかける。
そんなバードの心配とは裏腹に、リンは二カッと笑った。
「いいんだって、クリス村の重力にならすにはコレぐらいが丁度いいんだって」
「で、でも」
「よっと」
ぴゅーん・・
「ち!?」
毎回恒例の飛行中だった鉄龍とマリーがぶつかった。
「あ」
ごっつん!!
「ち~~」
ずぼ!
鉄龍が地面に落ちて埋まった。
「とと」
リンはマリーを受け止め、身体の360度回しても、全然無傷だった、
「おぉーお前、金属性か?」
笑うリンに対して赤ちゃんは大泣きを始めた。
対してクリス
「ヒカリ~魔法を使うときはね~両手使うのがいいよ。両手使って~そう広げてー」
手を振って喜ぶヒカリにクリスは魔法の基礎動作を教えていた。
クグリはその様子を見ながら汗を流した。
「マスター・・」
「んー?そうそう、キャッキャって手を振らなくてイーから」
「まだ早いのではないでしょうか」
「いいのよ、動作は今のうちから慣れさせたほうが後々楽でしょ?私が」
ヒカリは両手を広げてぶんぶんふってはクリスにピタッと止められた。
無茶な二人を遠くから眺めながらヴァニラは溜息をつかざるを得なかった。
「ヴァニラさん?」
旦那様が歩いてヴァニラの横に立った。
色々な話し合いのもと、クリス村に来てくれると快く言ってくれた彼を、村長であるクリスたちは勿論認めた。
「どうかしましたか?」
「いえ、ちゃんと子育てできているのか心配で」
「あぁ」
クリスたちはけっこう我侭で、偏屈なくせに寛大、でも他人の我侭には厳しい。
そういった性格であった。
「・・・・りんさんはあぁ見えて手を焼いて育てたものには寛大になります、情がうつるのでしょう。問題は」
「クリス様ですか?」
「えぇ」
強いものにも、弱いものにも、博愛で優しく接し、愛の女神たる風貌を覗かせるが、彼女は処女神。
「何故だかクリスさんは自分の子孫を残すことを激しく拒絶しているのです」
「そうなのですか?」
「はい、何故だか本当に私には理解できませんわ・・ですからクリスさんがキチンと子を愛せるかが気になるところですわ・・」
毛皮を被るのは得意ですからね