中
「いくら私達が最強たって、回復アイテム禁止、回復魔法禁止な状態になったらさすがにキツイ・・ってか負けるのは目に見えてるじゃない?」
「そうだな」
クリスの美学・・負ける戦はする前に逃亡すべし。
「でもさ、だからって」
ちらちらと光が闇を照らす。
「人間界に降り立たなくても」
「人を隠すには人、天界にいると属性の問題ですぐばれるけど、人間界は私達みたいな属性ほぼないから、隠れるにはうってつけなのよ」
「ってとこまでヴァニラたちが考えないほど無知だと思わないけど」
「気配さえ気取られなきゃ、私達が何処にいるかなんてわからないわよ」
夜のレストランの食事を楽しみながら二人は流れる外の風景を見ていた。
排気ガスをふきまくる車が味気ない夜の街をカラフルに飾り、寄り添って歩くカップルはその関係がいつまでも続くと思っているかのように楽しそうだ。
「確かにそうかもしれないけど・・そういうこときいてんじゃなくてよ」
「分かってるわよ、いつまでも逃げてるつもりないわよ、対策考えてるって」
「本当かぁー?」
「そのうち考える」
レストランで出された食事を優雅に口に運ぶクリスをみて、リンは溜息ついた。
人間も、天使も、神も、悪魔も、精霊も・・けっこう同じような輩ばかりだ。同じようなことで悩み、考え、運命に左右される。
誰であれ、行動に移すのは己自身というわけか。
「リン?食べないの」
「もう喰った」
「あらそう、じゃあホテルとってきて」
「どこでもいいのか?」
「旅館でも良いわよ」
「・・・・・」
○○○
「クリスさんたち、いったい何処に行ってしまわれたのでしょう」
「せやな、リンは居るおもてんけどな」
ラゴウとヴァニラは二人の住宅を探したが、気配は一向にない。
と
魔法で移動してきたほかの女神達、顔を合わせ同時に首を横にフッタ。
「駄目だったわ、何処にもいない」
「なぁ、ウィルマ。あの二人の思考を辿るんもできひんかったん?」
「できない、何も考えずにワープしたみたい」
ウィルマの言葉にみんなは溜息つく。
「わてら、本気で逃げた二人を捕まえたことあったんかいな?」
「ありませんの。私達でも、できない話なのですわ」
「まぁまぁ、アイリーン、ラゴウ・・そう悲観することはない」
「自信おありのようですね、エレストさん、なにか打つ手でもあるんですか?」
「あるともさ・・ただ、一人ではできない、みんなの力が必要だ」
「?」
エレストは自信満々に笑った。
「今までの屈辱を、二倍にして返すことができる」
「はぁ、で、その方法というのは」
「準備ができたら教える、ではまた」
そのまま去っていった。
「あいつ、ほんまぁねちっこいやっちゃな」
「そうですね、ラゴウさんはさっぱりしすぎだと私は思いますけど」
「あ?」
「なんでもありません、エレストさんが何かしらの準備を済ますまで、お茶にでもしましょう」
「そうだな」
ラオが魔法で机と椅子を取り出す。
「・・ふと思ったんだが、クリスやリンを連れ戻せても、本人の意思がなければ意味が無いのではないだろうか」
「上には上の考えがあるのでしょう」
ヴァニラも魔法でポットを出して紅茶を作る。
「私達は命令どうりに動くだけですわ」
「そうね」
「でもクリスたちかわいそう」
ルミルカは正反対な意見を述べる、ルミは眉をひそめた。
「可哀想ったって、あの二人、十分好き勝手なことしたんだから、いい加減落ち着くべきよ」
「確かに」
それにはラッカも同意する。
栄光の冠はいまだ輝けないようだ。