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クリス村 休止中~  作者: 綴何
天界の章
5/105

「彼女らがあの噂の」

「といいますと?」

 神は大神と天上界にある神殿でのんびり会話していた。

「噂によればあの二人、私達『大神』よりも上らしい」

「なんと」

「それでは」

 大神二人は二人の若い神に羽のような手紙を取り出し見せた。それは『大神天魔師』からの勅命であった。

 クリスとリン、何があっても守るように。

「彼女らはまだこの世界を拒絶しておるらしいのじゃ」

「故に彼女らを殺し、力を奪おうと考える不埒者も最上界におるらしい」

「では」

 神二人は首を振った。

「我らの役目はもう終わりですね」

「あとは私達にお任せください。私達ももう齢老いました、コレが恐らく最期の仕事になりましょう」

「大神様なら、我らも安心です。どうかお願いいたします」

 年老いた大神は笑顔で頷いた。クリスたちを狙うものは少なくとも神以上の力を持つ、もう二人の若い神が二人を隠し守りきることはできないのである。

「一つ聞いてもよろしいですか?」

「ドウゾ」

「あの子達の、親はもしや大神天魔師様ですか?」

 がささ

 木々が揺れた。

「誰かそこに居るのか」

 男神がそういうとボト、天界虫が木から落ちた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「ココの天界虫は大きいですなぁ」

「えぇ、本当に」

 虫談話がはじまり、その隙にリンは木からこっそり飛び降り忍者のように素早く走りその場から離れた。あの木に天界虫がいてよかったとおもいながら。



「あらリンちゃん、そんなに急いでどうしたの」

 走っていくリンに足をかけてこけらせたクリスは笑顔で聞いた。

「あちち!お、クリス」

 しかしリンも気にしない。

「大変だ、俺たち……」

「クリス、リン」

「うぉ!?」

 突如現れた大神にビックリするリンはシェーのポーズで固まった。

(へぇ、大神クラスになれば、移動も翼をださずに一瞬で移動できるのね……)

 クリスは笑顔で会釈をした。

「大神様が何か御用でしょうか」

「うむ」

 老いた神は温和な空気をまとって微笑んだ。

「もう一回あがろうか」

「はい」

「はい……ってぇええぇ!?」

 クリスは既にこの結果になることを予測していたのであった。

 なので、あっさりとした答えをしたクリスに驚いたリンは金魚のように口をパクパクしたあと、苦笑いを作ったのである。

 リンは一生クリスには敵わないだろうなと思ったからということでもある。


 神様の上、大神様のところでは、学校という制度は無く、師を自ら探し、術式や魔方陣、武術鍛錬を学ぶのであった。

 無論、彼女らは師を探す必要は無いのだから楽なものである。大神様のところでは、まず翼を自由にコントロールすることを学んだ。

 ここでも悪魔と天使は別れて暮らしていたが、大神様はクリスとリンを常に二人一緒に暮らしていた。

「精霊よ、我名を讃えよ」

 そしてこの界ではパートナーに精霊がついた。

 精霊族界からやってきた精霊とともに精神ともども鍛えるという方針らしいが……

「クリスーあそびましょう」

「くりすーお菓子作って~」

「クリス~西山に綺麗な花が咲いてるのを見つけたの~」

 気まぐれで幼稚な精霊は中々言うことを聞かない。それどころか勉強の邪魔をするのである。

 クリスはそんな妖精に厳しく当たらず、やんわりと諭した。

「コレが終わったら遊びに行きましょう。そうしたらミンナにクッキー焼いてあげるわ」

「「わーい」」


ち・な・み・に

 

「うわぁあ、リンだー逃げろー」

 クリスの傍に居た妖精が一気に消え去っていった。

 リンは妖精にも嫌われていた。

「リン、何処行ってたの?」

「みんなに度胸比べだっていわれて刻老山にいってた」

「あぁあの長時間居たら老人になってしまうといわれる?」

「ならなかったぜ」

 しかし服は劣化していた。

(リンを見るに、私達そうとうの力を持っているんじゃないかしら)

 クリスはそう考えた。

 力があればあるほど自分の見た目も容易に変えることも、別の時空に翼を使わずに一瞬でいくことも可能だ。そして、多少の呪いなら跳ね返すこともできる。

「ねぇリンちゃん、何か憑かれてなーい?」

「別に?」

 リンは精霊によくきらわれている、しかし最近では全く気にしていないようだ。

 昔はあんなに泣き虫だったのに今ではズボラ。

「環境ってだいじなのね」

「ん?」

「今日のおやつはバナナでいーい?」

「嫌だよ」

 クリスはそういいながらリンにかけられた弱い呪いを祓った。

「で、リン?あんた悪魔に喧嘩売られて百倍返しにしたんだって?」

「あぁ、問題ないぜ」

「何が問題ないのか十一文字以内で答えてもらいたいものね」

「売られたから買ったんだ」

 本当に十一文字で答えたリンにクリスは溜息ついた。

「だから、言ってるじゃない、今度から喧嘩売られたときには範囲指定して結界張らなきゃ。また大神様にばれてやんわりと亀の上で正座させられるわよ」

「慣れた」

「どんだけ怒られてんのよ」

 チョップだけじゃ痛くないからクリスは持っていたお菓子百選辞書の角をリンの頭にぶつけた。

 ぷしゅー

 血の噴水が吹く。

「あーらら」

「いやいやお前がやったから」

「治せばいいんでしょ、治れ~」

 クリスから淡い水色の光が出るとリンの傷は跡形も無く治った。

「今度からお金取るから」

「今回はお前が悪いのに!?」

「劣化した服も直してあげたでしょう」

「横暴!!」

 クリスは微笑んだ。

「あのねぇ、世の中甘くないのよ?」

「……」


 世のシビアさを学んだリンであった。

 


神の身分も強さも上になればなるほど強く賢く恐れられる。

下の者にとって不利な制度も多々ある。


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