上
「お姫様って、楽しいのかしら」
ソファーに横になっていたクリスが人間界で実際流れているニュースを見ながら呟いた。クグリがその言葉を聞いて微笑んだ。
「クリス様は既にお姫様でいらっしゃいませんか」
ミニスカートから白い艶かしい足が見える。
「そうね・・でもそういう扱いをされた記憶は無いわ」
「あら意外ですわ」
「クグリに会ったときはまだマシなほうね・・こうして考えたら成り上がったものね・・例え、もとよりこうなる運命だったとしても」
ソファーから起き上がりクリスは足を組んで考えた。
「それにしてもお姫様、面白そうじゃない?うーん」
指を鳴らした。
ヴウン・・何もない空間にブラックホールのような穴が開く。
「ちょっと、遊びに行こうかな・・リン!」
しゅっと、天井から忍者のようにリンが現れた、手には白いウサギが・・
「ウサギはおいていきなさい」
「ん?あぁ了解、で?何かするわけ?」
ウサギを瞬間移動で片付ける
「ちょっとしたお遊びよ」
穴に入る。
リンもクリスに続いて穴に入る。
「いってらっしゃいませ」
くぐりは頭を垂れた。
穴に入ると、洗濯機の中を回っているような不思議な感覚がする。
そしてしばらくして暗闇が抜けた瞳に映るのは見事な細工の施された天井と、目に優しくない煌びやかなシャンデリアだった。
リンは起き上がると、頭をかいた。
「姫様!早く起きてくださいませ、ホーンミューン公爵が来られますのよ」
女中が布団を引っぺがすと、リンは腕を引っ張られ別の女中に引き渡される。
「え?え?」
素っ裸に去れ、水の中に突っ込まれると、体中を容赦なく拭かれ・・コルセットで腹部を締め付けられた。
「いててて」
「もう少し息を吐いてください、ほら姫様!いち、に!」
「はぁぁぁー!?」
「その調子ですわ!」
「いや、そうじゃなく・・でででで!!」
しばらくしてふりっふりのドレスに着替えさせられた。
もううんざりだ、一体なんなんだコレ
「もう、リンお姉さまったら遅いんですから!」
「・・誰だ」
「いやだわ、リンお姉さま・・妹である、私を忘れたんですか?」
「クリスだよね」
「そうですけど?」
きょとんっと首をかしげた。
え?何コレ怖い
「あ、ホラぁリンお姉様、お父様とお母様がお待ちですわ」
「父母!?」
クリスに背中を押され、リンは駆け足で運ばれていく。
「!」
クリスの身体に魔法の気配は一切感じられない、かわりに一種の呪いを感じ取った。
(一時的な催眠術、自分を神と忘れているのか・・強制的に?)
扉が開くと、厳かそうな父に、貧弱そうな貴婦人の母がいた。
(ははぁ、クリスのお遊びってのは分かったけど、趣旨が分からん。この世界全体に魔法をかけていつでもやめれるようにしてるな・・時空管理局に怒られるぞ)
まぁ、俺には関係ないか・・このせかいヨーロッパの17~19世紀ぐらいか?
「俺って痛いなぁ」
「え?何かいいました?」
「いや?べっつに」
それにしても、クリス・・楽しみにきたのは分かるけど、なんで自分自身記憶を封印しているんだ?演技は得意だろうに・・まさか
「俺への、嫌がらせ?」