下
「誰の料理から召し上がりますか?」
エリンの言葉に、アクはクスリを見た。
「そうね、ここでいきなりクリスのを食べちゃったら、面白くないわね・・じゃあ・・地味なルカさんの頂きましょうか」
「あたしも、クスリの意見に賛成よ」
「そう?」
ルカが地味といわれたショックと、緊張とで沈んだテンションのまま料理を運んできた。
「・・・・・ぱく」
二人がルカの目の前で食事する。
「あー・・?」
「そうね、美味しいわよ・・ただ風の料理を出されても良く分からないわ」
イマイチな反応だった。
「じゃあ、次はルミでもいっとく?」
「いっとく?って・・嫌な感じね」
ルミも料理を出す。
「薄いわ」
「はやっ!?」
クスリの一言で流された。
「エレストは最後で、次アイリーン」
「アイリーンさんの料理・・美味しそうですね」
「えぇ、よくウィルマの分も作っていますですの」
置かれた料理に口を運ぶ。
彩りに飾られたメインに、バランスを考えた野菜の盛り合わせ・・美味しく頂きました。
「ごちそうさま」
アクがそういって満足そうに笑った。
「高評価です、今のところアイリーンさんが一位ですか?」
エリンの質問にクスリは微笑んだ。
「では、次ラッカさん」
「あら、おいしそう」
「鍋か」
肉と野菜がふんだんに使われた鍋には味がシッカリしみこんでおり、美味であった。
「あー、おいしかったわ」
「そうね」
クスリは微笑みながらアクの口元を拭いた。
「次は、リーファでもいっとくか」
「でもってなによ!」
持ってきたものは黒焦げのぷすぷす口から泡吹いているアンコウもどき。
「・・・・・・・・」
クスリは笑顔で皿をアクのほうに横流しした。
「てぇええ!?」
「アクちゃん、悪魔でしょう?大丈夫・・ね?私を信じて」
「いやいやっつってもアタシ下級悪魔だしさぁ・・それにその皿持って人の顔を掴むのやめてくれないかな?怖い・・って!?ぎゃああああああああああ」
強制終了。
「モー何よぉ!人の料理をぎゃーって!!」
「じゃあアナタ自分の料理食べる?」
モザイクかかったソレをクスリは黒笑みでリーファに突きつけた。
「ご、ごめんなさ・・」
「早くも波乱の予感です・・分かりきったことですけど」
エリンの言葉に傍観していたお客さんが頷く。
「私のを食え」
そういって、クスリとアクの目の前に新たな生命の出来損ないをエレストは堂々とおいた。
「・・・・・・・・・・・」
クスリは黙って机の上から落とした。
「チッ」
「ごめんなさい、手が滑ってしまって・・ふふふ」
「では、お口直しにワタクシのをドウゾ」
ヴァニラがお皿を置いた。
「アクちゃん、起きて」
頬を叩いて起こす。
「ぷっぷ・・なんとかかぁー旨そうだね」
アクは喜んで口の中に入れた。
・・・・そして黙った。
「おいしいっちゃ美味しいんだけど」
アクが首を捻った。
「濃い・・てか味がひつこい」
カキン
何故かアクでなく、傍観客が氷づけにされた。
エリンはひきながらも視界を続ける。
「では、次にリンさん!」
リンが普通のテンションで「ん」と料理をおいた。
「なんだ?チャーハンか」
口に入れる。
「・・・・・・・・・・」
「どうなの?アクちゃん」
アクがリンを見た。
「お前」
「?」
リンが背中を見せた。
「ふ・・感想を言うのは、野暮ってもんだぜ」
カッコよく去ろうとしたが、クスリが一口食べて一言。
「普通に不味いわ」
リンは走って逃亡を図った。
「・・・・えー、では仕切りなおして最後に優勝候補のクリスさんの料理を!」
「ないわよ」
クリスがきょとんとしながら言った。
「え?」
「さっきリンが食べちゃった。冷めちゃったから・・いっかなーって」
「じゃぁ、優勝は・・」
「リーン!!!楽しみにしてたのに!」
「あら、まってよアクちゃん!!」
怒りに駆け出したアクを追ってクスリも去ってしまった。
「えー・・あのぉ・・優勝者は・・?」
「私でしょ」
クリスは笑顔で言った。
「私の料理で二人は消えたのよ?」
「そういうわけにもいきませんよ!」
ヴァニラが叫んだ。
「でもヴァニラさんに優勝は無いけどな」
村人の言葉に反応
「でしたら、私の料理を皆さんにふるいましょう!!」
「えー」
「なんですか!!」
・・終わり
いつもの如くオチなし