上
「え?クリスって彼氏一人もいないの?」
クリス村の子ども達も、もう立派な大人になっていた。あの昔の可愛げな子どもはもういない・・。
村長宅の石垣にもたれながら井戸端会議をしていた。
「リリカは彼氏いるわけ?」
「いないわ」
「うそばっかり!あたし知ってるわよートーマに告白されてたじゃない」
「リコリス!」
「へぇ?トーマはいい子じゃない」
「イヤよ、あんなガキっぽい男!付き合うならネルみたいなのがいいわ」
クリスは二人の話を聞きながらハリネズミの針を磨いていた。
・・勿論ただのハリネズミではない。
「はい、ハリロン綺麗になったよ」
「きゅう!」
ハリロンは嬉しそうにトコトコと歩いていった。その上に何かが落ちた。
ゴーン!!
「三時ね」
「うん、あっと、いっけない・・もう帰るわ!じゃねクリス、リコリス!」
「ばいばーい」
ハリロンがぶつかったものに対して怒りを表していた。
「本当、硬い体してるよね・・リンちゃんのモモンガ」
「テツロンは名前のどうり、鉄でできてるようなものだからね」
クリスはハリネズミとモモンガの目の前に、出来立てのクッキーを置いた。
「仲良くするならあげるけど?」
二匹仲良く肩を組んだ。
「ふふ・・クリスのクッキーは強いわね」
「リコリスは?」
「?」
クリスは庭においてある椅子に座った。
「本当は相談にのってほしいことがあるんでしょ?」
「・・さすがクリスね」
リコリスは苦笑いを浮かべて、クリスに誘われ、同じくクリス宅の椅子に座った。
「・・私ね・・」
「クリスーちょっといいか?」
どっかぁん!!!
「リンっちゃぁぁああ!?」
クリスの魔法で撃沈したリンをリコリスは傍に駆け寄り心配する。
「空気読め」
「???」
体中についた焦げをはらいながらリンも椅子に座った。
「なんかあったの?」
「あ、あの・・私実はね」
リコリスは頬を染めながらもじもじといった。
「マキャベリに告白・・っていうかプロポーズされたの」
「ほう」
「でも、彼天界の世界史を作るって・・それが夢で、クリス村を出るって言うの」
「そうなの?知らなかったわ」
「クリスそのことで俺来たんだったんだけど」
リンは身構えながら言った。
「天界承認通行書がほしんだと」
「本格的に見て回る気なのね」
リコリスは顔を下げた。
「そうなの・・私彼の邪魔はしたくないけど・・私にはクリス村を出る勇気はないの」
「まぁ、クリス村から出たら俺らの庇護下から離れるしなぁ」
「死亡フラグは高いしね」
三人は黙った。
「・・私、マキャベリの帰りを待つ自信もないの」
「ついて行く自信も、待つ自信もないってか」
「そう」
クリスは魔法でポットと紅茶を出して、お茶を入れ始めた。
「仕方ないわね」
「おぉ、何かいい案でもあるのか?」
リンの言葉にクリスは「は?」といった。
「いい案も悪い案も・・一つしかないじゃない、すっぱり別れるしかないわ」
「!?」
「だって、どうしようもないじゃない」
「少しは考えてやれよ」
「え~」
クリスは紅茶を飲んで、めんどくさそうな顔を露骨にして見せた。
「私は愛と豊穣と平和と美と知の女神だけどね~恋の女神じゃないの」
「いっぱい称号あるな!?・・っていうか平和は嘘だろ」
パチン。
「いてででででで!?何!?姿の見えない何かに噛みつかれてる!?」
「やっぱり、駄目なのかな」
しゅん、とリコリスはうな垂れた。
「・・・・・・」
クリスはそんなリコリスを見て、溜息をついてみた。
「シュミレーションしてみる?」
「え?」
指先をクルクル回すとブラックホールが生まれた。
「この先は亜空間に繋がっていて、何をするのも自由・・そこに私とリンの魔力を注ぎ、RPGゲームを作るの、そこでなら何が起きても大丈夫よ」
「うわ、めんどくさ・・いででで!!?」
「クリス・・ありがとう!!」
リコリスはうるうるさせながらクリスに抱きついた。
クリスはそのまま指を回し、移動した。