異
野菜や人間は成長が早い、神々からすれば、その成長の早さは一瞬だ・・
時間の流れを緩やかにしているこのクリス村でも、子どもから青年、青年から大人に成長を遂げていた・・。
「よっ!クリス」
クリス村創立につれてきたエースはもう立派な青年になっていて、最近料理を作ることにはまっていた。
「あら、エース」
野菜や花に水をやりながらクリスが振り返った。
「・・・・ねぇ、エース」
「うん?」
エースはガーデニングテーブルの上において炎の形をしたクッキーをもぐもぐ食べていた。
「それ・・」
「あぁ?駄目だったか?」
もぐもぐ・・
クリスは変なものを見るような目でエースをみた。
「なんだよ?」
「おー、相変わらずクリスの畑は綺麗なー・・ん?」
リンが歩いてくると机の上にあるクッキーを見た。
「炎の精霊用の餌か・・クリスってほんっと精霊とかに好かれるな」
と、エースと眼が合う。
「お前、喰ったの?」
クッキーを指差す。
「悪いのか??」
テレポートでヴァニラが現れた。
「お、ヴァニラ」
「クリスさん、リンさん、これ私の結婚式の招待状ですわ・・私まだ準備がありますから失礼しま―――あら?」
ヴァニラがクッキーを片手に持つエースを見た。
「それ、食べる気なら、食べるのはお止しなさい、人間で言う犬のおやつを食べるようなものですよ」
「もう食べちゃったわよ」
エースが顔を青ざめた。
「犬!?」
「モノの例えです・・でも、精霊専用のおやつを食べた人間の話はきいたことないですね」
「未曾有の恥話だな、言いふらしてやるよ」
「止めろよ!」
「ふぅ」
クリスはジョウロを机の上に置きながら微笑んだ。
「無知って怖いわね」
「微笑みながら馬鹿にするな!!う!?」
「エース?!」
咽喉を押さえて倒れた。
「かっあ・・が!?」
ぼう!!身体が発火した。
「≪水≫!」
クリスが指を鳴らし、水をエースに浴びせたが炎は消えない・・
「・・・・≪停止≫!≪回復≫!」
体中を燃やさないように炎の侵食を止めようとしたが、止まる気配は無かった、仕方なく細胞が燃えつくされる前に回復魔法を施す。
「ラオでも呼ぶか」
「無駄よ」
クリスが即答した。
「自立型の炎はラオでも操れないはずよ・・だって私の魔法きかないもん」
「クリスさんのプライドなんてどうでもいいです、リンさん」
「はいよ」
リンがさると、ヴァニラは氷の力でエースを囲んだ・・すぐさま蒸発・・水に変わる
「うーわー私の庭が穢れる・・」
「そんな悠長なこといっていないで、クリスさんもほら!」
クリスも両手を広げエースに回復魔法をかける
「おーい、つれてきたぞ」
ラオはエースを見て驚いた。
「良く生きているな」
「「いいから」」
MPがへってきて不機嫌なクリスとヴァニラはラオをせかした。
「・・怖い」
ラオは怯えながら片手をエースに向けた。
「≪炎の神ラオが命ずる、火の契約に従い、我名を聞け≫!!今すぐ鎮火せよ!」
炎が揺らいだ。が、すぐに燃え盛った。
「強火です」
リンの感想にクリスはイラっときたので飛び蹴りでリンをぶっ飛ばした。
「ラオ!どうなってんの!?」
「ふむ、分からん」
ラオの返事にヴァニラはイラッときたので飛び蹴りでぶっ飛ばした。
「ねぇ、さっきから何してるの?」
「焦げ臭いよ?」
「ルミルカ!」
双子はきょとんとクリスたちを眺めていた。
「エースが炎の精霊のクッキー食べちゃって発火してるの」
「え!?食べたの!?」
「どうにかできない?!」
「でも、私の力じゃ煽るだけだし、ヴァニラさんで無理じゃルミも・・」
ルミは困った顔をした片割れをみて、エースを見て、ヴァニラを見て、クリスを見た。
「クッキー食べて発火したなら吐かせたら良いんじゃない?」
ぶわっ!!
クリス村中にあった水が浮き上がりルミの上に天女の羽衣のように漂った。
「エース苦しいけど、我慢しなさいよね」
ルミは両手をエースに向けた。
「水の神、ルミが命ずる炎を打ち消しなさい!」
水がエースを囲い、水の玉に閉じ込めた。
轟轟と水が唸る。
「おぉ、水が炎に勝った」
復活したリンが関心したような声を上げた。
「ルカ、酸素」
「うん」
水の隙間をかいくぐり口に酸素を持っていく。
「よくこんな芸当できるなぁ」
「すごいよな」
「悪魔眷属はだまらっしゃい」
ヴァニラに怒られ黙るリンとラオ
「どう!?」
ルミが水を切ると、エースが倒れた。
「完全に鎮火できたみたいね・・生きてる?」
「うん、大丈夫だよ」
ルカが微笑んだ。
次の日
「なぁ、クリス」
「ん?あーエース」
ぴんぴんしているエースが鼻の頭をかきながら、困った顔をしていた。
「俺さ」
「何?」
エースが片手を挙げると、こぽぽぽ・・水が溢れた。
「水、出せるようになった・・」
「・・・・・・・」
荒療治の末、エースは異能力を手に入れたらしい。
「よかったね」
クリスはもう、めんどくさくなった。